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第9話 街の完成、そして……

 頭の中だけでは限界がるため、木の枝を取り出し地面に設計図を書いていく。まずは9分割した中の真ん中に位置する区画からだ。中央にはこの地を守る者の住まいが必要だろう。この地に後々人々が集まるにしても、まずはそれを束ねるものが必要になるし、そのものが住むのは利便的に考えても中央が一番良い。洋館みたいな形にするか、お城みたいな形にするかで悩んだが、見て楽しめるものと考えると、夢の国みたいなお城の形がいいだろう。


 形が決まれば次は内部構造だ。仮に城で生活するとすれば、掃除などをする使用人も必要になるだろうし、その使用人たちに料理を提供する料理人も必要になるだろう。また、そこまで広い国というわけでもないため、経理を担当する者や、他に色々補佐してくれる者、また警備にあたる者も必要になるだろう。それらを考えると100人は収容できる部屋が必要だろうか。いや、もし足りなくなっても困るから、200人は収容できるようにしよう。


 後はそれだけの人数を賄うための厨房も必要だし、大食堂も用意しておこう。他にも執務室や会議室、応接室と後は倉庫も必要だな。トイレとお風呂も忘れてはいけない。各個人の部屋に備え付けるのは勿論ではあるが、大浴場や各所にトイレの設置も必要だ。いちいち自室へ戻ってトイレするのでは面倒だろう。

 

 この地を守る者、つまり今であれば俺の部屋は、壁よりも高い場所で360度見渡せるのが好ましい。そうなると城の最上階になるが、1階を5mとして、6階もあれば高さとしては申し分ない。つまりは6階が俺の住まいとなる。う~ん、建物1つ考えるだけでも結構な時間がかかりそうだ。


 住居に関してはマンションみたいなタイプではなく、とりあえずは一軒家で良いだろう。基本的には2階建ての木造建築、間取りは一緒にしよう。住民が増え、需要が増えたら別の間取りも考えよう。


 旅人が泊まる用の宿屋はホテルみたいな物があれば良いかな。数もそんなに必要はないだろうから中央の区画に一つだけ用意しておこう。冒険者ギルドや商業ギルドも一つあればいいかな。そもそも冒険者なんて職業があるのかどうかも知らないけど、無かったらなかったで別のものとして活用しよう。商業ギルドは、この街でお店を開く際に必ず登録しなければならないことにする。そして、販売する予定の物などを確認し、問題が無ければ開業を許可することにしよう。そして、許可を出したら、店主自身に設計図を書いてもらい、それをもとに俺が建物を作ってあげるというのはどうだろうか。


 最後に娯楽誌施設を忘れてはいけない。取り合えず競技場を作っておこう。この世界は基本的に娯楽は少ないと考えて良い。何故なら魔物に生活圏を追われているような世界だ。恐らく貧困の格差も大きいだろう。そのような状況の中で娯楽を楽しむ余裕なんてないだろう。しかし、この街では魔物の脅威に怯えることなく、生活も最低限保証していけるように目指すつもりだ。そうすると心に少しは余裕も生まれるだろう。

 そして、この世界に会う娯楽といえば、やはり戦闘技術を競うようなものが良いのではないか。武人の洗礼された動きは、美しく、見ている者の心を奪うことが出来ると俺は思っている。もう少し平穏になれば地球であったスポーツ等を取り入れるても良いだろう。

 このように、俺は時間がたつのも忘れて、シムシティに没頭していった。



 


「ハッピーバースディ!」


 リアルシムシティから月日は流れ、俺は5歳の誕生日を迎えていた。大勢の者達に囲まれて楽しい誕生日会の真っ最中だ。


「え?プレゼント用意してくれてたんだありがとう!」

「プレゼントは2倍にして返せよって……現金なやつだな」

「うん、この料理おいしいよ!」


 なんて楽しい誕生日だろう。やっぱり誕生日は皆から祝ってもらうに限る。……すべてぬいぐるみだが。


 この5年間誰とも会話することなく、あまりにも寂しすぎたため、独り言をつぶやいてしまうくらいヤバイ精神に陥ってしまっている。もはや、ぬいぐるみでもいいから話し相手が欲しかったのだ。5歳児だからぬいぐるみが好きでも普通だしね。


 皆ぬいぐるみにお礼を言いながら、予め自分で用意したプレゼントの箱を開ける。中には地味な布袋が入っていた。


【名称】 真・アイテム袋 

【クラス】雑貨

【詳細】 無限に収納可能なアイテム袋。魔力を通すことで中身がわかり、自由に出し入れ可能。収納中は時間の概念がなくなる。魂のないもののみ収納可能。


 時々遭遇する魔物を倒してはカード化していいたが、コレクター魂というか、なんとなく集めていただけで、使い道がなかった。しかし、前世では魔物を素材として武器を作ったりする物語があることを思い出して、似たようなことが出来るのではないかと思い試してみたところ、簡単に製作することができたのだ。この方法に気がつくのが遅すぎるような気もするが、幼児の脳みその限界ということにして、気にしないようにした。


 脳みそといえば、俺が赤ちゃんのままこの世界に生まれたのは意味があったと考えている。柔軟な考えが出来る赤ちゃんの脳みそだったからこそ、この世界を受け入れる事ができたのだろう。もし、大人のままこの世界にきていたら、現実を受け入れることがなかなか出来なかったかもしれない。本来の俺はあそこまでテンションが変にならないし、もっと落ち着いているはずだ。たぶん。


 魔物を使用した製作物の第1弾として、ファンタジーといったらアイテム袋だろうと、収納の得意なスライムを選んだ。普通の『森スライム』では収納が500キロまでの重量限界が存在していた。第2弾として、森スライムよりも2周りほど大きい『グランデスライム』を使用してみると重量限界が5トンであった。そして、今回第3弾として製作したのが『レークススライム』を使用したアイテム袋だ。無限収納。いかにこのスライムが特別だったのかがわかる。


 結局あの戦い以降、このスライムを越える魔物に未だ出会っていない。やはり、あれは別格だったのだろう。そう易々とあれ以上の魔物に出会いたいとは思わないが。


 なにはともあれ、この5年で沢山のカードが溜まりに溜まり、部屋の一室を占領していたところだ。ようやくカード部屋問題が解決しそうでホッと胸をなでおろした。


 5年という長い年月を、他人と接触がない生活を送ったことのある人間はいるのだろうか。テレビ、携帯、パソコンのない世界で、だ。


 俺は元々人間が大好きだ。しかし、この世界では人間というものにまだ出会うことができていない。正直言ってそろそろ限界だ。このまま後1年もすれば、発狂してしまうかもしれない。その位人が恋しくなっている。地球にいた頃は、ずっと引きこもっていたが全く誰とも話さないなんてことはなかったからな。



「そろそろ冒険するべき時がきたのだろうか」


 今のこの森は安全だ。あのスライムより強い魔物に出会うこともなく、悠々自適名生活を送れている。しかし、この森を抜けた先がどうなっているのかまでは知らない。もしかしたら、あのスライムよりも強い魔物がうじゃうじゃいるかもしれない。命は一つしかない。もうあのような極限での戦いはこりごりだ。そう思うと、新たな領域に足を踏み出せずにいる。だが、やはり人間に会いたい。


「う~ん、でも、背格好ではもう問題ないけど年齢がな……」


 今まで人間の町にいかなかった理由として、年齢という問題もあった。魔法というものがある世界だ。街に入る時に何らかの方法で年齢が分かるなんてこともあるかもしれない。仮に年齢がバレた際、その年齢に明らかに合わない体型をもった人間がいたら怪しまれること間違いなしだ。幸いにも、最初みたいな急成長はないため、しばらくしたら年相応になるのではないかという期待もある。


 やはり、もう数年我慢するしかないだろう。せめて10歳、2ケタの年齢まで成長すればなんとか問題はないだろう。


「後、5年か……」


 5年って流石に長すぎじゃない? いやいやいや、5年で既に精神がやられそうなんだけど、追加でもう5年って……。

 うん、とりあえず、冒険に出かける準備をゆっくり整えて、その上でどうするか考えよう。何かに熱中できていれば、まだ大丈夫なはずだ。


 方針も決まったことだし、準備に取り掛かろう。


 まず必要なものは装備一式だろう。魔物の素材を用いることで様々な効果が生み出せるのは証明済みだ。魔物の特性を理解したうえで、実験を繰り返せば最高品質の装備を作り上げることが可能だろう。

 後は、乗り物も必要になる。子供が歩いて長距離を移動するというのは魔物が蔓延る世界では不自然極まりない。流石に自動車といった複雑なものは作りようがないため、馬車みたいな物で妥協しよう。というか、そもそもこの世界には馬車みたいな物が一般的な交通手段だと考えられる。これは本棚にあった本から得た情報を統合した結果導き出された答えではある。

 しかし、ここで問題が一つ出てくる。それは俺が馬の扱い方を知らないというのと、そもそも馬を見かけたことが無いという2点だ。これを解決する方法を模索していかなければならない。


 うん、他にも色々しなければいけない課題は山積みだ、これは意外にすべて解決するまでにあっという間に5年は過ぎるのではないだろうか?

 

お読みいただきありがとうございます。

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