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四魂《Tetra Spirit》  作者: yuzoku
第1章 Intersection
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看板を背負った戦い

あれ、ここドコだ?


少し気を失っていたようだ。

ジンセンフはまだボーッとする頭で、周りの状況を見渡した。


瓦礫に囲まれていたが、幸い、瓦礫が折り重なったためにできたスキマにいた。しかし、痛みと疲れで体が動く気がしなかった。頭の中だけがぐるぐると回り、色々な考えが巡っていた。


『なんなんだよ、あの強さ!反則だろ!


周りの兵士と協力してみるか?

いや、あの一撃の破壊力じゃ、連携する間も無く1人ずつ殺されてしまう。


正直勝てる気がしない。かと言って、今ココにオレより強そうな人もいない。


街は諦めて、逃げるしかないのか、、、』



考えるのも疲れて、ため息をついた。体の力もほとんど入らず、首を横に向けた。


その時、瓦礫の間から、見覚えのある年季の入った看板が目に入った。『コンシラ』と書かれている。


そうか、あのオムレツが上手いパン屋の看板か。自分がぶつかった衝撃で、店はもう半壊してしまっている。


『オレのバゲットを褒めてくれたのは、兄ちゃんが初めてだよ!』

書いた記事を見せた後に言われた、店主の言葉を思い出す。


まだ数日だけど、いい人が多いよな、この街は。

それがたった数十分で勝手に壊されて、世の中理不尽だ。

このままだと、人も建物も、魔物たちに全部破壊されてしまう。



この街を見捨てる?

そんなのはイヤだ。絶対にイヤだ!


考えろ!諦めずに勝つ方法を探せ!

集中しろ、感覚を研ぎ澄ませ。


右腕の気流に、意識を向ける。

体の表面から、自分の気流がわずかに漏れ出ているのを感じる。


《停滞台風》


皮膚の内側にスピリットの膜を作って、漏れ出ていた体内の気流を逃がさないようにして、体に留める。

今度は左腕、右足、左足、腹、胸、腰、背中、頭

全身に膜を張ったら、普段よりも流れを加速することで、体内に台風を生み出す感覚。

すると、さっきまでの不安感が消えてなんでもできる気がしてきた。全身に力も漲ってきた。


大丈夫、速さは負けてない。あの重い一撃に対抗できれば、勝機はあるはずだ。



ジンセンフは風圧を高めた剣撃で瓦礫を吹き飛ばし、立つと同時に、剣を構えた。


突然大きな音がした方向に、骸の騎士が振り向いた。


ジンセンフの姿を見つけると、一直線に向かってくる。


先ほどと変わらない、威圧感のある禍々しいオーラを纏っている。


それでもジンセンフは、さっきまでのように気流を全開にはしなかった。


骸の騎士は容赦なく迫り、斬り付けてくる!



瞬煌(きらめき)

相手の剣とぶつかる瞬間にだけ、剣先に気流を流し込む。


キンッ


今回は、押し負けることなく、拮抗していた。


イケる!


すかさず、左袈裟から二撃目を放つ。骸の騎士の体勢を崩れたのを感じた。

勢いそのままに一回転して、渾身の一撃を放つ


確かな手応えがあった。最後の一撃が当たった騎士の左脇には、深々と剣筋が残っていた。


痛みに怒ったのか、骸の騎士は狂ったように剣を振り回しながら突進してくる。ジンセンフは重い連撃にも《瞬煌きらめき》を駆使して捌いていく。骸の騎士の疲れが少し見え、剣戟に一瞬、間ができた。ジンセンフはその瞬間を見逃さず、剣戟に合わせて一歩前に出ながら体重を乗せた一撃を放つ。華麗なステップで回転を織り交ぜながら、衝撃の瞬間には《瞬煌きらめき》によって強烈な連撃を浴びせ、今度は一気に畳み掛ける。


高速で強烈な剣戟に骸の騎士は耐えられず、ついには大剣を弾かれて落としてしまった。


すかさずジンセンフは、ガラ空きになった胴体に一撃を放つ。


バシュッ


音に一瞬遅れて、骸の騎士の上半身が、下半身からずれた。そのまま、上半身は斜めになった切り口から滑り落ちた。

形をとどめる力を失った2つの塊は、崩れて地面に散らばった。すでに禍々しいオーラも消え、そこにはただの骨の残骸が広がっているだけだった。


ジンセンフはその光景を見届けると、自身も力が抜けてしまった。膝から崩れ落ちて突っ伏してしまい、そのまま意識を失った。


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