第4話 年少組の初戦闘
ルーナ国始動から一月が過ぎた。
ここで大切なお知らせがある。ついに9歳になったのだ!身長も160cmまで伸び、現在の外見は14.5歳程度であろうか。最近では漆黒の髪を肩まで伸ばし、後ろで一つ括りをするようにした。地球にいるときと同じ髪型ということもあり、結構しっくりくるんだよな。
嬉しいことに、マルナさんからは「最近凛々しくなったわね」との言葉を頂いた。どうやら俺は順調に成長していけているようだ。
俺とミハルは、午前中執務室に籠りどうやって国を運営していくのか話し合いを続けた。時々、マルナさんやグレンさん、タークさんたちに意見を求め、国の基盤を固めている所だ。実際に国民を呼び寄せるのには半年はかかりそうだ。午後からは、畑をみたり、年少組の訓練の様子をみる日々を送っていた。
自警団の皆は、午前中は年少組の訓練、午後からは周囲の探索を行い、能力や出現頻度、有効な戦い方など魔物の情報収集をしてもらっている。彼らには森の中でも手軽に食べられるように俺お手製のパンを大量に渡している。カードだから腐る心配もなく、そこまでかさ張らないため、携帯食料として非常に優秀だ。
タークさん達は1日中仕事に費やしているが、毎日交代交代に、午後からはグレンさんたちと魔物狩りに出かけている。とても充実した日々を送れているそうだ。
午前中に自警団の皆に散々扱かれた年少組は、午後からも自主的に練習をしていた。因みに訓練場所は城の中庭だ。ここならば、飛行する魔物が来ても襲われる前に俺が守ることが出来る。
彼らは1ヶ月間努力を続けた結果、ついに戦闘系のスキルを全員獲得することができた。俺が予想していた通り、スキルは後天的に入手可能であるということが判明した瞬間だった。
お祝いとして、皆に武器をプレゼントしたらすごく喜んでくれた。この日だけは、少し捻くれているバンも純粋に喜んでいた。子どもというのはやはり可愛いものだ。まさに、人類の宝といえよう
「それでは今から魔物の実践に向かう。皆準備はいいか?」
「「はーい!」」
うむ、元気があって宜しい。
グレンさんが先頭にたって森の中を進む。年少組の魔物戦デビューだ。
今回は5人1組で1体のスライムを倒す予定だ。
程なくして、1匹の青いスライムが出現した。1対1では危険ではあるが、5人なら恐らく大丈夫だろう。
「よし、やるぞ!」
「あれだけ練習したんだから大丈夫だよね」
「油断だけはしないようにしよう」
スライムの前にでると、前衛2人、後衛2人、その戦況を後ろで見守る1人に分かれた。
前衛の2人が、スライムの触手攻撃に対し剣と槍でスライムを牽制する。その間に後衛の2人が詠唱を始め、ビックファイヤーボールを撃ち込む。チョコ&ミントさんコンビの頑張りもあり、何とか今日までに習得する事ができた。2人に比べたら、まだ威力は弱く速度も遅いが、スライム相手ならば何とか戦いになるだろう。
後衛のさらに後ろで待機している1人は、他に魔物が出現しないか周囲に気を配っている。
俺と違い、彼らは何処に魔物がいるかどうか分からない。魔物との戦闘では視野が狭くなるため、他の魔物の襲撃に気がつかない場合がある。実際に魔物との戦闘中に他の魔物に襲われて命を落とすケースが多いと王都で教えてもらていた。それを防ぐために、他の魔物が迫ってこないか周囲を警戒する担当を作ることを義務化した。これで危険度はかなり下がるだろう。
後衛が魔法がスライムに命中し、HPがようやく30/50になった。
好機とばかりに前衛2人が攻めようとするが、スライムに異変を感じすぐさま飛びずさった。
すると、今まさに踏み込もうとした場所の地面から触手のドリルが生えてきた。恐らく変化スキルで触手をドリル状にして地中を掘り進み、好機を伺っていたのだろう。
「あっぶねー」
「だね、事前にこの可能性を考えていなかったら今のでやられてたね」
彼らには事前に『冒険者の心得(初級)』という教本を配り、魔物について勉強してもらっていた。 グレンさんたちの協力もあり、スライムやホーンラビットなど10種類程度の魔物の情報を図を入れてこと細かく解説している本だ。
しっかり読み込んでいたのだろう。今のスライムの攻撃にも冷静に対処できており、初めての魔物戦にしてはなかなか良いのではないだろうか?俺なんてスライムとの初戦闘では、簡単に攻撃を受けて死に掛けたからな……。
前衛の2人は再び攻撃に転じスライムに猛攻をしかける。彼らは適当に斬りつけるのではなく、触手の攻撃を防ぎながら同じ部位に攻撃を与え続けていた。スライムは再生が追いつかずにその傷口をどんどん広げていった。同一部位を攻撃し続けるのはなかなか集中力のいることだ。それをたった1ヶ月の訓練でここまで出来るようになるとは思いもしなかった。どれだけ濃密な訓練をすればここまで出来るようになるのだろうか。それだけ本気だったということだろう。
2人の猛攻にスライムはたまらず、傷口を触手で隠し後退しようとしたが、すぐさま1人が渾身力をこめて触手を斬り捨てた。ここまできたら、もう殆ど勝ったも同然だ。
「今だ!」
「「ビックファイヤーボール!」」
おお、見事傷口に命中しているよ。後衛2人の魔法の精度も高いな。
「はぁぁぁ!」
核を槍で一突きされたスライムはついにHPが0になった。年少組の完全勝利だ。
今の一突きはこれまででで最速といって良いいな。スライムは防御する時間もなかったはずだ。
彼らの連携といい、攻撃速度・精度、判断力は初戦闘にも関わらず高度なものだな。
「やったー」
「倒せたぞ!」
「よし!!」
彼らがこのままの勢いで強くなっていけるなら、数ヶ月もしないうちに安心することができそうだ。
そうなれば、少しの間俺がこの国を離れても大丈夫だろう。頑張れ年少組!
実践訓練も無事終わり、日も傾いてきた。それにさっきから腹の虫が鳴り響いている。早く帰ってマルナさんの夕御飯を頂こう。今日はシチューもどきの予定だったな。マルナさんの調理技術もこの一月でlvが1上がった。料理に限定したら、この世界に彼女の右に出るものはいないだろう。今日の夕御飯も実に楽しみだ。
夕食も終わり、1時間ほどは恒例となったボードゲーム大会を行う。
今のブームは年少組はオセロで年長組は将棋がだ。例外として、俺とミハルは年長組に混じって将棋を指している。
オセロはネスが一番強く、半月の間、王座を自分のものにしている。将棋ではもちろんこの将棋のゲームを皆に教えた俺が一番強い――はずだった。なのに、半月もしないうちにミハルに勝てなくなった。俺、一応地球ではプロの六段と同等のレベルはあったはずなんだけど。
ゲーム大会がお開きになってからは、2時間ほどマリと天体観測&特訓だ。
マリは中級魔法習得には至らず、そもそも俺と同じで習得できそうにもなかった。しかし、この一月で新たに『ミノルラ』という魔法を習得することが出来た。この魔法は、ビービー弾程度の大きさである光の玉を出現させ、周囲を明るく照らしてくれる魔法であった。光の明るさは術者の意思で調整でき、場合によっては目くらましに使うこともできそうだ。因みにこれも『?属性』の初級魔法であった。また、プルキエスはより密度の高く硬い雪玉を生み出すことができ、2メートルほどの厚さの木を貫通させるほど、威力は成長した。中級魔法がなくても、十分に戦力になるだろう。
本日の実践訓練は、実はマリに参加してもらっていない。マリの魔法は独特であり、まだ未知の部分が大きい。そのため、魔物討伐は基本的に俺と組んでもらうつもりだ。また、ミハルの武器も独特であり、創った俺でもどうなるか分からない。
よし、明日はミハルも含めた3人で魔物討伐に向かい、各々の能力がどれだけあるのか確認することにしよう。
お読みいただきありがとうございます。
暫くは1日に1~3話程度の更新を続けていけたらと思っておりますので宜しくお願い致します。
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