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第1話 いきなり大ピンチ

 あれ?生き……てる?


 太陽の日差しが目に入ってまぶしい。


 確か俺は何かの爆発に巻き込まれて死んだはずなんだが――っ、頭が痛い、所々記憶が抜けているような気がする。とても、とても大切な事だったような気がするのだけど、思い出せない。


 思い出せないのは仕方ない。まずは現状の把握だ。改めて周囲を見渡すと、青々とした空が視界に入った。そして次に自分の手、そこには本来あるべき大人の手ではなく、赤ちゃんのような小さい手だ。


 いやいや、そんなまさか……。


 いきなりの展開に、頭が混乱してしまいそうになる。落ち着け俺、もう一度現状を確認するんだ。まずは自分の体だ。

 小さな手、ぷにぷにして可愛い。言葉を喋ろうとしても「あぅ」とか「だー」とかしか口から出てこない。うん、完全にこれは赤ちゃんだ……よし、気持ちを切り替えて次にいこう。


 次は周囲の確認だ。青い、とにかく青い。見渡す限り青色以外の情報が視界に入ってこない。あ、時々白いわたあめみたいなものも見えるな。


 そして、先程から常に感じている浮遊感。いや、正確には落下しているような感覚がある。気のせいであってほしいが、そうは問屋が卸さない。明らかに重力に引っ張られている。


 あ、やばい、これは死んだかも……。


 そうして俺は意識を手放した。




「ん、ん~ん?」

 

 再び目が覚めると、緑豊かな木々が視界に入った。どうやら、一命は取り留めたようだ。


 それにしても、どこも痛くないし、全身スムーズに動くぞ?


 体を確かめると、一命を取り留めたどころか、怪我一つしていない。なんとも不思議なことだ。

 周囲を観察すると、1m程の大きさの、ヨモギもちがあった。丸いフォルムに柔らかそうな緑色の皮、そして軽快な動き……。


「だばっば!?(動いている!?)」


 あれはヨモギもちなんかではなく俗に言うスライムってやつだろうか。いやいや、そんなファンタジーありえない。そもそも俺は死んでいるはずだし、もしやここは天国で、あれはスライムなんかではなく天使ではないだろうか。きっとそうだ。天使ならば赤ちゃん言葉でもきっと通じるはず。そうときまれば話しかけてみよう。


「あぅだばー(すみませーん)」


 言葉をかけると、天使(仮)の動きが止まり、蛇のような生き物に丸呑みにされた。そして、その蛇のような生き物と目が合う俺。あれは大天使さまだろうか?

 大天使様(仮)はじりじりとこちらに近づいてくる。天国の案内をしてくれるのだろうか?半ば考えを放棄して呆けていると、大天使様(仮)は眼前1mまで迫っていた。


「あ、あぅあー(こ、こんにちわー)」


 やけになって挨拶をしてみると、大天使様(仮)も大きく口を開けて、挨拶を――――いや、挨拶じゃない。

 口は今の俺の体よりもよりも大きく開かれている。


「だばっばぶっだばっ(やばいやばいやばい)」


 恐怖により体を硬直させたまま、なす術もなく俺は大天使様(仮)に丸呑みに――――されなかった。正確には丸呑みにできなかった。鷹のような生き物が、眼前の大天使様(仮)を掻っ攫ったからだ。

 何がなんだかよく分からなかったが一つだけ理解できたことがあった。


 どうやらここは天国ではないようだ。


 改めて現状を整理しよう。

 未知の場所、未知の生き物、赤ちゃんの体、因みに全裸、周囲に人影なし。


 あ、やばい。これ、詰んでいるかも。


 とりあえず、ここに留まれば未知の生き物の餌になる確率が高いため移動しよう。どこか安全な場所がきっとあるはずだ。うん、そう思っていないとやってられない。よし、そうときまれば周囲を散策しよう。


「ばっふ(よっと)」


 ふぅ、立ち上がっても視界は低いままだから散策するのも一苦労だ。


 ここは自然が多く、空気がおいしい。危険な生き物がいなければここで生活したいくらいだ。それにしても、赤ちゃんなのに立って歩けるのはおかしくないか? となるとだ、考えられることは一つだけ。


「だばだあぅあぅー!(なんてファンタジー!)」


 もう、やけになるしかない。発明家としてはどうかと思うが、今はそれどころじゃない。些細なことはファンタジーで済ませるしかない。


 散策すること1時間(勘)、奇跡的に未知の生き物に出会うこともなく、一軒のボロい木造の小屋を発見した。これは第一村人発見のチャンス!


「あぅあだばー(おじゃましまーす)」


 勝手に家に入るのはどうかと思ったが、緊急時だから許してもらおう。怒られても、見た目は愛くるしい赤ちゃんだし罰せられることはないよね。


「ばぶっ」


 家の中はすごく埃だらけだ。風によって舞い上がった埃が俺の気管を襲撃する。なんて危険な家だろうか、この様子ではとてもではないが人は住んでいないのだろう。

 

 家の中にあるものは、テーブルに椅子、そして本棚のみだ。何か食べるものがあればよかったが、流石にあったとしても腐っていただろう。せめて、出来れば服は欲しい。服じゃなくて布でもいい。さすがにこの格好は恥ずかしすぎる。


 ん? あれはなんだ?


 机の上に何かあるようだが、体が小さすぎてよく見えない。なんて不便な体だ。確認するためには、椅子によじ登るしかないが、なんとも惨めなものだ。


「ぶっ……」


 椅子の上に立つがそれでも良く見えないな。こうなればテーブルに乗るしかないか。小さい体が恨めしい。

 何とかテーブルの上にもあがれたが、今更ながら俺はスーパー赤ちゃんではないだろうか?普通赤ちゃんにこんな芸当は無理だぞ?


 ん? これは水晶に金属の板か……?


 目の前にあるのはよく占い師が持っている例のアレだ。

 手で埃を払いのけると、太陽の光を浴びてきれいに輝いている。

 

 みえる、みえるぞ、キサマの運勢が!


 思わず水晶に手を触れて占い師の真似事をしてしまった。恥ずかしい。


「だばっ!?」


 急に水晶の横にある金属の板が光りだした。文字が描いてあるようだが、埃のせいでよく見えない。


 ぺしぺしっ、この埃め、払いのけてくれるわ。


 テンションがおかしくなっているが、とりあえず置いといて、目の前の埃の除去に集中しよう。よし、これでよく見えるようになった。


 えーと、なになに?


【名前】ソウサク(0歳)

【職業】 発明家 

【HP】 10/10

【MP】 20/20

【スキル】

「異世界言語」、「異世界文字」、「Creative card【ver.1】」

【魔法】

 無し


 なんだこれ?


お読みいただきありがとうございます。

少しでも面白い、続きが読みたいと思った方はブクマや評価をしていただけるとありがたいです。

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