某の正体
一人寂しく部屋に入りました。お楽しみをお預けにされ、つい深いため息も吐いてしまいました。しかしそんなことより、この後某にとってとても重大な事件が起こってしまったのであります。
部屋に入ってすぐの所に鏡が壁に掛かっていたのですが、その鏡を見た瞬間、某は信じられないものを目にしてしまったのであります。
鏡には某の顔は映っておりませんでした。その代わりに、鏡には某とは別人の見知らぬ少年の顔が映っていたのであります。
その少年は黒髪でとても美しい顔をしており、まるで少女のような容姿をしておりました。そして某が動くとその少年は全く同じ動きを真似してきました。
そしてしばらくの間、色々な動きをしてみたのですが、どうやら鏡に映った少年は某自身の姿だということが分かったのです。
それからこの世界で得たわずかな情報を頼りに、自分なりに組み合わせて考えてみたのですが、どうやら某は現代社会で言うところのイケメンの勇者としてこの世界に転生されてしまったようなのです。
鏡に映った美しい姿の少年。そして某を勇者様と呼ぶディアたん。今まで一切気にも留めなかったのですが、フサフサに髪の毛が生えている豊かな頭皮。余裕で自分の足元が見える見晴らしの良い腹回り。
それらの情報を組み合わせると全ての話が合致します。前世であまり良いことが無かった某ですが、今世では素晴らしい人生が送れそうです。明日からはディアたんと二人、楽しく旅を続けて行こうと思う某であります。