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ドリーミンオンライン  作者: 沙φ亜竜
ステップ3 大きなイベントには極力参加しましょう!
17/31

-5-

 あたしたちが足を運ぶと、中央広場はすでにたくさんの人でごった返していた。

 あまりにも多すぎて、広場から溢れ出しちゃうくらい。

 戦争イベントに参加する同じ国の人たちが今、準備のために集まっているのだ。


「うわ~、こんなにたくさん、このゲームをやってる人がいたんだ~」


 なんて感嘆の声をこぼしたら、


「おバカさんですわね。全部で八国あるのですから、このサーバーだけで八倍、さらにはサーバーが全部で十五……十六だったかしら、ともかくそれだけあるのですわよ? ここにいる人なんて、ほんの一部分にしかすぎませんわ」


 ミズっちからツッコミを入れられた。


「ふえぇ~……」


 でもまぁ、八倍の十六倍とかいう(あたし的には)天文学的数字に、想像の許容量を超えてしまって、いまいち驚きの度合いも少なかったりして……。


「ま、たくさんいるってことだな。しっかし、こんだけうじゃうじゃと人がいたら、司令官もまとめるの大変だよな!」


 リンちゃんが他人事のように言う。

 ……もっとも、実際に他人事なのだけど。


 リンちゃんがまとめる立場だと、絶対にまとまりなんてなくなっちゃう。

 そりゃあ、あたしよりは確実にマシだと思うけど……。

 あたしが司令官なんかになったら、絶対おろおろして、周りから呆れられちゃうよ。


「ふふふ、確かに大変そうだよね。でも、だからこそレベルの高い人が率先して、いろいろと指示を出して頑張るんだ。あそこにいる人たちみたいにね。ほら、あの赤いバッヂをつけている人たちが、司令官ってことになるんだよ」


 あたしたちのそばには、一緒に広場に入ってきたセルシオさんもいる。

 リアルで会っているため親近感は湧いているものの、実際の性別と違うということもあり、どうしても違和感が拭いきれない。

 でも、あたしたち三人よりも早くこのゲームを始めていたらしいから、頼りになるお姉様……じゃなくってお兄様? といった感じだった。


 広場では赤いバッヂをつけた高レベルの人たちが、てきぱきと指示を与えていく。

 戦争イベントでは、役割ごとにパーティを組むことになる。

 高いレベルの人は戦闘部隊として突撃隊、陽動隊、守備隊などに分かれるらしい。

 中くらいのレベルの人は、それをサポートする役割となり、そして低レベルのあたしたちには、補給部隊の役目が与えられた。


 力押しだけでは勝てないようにという配慮か、戦争イベントに持っていけるアイテムの数には上限がある。普段持てる数よりも、さらに数が制限されるのだとか。

 戦闘部隊やサポート部隊が消費アイテムを使って数が減った場合、戦線を離脱して戻ってくることになる。

 そういう人たちにアイテムを渡すのが、あたしたち補給部隊の役割だった。


 戦争イベントでは、倒された人数がカウントされて、一定数に達した時点で負けとなる。

 もし倒れさたとしても、拠点にまで戻されるというペナルティーがあるものの、すぐに復活して戦線に復帰することが可能になってはいる。

 だけど、低いレベルの人は自然と狙われやすくなるから、通常は個々に行動せず、なるべくまとまっておくのが定石らしい。


 数ヶ所の補給地点を設けて、そこに低レベルの補給部隊を集め、迅速にアイテムの受け渡しができるようにする。

 補給地点には守備部隊も配置し、敵の襲撃から低レベルの人を守ってくれるのだという。


 ふえぇ~。いろいろ考えてるんだね~。……ゲームなのに。

 などとつぶやいたら、ミズっちから怒られてしまった。


「所詮ゲームだ、なんて考えてはダメですわよ? 司令官をやっているような高レベルの方々は、本気でこのイベントに燃えているのですから」


 あたしだけに聞こえるようにそう言って、ミズっちはあたしの頭を軽くコツンと叩く。

 言われていることは理解できたけど、なんだか子供っぽい扱いを受けている気がして、あたしは不満を述べながら口を尖らせた。

 すると、


「そういうところも、子供っぽいんだけどな」


 すかさず、リンちゃんから容赦ないツッコミが飛んできた。



 ☆☆☆☆☆



 しばらくすると、あたしたちのそばにも赤いバッヂの人たちがやってきて、パーティの割り振りを指示された。


 あたしはリンちゃんやミズっちと一緒のパーティ。

 セルシオさんだけは、あたしたちよりもいくつかレベルが上だから、違うパーティに入ることになった。


 ひとつのパーティは、最大で六人までという制限がある。

 上限人数にまではせず、ひとり分の空きを作って、五人パーティで構成していくようだ。

 ひとり分の空きを作っておくのは、パーティの入れ替えを素早くできるためと、高レベルの人が一時的にパーティに入り、直接指示するためという意味があるとのこと。


 さすがにこれだけの大人数の声がすべて聞こえてくると、どの声を聞いていいか判断が難しい。

 だから通常は、パーティの中だけで聞こえる会話というのをメインにして、それ以外の声は聞こえないようにしておくらしい。

 パーティの中のひとり、リーダーに対してだけは、高レベルの人から個別に指示が届き、リーダーはその内容をメンバーに伝える。

 そうやって、すべての部隊をまとめていくのだという。


 う~ん、あたしには手に負えない世界だわ……。

 あたしみたいな子は、高レベルになんてならないほうがいいのかも……。


 ところで、他のパーティと同様、あたしたちも五人パーティとなるように指示された。

 そんなわけで、あたしとリンちゃん、ミズっち以外に、ふたりの人が加わることになった。


「……どうも。わたしはクズキリといいます。よろしく」


 ひとりは、ちょっと控えめな印象の女性だった。

 女性というよりも、女の子って言うべきかな。

 もちろん、外見は、ってことだけど。


 落ち着いた雰囲気と名前の印象から、なんとなくミズっちに近い感じに思える。

 ……ミズっちのほうは、全然控えめじゃないけどね。


「うふふふ、よろしくお願いしますわね。同じメイジですし、名前も同じ和菓子系ですから、親近感が湧きますわ。もしよろしければ、わたくしのことをお姉様と呼んでいただいても構いませんわよ?」

「……い、いえ……、遠慮しておきます……」


 ミズっちはそんなことを言って、クズキリさんを困らせていた。


「アハハハ! ハーレム状態だ! 女の子ばっかりだと、明るくっていいね~!」


 そしてもうひとりは、なんだかちょっと軽めな笑い声を響かせる男性だった。


「オレはエンゼリッヒ。見てのとおり、ファイターだよ! よろしくね~!」


 そう言いながら、次々と四人の手を取り、勝手に握手をしてきた。


「よろしくね、サリーちゃん!」

「あっ、はい、よろしく」


 汗のせいか、ベタッとしていて気持ち悪かったけど、不快感をあらわにしたら悪いよね……。

 あたしはそう思って我慢していたのだけど。


「よろしくね、ミズちゃん!」

「うふふふ、よろしく」


 ミズっちは笑顔で答えながらも、エンゼリッヒさんの手が離れた瞬間、握られていた手をあからさまにハンカチで拭っていた。


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