突然の刺客
街中にはなおも魔物が溢れていたが、近衛兵たちが指揮官を中心として統率の取れた体制で何とか応戦できていた。
街の被害は何とか最小限に済みそうだとジンセンフが安堵した時、悲鳴が耳に入った。
声がした方角に意識を向けると、不穏な空気の流れを感じた。
そこには2m近い全身黒尽くめの騎士がいた。
人型をしているが、雰囲気は間違いなく魔物だった。手には禍々しいオーラを放った大剣が見える。
近くにいた近衛兵が果敢に斬りかかる。
魔物が大剣を軽く払うと、兵士の剣は細枝のように簡単に折れ、そのまま兵士の体も真っ二つにしてしまった。
あまりにも一瞬で、一方的な結末だった。
ジンセンフは呆気にとられて、この戦場の真っ只中でただ棒立ちになっていた。
少し間が空いて我に返ってからは、先ほどの剣戟で黒いフードが外れ、黒い騎士の顔が露わになっているのに気づいた。
その顔は、薄汚れた骨でできた、ドクロそのものであった。
目だけが禍々しく、深紅に光っている。
今までの魔物とは明らかに違う。
否が応でも感じる威圧感に、ジンセンフは恐怖に包まれ、足がすくんだ。
コイツとは戦いたくない。
でも、誰かが倒さなきゃいけない。
気を取りなして気流を全身に激らせ、骸の騎士に飛びかかった。
ブン!
走り込んだ勢いそのままに切り込んだが、骸の騎士の薙ぎ払いに押し負けて剣と共に体勢が浮いてしまった。そんなジンセンフにも容赦なく骸の騎士は斬りつけてくる。慌てて一歩引きながら、剣を前に押し出して受ける。続け様の剣戟を、ジンセンフも何とか剣で受けるも、その度に後退して耐えるしかなかった。
ついにはバランスを崩し、倒れ込む。さらに剣が振り下ろされてくるのを感じ、すぐに起き上がって剣で受けたものの、限界に来ていた握力では堪えきれずに剣を落としてしまった。
やばい
ヒュっ
突然飛んできた矢が骸の騎士に当たった。
「逃げてください!」
矢を放ったであろう兵士の声が聞こえ、我に返ったジンセンフは、骸の騎士の注意がそれたスキに剣を取って、一目散に走って距離を取った。
ダメだ、力負けしてしまう。
このままじゃジリ貧だ。何か考えないと
骸の騎士はターゲットをジンセンフに絞ったのか、真っ直ぐに突進してくるのを背中越しに感じる。骸の騎士が勢いそのままに剣を振りかぶる動作を横目で見ながら、ジンセンフは翻りながら気流を全開にし、剣を構える。
ガシャーン
ひときわ強烈な一撃をくらい、何とか剣では受けたものの、堪えきれず半壊した家まで吹き飛ばされてしまった。
ジンセンフがぶつかった衝撃で家は崩れ落ち、ジンセンフは瓦礫と粉塵に埋もれてしまった。