表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四魂《Tetra Spirit》  作者: yuzoku
第1章 Intersection
10/31

チーズはどこで生まれた?

モデルの街:グリンデルヴァルト(スイス)

「ふぅ。よし、もう少しだ。」

 ジンセンフは流石に息を荒げながらそう呟いた。リフレーンと別れてから数10キロあった道のりも、さっき見かけた看板によると次の曲がり角を曲がると街に着くようだ。

 

街の正門が見えたとき、そこに意外な人物が立っていた。

「遅かったわね笑」

「え、なんでここにいるんだよ?」

「そりゃかけっこなんだから、お互いゴールを目指すでしょ?」

「もしかして隣にいるそのでっかいウサギのせいか?」

「ご名答。」

リフレーンがニヤッと笑った。


「この子はウサギのピーター。なんとジャンプ1回で、数キロ分のワープ移動ができるの。」

「そんなのチートじゃん!!聞いてねーよ!」

「だって言ってないし。あの状況で言う暇すらくれなかったでしょ?」

「まぁ、たしかに」

「ホント、いきなりかけっことか意味わかんないんだけど。あんたが仕掛けたんだよから罰ゲームでおごりね。」

「いや別に、罰ゲームなんて一言も言ってないけど」

「何か言った?」

「…いや何でもないです。」



「店員さん、マルゲリータおかわり!」

「いや、1人で何枚食うんだよ!?」

「うるさいわね。誰かさんのせいでメチャクチャ魔力消費してお腹空いてたんだからこれぐらい当然よ!それにしてもここのピザはほんとにチーズがおいしい〜!!!」

「嬢ちゃん、お目が高いね!」

リフレーンの周りの席まで聞こえるくらいの大きなリアクションに、陽気そうなおじさん店員が応えた。

「このチーズは全部、ホスピタ牧場で搾った牛乳で作ってるんだぜ。」

「やっぱり仕入れ先にこだわってるからこその味なんですね。」

「チーズは牛乳が9割、製法が1割なんて言われるくらいだからな。牧場でしか飲めねぇが、あそこは牛乳も絶品だぜ!?」

「そうでしょうね!牛乳も飲んでみたいな〜」

「よし、次はその牧場に行こう!」

「それはアタシもさんせ〜い!あっ、このビアンカ食べちゃおっ!」

「店員さん、その牧場にはどうやって行けばいいの?」

「汽車に乗っていけば2時間ほどで着くぞ。」

ジンセンフが店員と話を続ける中、リフレーンは新しいピザを口の中で堪能していた。


「駅はどの辺にある?」

「ウチの店を出てまっすぐ行けば着くよ。ただ、ちょうど今日の便はあと10分で終わりだがな笑」

「この店から走ったら間に合う?」

「今からだとギリ間に合わないかもな。」

「じゃあ行こう!おじさん、これお会計ね。」

そう言って、ジンセンフはお金をテーブルに出しながら立ち上がった。


「え、ちょっと!もう間に合わないって言われたじゃん!? 明日にしようよ!」

「可能性があるなら、信じて進まなきゃ損でしょ!ごちそうさまでした!」

「いや、全然カッコ良くないし!あ、ちょっと待ちなさいよ!」


店を出ると、ジンセンフは手を差し出して待っていた。

「掴まって!」

リフレーンはイヤな予感がしつつも、言われるままにジンセンフの手を握った。

 ジンセンフは駅の方を振り返ると、駆け出し始めた。手を引っ張られたリフレーンも慌てて走り出すと、自分の周りにすごい風が吹いているのに気づいた。そして自分の全速力ではありえないほど、あっという間に周りの景色が遠ざかって行く。



しばらく走ると、目の前の煉瓦造りの横長の建物から、轟音が聞こえてきた。

というか、汽車が走り始めているのが見える。


「はぁはぁ、間に合わなかった。」

「よし、なんとかなったな。」

少年は、今の状況と合わない発言をした。そして、汽車の方に走る向きを少し変えただけで、スピードは落とさなかった。

「え、まさか乗る気!?」

「もちろん!」

その言葉で半ば諦めた少女は、手を引かれるままに身を任せた。


汽車は、もう完全に駅からその姿を現していた。


2人の目には、最後尾が見えた。客室のドアの前は、奥行き1mほどの柵のない裸のデッキになっていた。


汽車はまだ全速力ではなかったが、ちょうど2人の走る速度と同じくらいだったため距離は縮まらなかった。


「跳ぶよ!」

 少年はそう言うと、急に立ち止まった。

「え!?」

少女は走ってきた勢いで、そのまま少年を追い越す。


少年はさっきまで繋いでいた左手を離し、その左手を少女の腰の辺りに回した。


少女の視線が下がり、足が浮く。


少女は自分が、完全に小脇に抱えられたことに気づいたが、何もできない。


一体となった2人は少し沈んだ後、大きく宙に浮いた。


次の瞬間には、汽車の最後尾のデッキに着地していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ