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『0歳から始める異世界転生生活~世界を救う建国物語~』  作者: nyanta
第2章 傲慢と強欲の国
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第2話 村での生活

「おはようございます」

「おー、おはよう。今日も早いな」

「もっと寝ててもいいんだぞ」

「本当に良く働くな」


 この村で世話になってから5日、俺はタークさんたちと農業に勤しんでいた。生前は室内に引きこもる生活が多かったため、このように畑で体を動かすのも意外に悪くない。

 

「それにしても、坊主は力持ちだな。俺よりも力があるんじゃないか?」


 軽々と畑を耕している俺をみて、タークさんから声をかけられた。


「あー、実は住んでいた町の近くにウサギやイノシシなどの害獣が出没するため、他の大人たちとよく狩をしていたんですよ。そのおかげか身体能力も上がったんですよ」


 この世界の住人は、魔物や害獣を倒すことで身体能力が向上するということは知っているらしい。また、HPやMPというものが存在し得いるということは知っているが、それがどの程度あるのかを知ることが出来るのは貴族か冒険者位しか無いらしい。この国には、HPやMPは勿論、その人が持っているスキルを調べることができる水晶が2つあるそうだが、1つは王城にあり、貴族以上では自由に使用が可能らしい。そして、2つ目は国王承認の冒険者ギルドが所持しているらしい。

 そして、冒険者ギルドではギルド員になると月1回自己のステータスを確認が可能であり、それらのデータを参考にすると、HPとMPの総量に比例して身体能力が向上しているということが判明しているらしい。また、冒険者になると、奴隷制度は適用されなくなるとタークさんが教えてくれた。人間よりも魔物のほうが強いこの世界では、冒険者が持ち帰る魔物の素材は、奴隷にするよりも価値のあるものらしい。それならば、奴隷になりたくない人は冒険者になればいいのではないかと思ったのだが、そう簡単なものではなかった。


「冒険者になると、月1回は魔物を狩って素材を手に入れないといけないんだ。そうでなければ冒険者の資格を剥奪されるそうだ」


 タークさんによると、たいていの人は冒険者になろうと思っても魔物を倒せないため断念するそうだ。魔物と一般人の能力を比較すると、魔物を倒す大変さが伺える。アイルックリングでステータスを確認したが、少なくとも大人2人のは必要かもしれない。


【名前】スライム 

【HP】 100/100

【MP】 200/200

【スキル】貪食・変化

【備考】素早さに特化ており、体当たりで攻撃する。知能は低い。


【名前】ターク(63歳)

【職業】 村人 

【HP】 50/50

【MP】 60/60

【スキル】無し

【魔法】初級魔法

【備考】平均的な人類。特に特化した才能などはない。


 また、魔物を倒しにいくということは、安全地帯から外に出なくてはならない。つまり、魔物に囲まれる危険もある。そう簡単には冒険者になれないわけだ。

 HPやMP自体は魔物や害獣を倒さなくても普通に農業をしているだけでも増加するらしい。その代わり、増えるのは微々たるものであり、魔物数匹を倒す方が圧倒的に増加率は高い。勿論、身体能力もただの市民と冒険者では天と地ほどの差があるらしい。


「なぜみんな害獣を倒したりしないのですか? 初級魔法なら誰でも使えるのですし。そうすれば普通に生活するよりも身体能力も上がり魔物を倒すことも可能になりそうですが」

「坊主は中級魔法を使えるからそう思うのかもしれないが、初級魔法では電撃なんて静電気レベルだし、火の玉も1センチ位の大きさしかできないからとてもじゃないけど倒せないよ。ま、生まれつきMP保有量が膨大なやつは初級魔法でも十分倒せるかもしれんがな」


 この村に来て何度目か分からない衝撃を受けた。昨日村に襲い掛かってきたイノシシをファーヤーボールで仕留めたとき皆に驚かれた理由がようやく判明した。というか、中級魔法なんて使ってないんですけど……。ともかく、あまり派手に魔法は使わない方が無難かもしれない。ここからは自重して生活していくことにしよう。

 


 本日の農作業も終わり、晩御飯の時間になった。


「お前ら、久々の肉だ。坊主に感謝してありがたく食えよ!」


 今日の晩御飯は昨日たまたま仕留めたイノシシだ。みんな、久々の肉にテンションが上がっている。


「坊主、ありがとな。もう肉なんて食えないと思ってたぜ」

「くー、美味しい。調味料がないのが悔やまれるが、そのままでも十分うまい!」

「もう思い残すことはねえや」


 皆の笑顔をみていると心が満たされていく。やはり、純粋な笑顔はすばらしい。この人たちのためならば、少しくらい力を貸してあげたい気持ちになる。


「実は塩と胡椒ならもってますよ?」


 俺は軽い気持ちでアイテム袋の中から布袋に入った塩と胡椒をそれぞれ1kgほど取り出した。久々の人との触れ合いに、気が緩んでいたのかもしれない。


「それとお肉も足りなさそうだから追加でどうぞ」


 30人もの人がいるため、肉が足りなくなるのではないかと思いイノシシを2体ほど取り出した。街に着いたら売れるかと思ってアイテム袋に移しておいたのだ。


「「なっ――――」」


 ご機嫌状態の俺とは裏腹に、みんなが驚きの顔をして固まっていた。もしかして塩と胡椒はそんなに高級品なのだろうか。しかし、商人なら別段持っていてもおかしくないような気もするが……。それとも、イノシシか?この年齢の子どもがイノシシを取り出すのは確かに衝撃的な絵図らかもしれない。でも、昨日イノシシ倒しているところを見られているから所持していても変ではないはず――――


「坊主、おめーそれをどこから(・・・・)だした?」

「え? どこからってアイテム袋……」

「そんな不思議なもの見たことも聞いたこともねぇぞ?」

「あっ……」


 ようやく、己がしでかした失態に気がついた。いくら魔法があるからといって、こんな便利な収納袋が当たり前のようにあるわけがない。もっと情報を得てから慎重に取り扱うべきものだったのに。何のために人力車をわざわざ用意したのか、久々に人と接したことで気が緩んでいたのかもしれない。


 さて、どうやって言い訳をしよう。商人だから伝手から珍しいこの品を手に入れたとか?他に人に狙われると厄介だから偽装して人力車を用意しているっていえばそれっぽいのでは? 人力車を用意した理由は間違いではないため、信憑性が高いかもしれない。だがしかし、こんな良い人たちに隠し事をするのは後ろめたい。しかし、折角仲良くなったのに、これをきっかけに気味悪がられて距離を置かれても――――。


「ふぅ、いいか坊主。お前さんがどうやってその袋を手に入れたのか、あの魔法だってそうだ。年齢からしたらありえない威力だ。本当に商人なのかも疑わしいが、この際それは聞きはしない。というかどうでもいい。この5日間短いながらも坊主をみてきて、俺たちは坊主が悪いやつじゃないと分かっているつもりだ。だからこその忠告だ。人前でその袋は絶対に使うな。間違いなく命を狙われる。お前らも――――今見たことは他言無用だぞ?」


 タークさんの言葉に対し、他のみんなも次々声を上げた。


「当たり前じゃねえか!」

「こんないいやつが、貴族の連中に目をつけられるとか考えたくもねぇ」

「ま、出してしまったものはしょうがない。塩と胡椒使ってもいいんだろ?」

「殺されたって小僧をやつらに売ったりなんかしねーよ」

「イノシシ倒してくれてありがとよ! 坊主がいなかったら怪我人が出てもおかしくなかったよ」


 不覚にも涙が出そうだった。今回人前でアイテム袋を使ってしまったのは抜けているにしてもひどい失態だ。これが有用だと知られれば、殺されるか、利用されるのは考えてみれば当然のことだ。それに、年齢より大きく観られるといっても、精々が高校生の手前といった子供だ。イノシシを倒したり、不思議な袋を持っているなど周囲から気味悪がられてもしかたがない。しかし、タークさん達はそんな自分を気味悪がるところか、利用しようとも考えずに、真剣に俺のことを心配してくれている。それがどうしようもなく嬉しかった。


「はい……すみませんでした。皆さんに喜んでもらおうと思ったのですが、軽率な行動でした。次からは気をつけるようにします。心配してくれてありがとうございます!」


 そう言って、俺は深く長い礼をした。彼らになら全てを話しても受け入れてくれるかもしれない。しかし、それが逆に負担をかけてしまうことがあるかもしれない。ここはタークさんの提案をありがたく受け入れることとしよう。


「あぁ、分かればいいさ。さ、頭をあげな、仕切りなおしだ。みんな、どんどん食べるぞ!」

「「おー!!」」


 再び食事が始まり、楽しそうに、そして美味しそうに塩と胡椒で味をつけた肉を胃袋に詰め込んでいる。

 この村を出るまえに、この心優しき人たちに必ず何か返そうと、皆の笑顔を見ながら俺はひとり心に誓った。

お読みいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になりましたら評価やブクマをしてくださるとありがたいです。

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