人間になった猫
ずっとずっと昔、まだ子供だったころ、話を聞いたんだ。
『人間になった猫の話』
その猫には名前がなかった。
ボロボロで痛んだ真っ黒な毛の猫。
緑色の瞳がいつも何処かを眺めてる。
一人ぼっちの野良猫
その猫があるとき恋をした。
レンガ作りの家に住む少女。
金髪のおしとやかな可愛らしい少女。
いつも窓から外を見ている。
猫と同じ、光のない目で・・・・
ある日、猫がレンガに乗って少女のことを見ていた。
すると少女も猫に気づきいて手を差し伸べた。
「こっちにおいで、寒いでしょ」
少女の手が優しく猫を抱きしめて、部屋の中に入れてくれた。
あったかい手のぬくもりが居場所のない猫を安心させる。
「ねぇ、ネコさん、お外は楽しい?」
少女は猫に話かける。
伝わらないと分かっていても、話すことをやめない。
伝わると信じているから。
「私ね、お外に出たことがないの」
猫はずっと少女のに抱き抱えられたまま『ミャー』と一声ないた。
「え?なんでだって・・・・・・・・・・・・・・・・・私とても重い病気なの。だからお母さんが外に出ちゃダメだって」
少女の目が徐々に輝きを失う。
暗くなり、薄く涙がたまる。
このとき猫は恋におちた。
同じ目をした少女、この先に何もない。
恐怖で震える毎日。
少女と猫は同じだった。
それから猫は毎日のように少女の元を訪れた。
少女も毎日のように猫をだいた。
ぎゅっと暖かい手で。
猫がボロボロの泥まみれで来ても、少女は綺麗にしてくれて、またぎゅっと抱きしめてくれた。
いつしか、そこが猫の居場所になった。
居場所を見つけた猫
未来の見えない少女
いつか猫の目には光が戻り始めた、しかし少女は違った。
ある日、いつものように少女は猫を抱えてた。
しかし、いきなり猫は腕から解き放たれた。
それと同時に少女は咳き込み、しゃがみこんでしまう。
こんどは騒動を駆けつけ白髪のおじいさんがやってきた。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
少女をベットの上に寝かす。
「この野良猫め、お前がお嬢様を」
そういって襲い掛かって来た。
猫は傷だらけになりながらもその場を逃げ出す。
猫は初めて自分が少女を苦しめてることを知った。
それでも猫は毎日少女の元に来た。
でも、少女はベットで寝たきりで動いてくれない。
猫は毎日窓辺に花を一本おいってった。
雨の日も
風の日も
雪の日も
そうやって何日もすぎていった。
猫は唯見ていることしかできなかった。
時々おじいさんに見つかって傷だらけになっても
毎日花をくわえてきた。
傷だらけになり、ボロボロになり、居場所がなくなっても
猫は少女を愛し続けた。
いつしか目が見えなくなり、耳が聞こえなくなり、上手く体が動かなくても。
猫は毎日花を添えた。
二度目の冬がきて、花を銜えたまま猫がたおれた。
そのとき、声が聞こえたのだ。
優しい女のこの声、心の中に響いた。
『黒猫よ、お主は少女を愛し続けた、あきらめることをしなかった。どんなに傷ついても少女に愛を運んでいた。その努力を評して死ぬ前に一つだけ願いをかなえて進ぜよう』
猫はこのとき切に願った。
『僕を人間にして、もう一度少女に合いたい』
『その願い、かなえて進ぜよう』
猫の体が消え、少女の部屋に一人の少年が舞い降りた。
緑いろの目をした少年
かつて光を失った目、今はすべてが見える。
少年は少女の下にそっと寄り添い頬に手をあてる。
柔らかいまだ年端もいかぬ肌。
自分のせいで、もう一生触れないと思っていた。
光をくれた人に何もしてあげられないと思っていた。
でも、今、この命を懸けてすることができる。
こんどは僕が少女に光を与える。
少年は少女にぎゅっと抱きついた。
人間の一生なんて儚い
猫の一生なんてもっと儚い
そのすべての気持ちをこめて少女に抱きついた。
その後、人間になった少年は跡形もなく消え去った。
それがこの話の終焉である。
この話を聞いて僕は悲しく、その夜、よく眠れなかったのを覚えてる。
あっ、そういえばこの話は確か祖母が話してくれたんだっけ。
輝く目の金髪の祖母が。
へんな話ですけど、最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだ未熟ですので、誤字などがありましたら教えてください。




