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第8話 シムシティ

 レークススライムとの激闘から1日が過ぎた。


「まず、家をどうにかしないとな」


 半壊した小屋は泥棒初心者でも簡単に侵入を許してしまうだろう。このままでは、寝込みを魔物に教われてポックリいってしまう恐れもある。ここで動けるのは俺ただ一人、子供一人に家を建てろなんて、この世界はなんて残酷なのだろうか。

 1日前までの俺ならばそう言って途方にくれていたであろう。しかし、今の俺には不可能はない。スライムを倒したおかげなのか、直線状にいたであろう魔物達を倒したおかげかは分からないが、固有スキルもバージョンアップしていたのだ。

 


固有スキル

『Creative card【ver.5,1】』

能力詳細

【ver.4】

・素材に限り1枚のカードに合成・蓄積され、必要分だけ取り出して使うことができる。

※必要な量を念じると、その量の素材カードが作られる。

【ver.5】

・カード7種を合成することができる。(消費MP??)

※合成可能枚数は、累積で7枚まで。製作する質により消費MPは異なる。

【ver.5,1】

・機能改善

※カード化する際の消費MP、詠唱がなくなり、視界に納めたものを任意でカード化することが可能。その際、全体としては持てない物でも、自己の腕力で持てる分だけカード化することが出来る。

※防腐、防水、防劣化、防火処理を魔力を変換することで使用可能

☆一定の条件を満たすことにより、【ver.6】を解放。


 バージョンアップしたこの能力はもはやチートと言っても過言ではなかった。今までは、木の枝一つをカード化したところで、お箸を製作するのが精一杯であった。しかし、素材の合成・蓄積が可能になったことで、木の枝からでもテーブルや椅子なども製作が可能になると考えられる。カードがかさばらないというのも利点だ。また、7種類までのカードを合成可能になったため、製作できるものの幅も広がり思わずニヤニヤしてしまう。なにより、消費MPがなくなったことで、いまや素材がとり放題なのだ。これで興奮するなというほうが難しい。


 小屋の外に出ると言葉にならない光景が飛び込んでくる。

 つい先日まで木々がひしめき合っていたその場所は、現在は横50メートル、奥行き数キロメートルにわたって更地と化しているのだ。後一歩判断に遅れていたら、俺もこうなっていたのかと思うと背筋が凍る思いだ。

 気を取り直して、まずは家を造るべく木を集めることにする。あの小屋みたいに薄い木の板で作るのではなく、キャンプ場でよく見かけるログハウスのような家を作るつもりだ。

 手始めに、半ばから折れた木の一部をカード化してみる。1メートル位のサイズはあり、重量もそこそこあるはずだが、無事カード化することが出来た。

 

「いやいや……まさかね」


 カード化できる条件はバージョンアップしていても変わっていないはずだ。つまり、俺の腕力で持てる範囲である。試しに4メートルはある木を視認し、念じてみる。あっさりとカード化することが出来て、自分でも少し驚いてしまう。


「マジかよ……」


 大人でも持てないと思うのだが、もしかしてこの世界ではこれ位が普通なのだろうか。それでもこの成長度合いは明らかにおかしい。表記がされないだけで、ゲームみたいにレベルやステータスというのが存在しているのかもしれない。

 ともかく、これならば理想の家をすぐに作ることが出来そうだ。細かい事は気にしないようにして、片っ端から木をカード化していく。この勢いならば数十件の家が作れそうだ。

 土地は広い。カード化する能力により邪魔な木も簡単に取り除くことができる。そこかしこに生い茂る雑草もカード化するか燃やすかするだけであっという間に土地の開拓も進む。


「シムシティを一度やってみたかったんだよな……」


 やってみますかリアルシムシティ。やると決めた俺はもう止まらないぜ。

 まずは鉱物を採りにいこうと考え、デアグニス・グラディウスを装備する。どんな魔物と出会うか分からないため、備えといて損はないだろう。

 スライムが捕食していた魔物を見る限り、ここら辺に住まう魔物はあのスライムよりも弱いと考えていい。となると、仮にもあのスライムに消えない傷をつけることができた剣だ。これほど心強いことはない。なにより身体能力が大幅に上昇しているため、負けるとも思えない。調子に乗って殺されかけた過去は記憶から消去されていた。


「シムシティの邪魔をするやつは全力でたたっ斬る!」


 決意を胸に秘め洞窟を目指す。

 あのスライムがいなくなったせいか、道中魔物と遭遇することが多々あったが、全て倒しきることができた。1m程の青いスライムに出会った時は、ヤバイと思ったが……めちゃくちゃ弱かった。身体能力が上がったために弱く思えたのか、あのヨモギモチが強すぎたのか。たぶん後者であろう。


 素材集めをしながら都市の構想を考える。やはり、やるならばスケールは大きいほうが良いだろう。政令指定都市……京都市位の広さは必要だろうか。試しに1㎞分の高さの土の塔を作って覗いてみたが、360度何処を見渡しても森しか見えなかった。この世界の大きさが地球と比較して大きいのか、それとも小さいのかは分からないが、広大ということだけは理解できた。仮に直径30㎞の都市を作ったとしても、この森の大きさから比較すれば小さいものであろう。この森は誰の所有物でも無いのだから好き勝手しても問題はないだろう。

 形としては、無駄を省き、整地し易いようにと考えれば四角形が良いだろう。順番的には壁を作り、目標とする面積を完全に囲う。そして、中に残った魔物を討伐しつつ整地する。整地が終われば後は思い通りの町を作るだけだ。

 壁は石で作るのが簡単ではあろうが、それでは耐久性に問題がある。ここは妥協せずに硬い鉱石で作るべきだろう。形も登られないように真っすぐではなく、少し外に反った形が理想的だろう。


 大量の鉱石が必要になるが、幸いにも視界にい入って念じるだけでカード内に蓄積されるので集めるのはそんなに難しくはない。ただ、難しくないだけで目は開けとかなければいけないし、同じことの繰り返しは脳に疲労が蓄積される。時々睡眠や食事を挟みつつ素材採集を続けた。そうして続けるうちに壁に最適な鉱石が見つかった。


【名称】 厚硬石 

【クラス】鉱物

【詳細】 厚さが増すほど硬くなる不思議な鉱石


 これがまた面白い鉱石だった。50cmほどの厚さであれば俺のパンチでも簡単に粉々になったが、3mもの厚さになれば、俺の拳は勿論、デアグニス・グラディウスでも傷1つ付かなかった。これほど壁の素材として適したものはないだろう。

 そうして厚硬石を夢中で集めていくうちに、気がつけば洞窟は跡形もなくなり、それどころか山の数十個が更地になっていた。因みに、山を更地にする際は山より高い塔を作り、すべての木々をカード化して丸裸にした。当然そのような現象が起これば流石の魔物達も警戒し、木々のある場所へ逃げていく。こうして見通しが良く、魔物も容易に近づいて来れなくなったため戦闘をすることは無かった。



「ついに完成した……!」


 素材採取を始めて早数か月、ようやく目的のものが完成した。といっても、壁だけではあるが。厚さ3m、高さが20m程の壁が四方計12㎞を包囲する。その光景はまさに圧巻といっていい。壁には防腐・防劣化機能が付加されているため、朽ちる心配もない。このような強固な壁で覆われた都市は外からの侵入者を許さないだろう。因みに出入口は今のところ作っていないため、本当に出入りが出来ない。また後で出入口を考えなければならない。


 壁が出来れば次は壁の中の整地だ。といっても、先の戦闘と厚硬石である程度更地になっていたため、これは素材集めに比べれば楽なものであった。また壁の中に残った魔物討伐に関しても、背後と左右を壁で覆いながら奇襲を受けないように慎重に戦闘を行ったため、安全に且つ、楽に戦闘をすることができた。そのお陰で数か月の時間を要したが。そうして一旦すべての草木や岩を無くせば、端から端まで見渡せるようになった。このような場所は地球でもお目に架かれることは無い。


「しかし、草木が全くないってのも風情に欠けるよな……」


 そう思って、試しにカード化した木を再度埋めなおすことが出来ないか試してみると、奇跡的に埋めなおすことが出来た。仕組みがいまいちわからないが、悪いことではないため良しとしよう。後は建物を作っていくだけだ。


 まずは区画を9分割して、各分割地に冒険者ギルド、商業ギルド、宿屋、飲食店、雑貨屋などの必要そうな建物を1つずつ設置することにしよう。他にも必要な建物はあるだろうが、どのようなものが必要か分からないため、今は作る必要が無いだろう。他に必要なものと言えば、公園や、交番みたいな建物も必要だろうか。とにかく持てるゲームの知識を総動員して作っていくしかない。研究所は……多分必要ないな。


 

お読みいただきありがとうございます。

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