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ドリーミンオンライン  作者: 沙φ亜竜
ステップ4 よりよいコミュニケーションを心がけましょう!
20/31

-2-

 戦争イベントはさらに続いていく。

 次々に現れる、アイテムを求める味方の人たちと、補給を断とうと攻め込んでくる敵国の部隊に、あたしたちは慌ただしく動き回っていた。


 ミズっちはあたしを心配してなるべくそばにいてくれたけど、それでもずっとあたしに構ってもいられない。

 あたしのそばからミズっちがいなくなり、ひとりでおろおろして困っているとき、決まって助けてくれるのはエンゼリッヒさんだった。


「サリーちゃん、大丈夫かい? ひとりで大変なら、オレが手伝うからね。遠慮なく頼ってくれていいよ!」


 そう言いながら、あたしの手を握ったり、肩に触れてきたり……。

 心配してくれているのだとは思うけど、いくらなんでもベタベタくっついてきすぎな気がする。


 だからといってエンゼリッヒさんと距離を置いたりするのも悪いだろうし……と考え、あたしは曖昧に受け答えることしかできなかった。

 どちらにしても、自分の役割に集中しなくちゃいけないから、あまり余計なことなんて考えていられるような状態でもなかったのだけど。


 そんなあたしとエンゼリッヒさんの様子をじーっと見つめている視線に、ふと気づく。

 それはクズキリさんだった。彼女は黙ったまま、こっちのほうに視線を向けていた。

 いったい、いつから見られていたんだろう……?


「あ……あれ? クズキリちゃん、どうしたんだい?」


 エンゼリッヒさんが慌てたように握っていたあたしの手を離す。

 その慌てぶりから、エンゼリッヒさんもクズキリさんの視線には気づいていなかったことがうかがえる。


 対するクズキリさんは、


「……べつに、なんでもないです」


 とクールな声で返すと、自分の持ち場へと戻っていった。


 そんなこんなで、いつの間にか時間は流れ……。

 唐突にドラの音が響き渡った。


「えっ? なに?」

「勝ったんだよ! 相手国の城を、突撃隊が攻め落としたみたいだね!」


 すぐ隣にいたエンゼリッヒさんが、あたしの両手を握り、飛び上がらんばかりの勢いで喜んでいた。



 ☆☆☆☆☆



 一戦目を勝利で終えたあたしたちは、二戦目の準備に入った。

 用意してあったアイテムもかなり消費したから、再びイベントメダルを集め、アイテムをまとめる作業をする。

 それだけで、その日は終わってしまった。


 次の日、すなわち三連休の二日目。

 正午になると同時に、二戦目がスタートした。


 今回は昨日の活躍が認められたとかで、あたしたちの補給部隊は攻略の拠点となる砦の近くに待機する役割を与えられていた。

 そのせいで昨日よりも忙しくなり、結局あたしはおろおろするばかり。


 ただ、一戦目はなにがなんだかわからないうちに終わっていた感があったけど、いくらあたしでも、二戦目ともなるとちょっとは余裕が出てきたようで。

 砦の近くだったから、手に汗握る緊迫した戦いが繰り広げられている様子を、あたしは目に焼きつけることができた。


 明るい光が弾けたり、激しい音が鳴り響いたり、なんだかすごい状況が繰り返されているのを横目で見ながら、自分の役割に集中する。

 どうやらそういった光や音は、特殊能力とか魔法とかのエフェクトっていうの? そういうたぐいのものらしい。

 召還獣を呼び出したり、精霊を呼び出したり、女神様みたいなエフェクトが浮かび上がって広範囲の人を回復したり……。


 上位職ともなると、様々な特殊能力や魔法などが用意されていると、話には聞いてはいたけど。

 実際に目の当たりにしてみると、それらはとても綺麗で魅力的に感じられた。

 あたしも早くレベルアップして、あんな素敵な魔法とか使ってみたいな……。

 思わずぼーっと眺めてしまい、手が止まって怒られたりしつつ、戦争イベントは続いていった。


「みんな、カッコいいなぁ~」


 あたしのつぶやきを聞き取ったミズっちが、そっと横に並ぶ。


「サリーも頑張れば、あんなふうになれますわよ」

「ミズっち……」


 優しい笑顔でそう言ってくれるミズっちに、あたしはほわん(丶丶丶)と温かな気分に包まれた。

 でもすぐに、


「ですが、サリーは今のショボいままのほうが、似合っているかもしれませんわね~」


 なんて言われ、笑われてしまう。


「う~、ミズっち、ひどい~!」


 あたしはポカポカとミズっちを叩きながらも、楽しい気分のまま、イベントのほうも同じように楽しむことができた。



 ☆☆☆☆☆



 と、不意に。


「スキあり!」

「きゃあっ!?」


 敵国の突撃部隊があたしたちに攻撃を仕掛けてきた。


「うわっ!? 守備隊が離れてるときに!」

「それを狙ってたのさ!」


 低レベルのあたしたち。いくらなんでも歯が立つわけがない。


 向こうは見る限り一パーティだけなので、人数は五人。

 片やこっちは、三パーティの補給部隊がまとまっていたから、総勢十五人。

 人数の上では勝っている。

 だけど、戦力差で劣っているのは明らかだった。レベル差というのは、それほどまでに大きく影響するものなのだ。


 その上、倒された人が復活するのは拠点のお城近くになるため、このままでは大して時間も経たないうちに、人数的にも不利な状況へと陥ってしまうだろう。

 とはいえ、守備隊の人たちもこういった事態は想定していたようだ。


「うあっ!? なんだこりゃ! ……くそっ、ベトベト弾か!」


 相手国の人が叫ぶ。

 どうやら、攻撃を受けたらひとたまりもない補給部隊を守るため、あらかじめ罠が仕掛けてあったらしい。

 よくわからないけど、敵国の人たちは顔面に見事にヒットしたそのベトベト弾によって視界が奪われ、さらには動きも鈍くなっているみたいだった。


「みなさん、今です! 集中攻撃ですわ!」

「言われなくたって、わかってるゼ!」


 ミズっちの声に、リンちゃんを含む補給部隊のみんなが一斉に攻撃を開始する。

 レベルの違いがあっても、動きを封じられて集中攻撃を受けるような状態では、さすがにどうにもならない様子。

 しかもベトベト弾は、突撃してきた五人全員にヒットし、抜群の効果を発揮していた。


「くっ、ここは退くぞ!」


 たまらずそう指示を出す、突撃部隊のリーダーらしき人。

 逃げる後ろ姿を、あたしたちは黙って見送る。


「わたくしたちの力では、追いかけても倒すまでには至りません。追い討ちするだけ無駄というものですわ。別の部隊と鉢合わせして反撃を受ける危険性もありますから」


 というミズっちの提案に、みんな頷いたからだ。


 こうしてあたしたちは、危機を乗りきった。

 高レベルの人たちを相手に、全員で協力して追い返すという大役を見事成し遂げたのだ!


 なんだか胸の奥から熱くなってくるような、ものすごい達成感があった。

 そっか、こうやってみんなで一致団結して目的を果たすっていうのが、このイベントの醍醐味なんだわ。


 あたしは改めて、オンラインならではの楽しみを噛みしめていた。


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