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千年後に目覚めた伝説の女神、寝てただけなのに何故か騎士団に溺愛される 〜最強の聖騎士団長が過保護すぎて外に出られません〜  作者: 丸ノ内きみこ


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6/25

翌朝の決意

千年間眠っていたせいなのか、昨夜はあまりよく眠れなかった。


普通の食事で良いと説得した結果出てきた豪華な朝食を終えたタイミングで、リヴィアは意を決して切り出した。 朝陽の差し込むテラスには、今日も一点の曇りもない白銀の甲冑を纏ったアルヴィスが、彫刻のように控えている。


「ねぇ、アルヴィスさん。……お願いがあるの」


「何なりと、リヴィア様。次の供物(食事)の献立でしょうか。それとも、昨日不敬を働いた国王を極刑に処す手続きでしょうか」


「どっちも違う! ……あのね、私を『女神様』って呼ぶのをやめてほしいの。それから、その過剰な敬語も」


リヴィアの言葉に、アルヴィスの眉がわずかに跳ねた。彼は静かに膝をつき、リヴィアの目線よりも低い位置で首を振る。


「それはできかねます。貴女様はこの世界の光。我ら信徒がその名を呼び捨てにするなど、魂が穢れるに等しい所業です」


「魂なんて穢れないよ! 私はただの魔導士。千年前、あなたの先祖のヴァンと泥だらけになって遊んでいた、ただのリヴィアなの。今のあなたと私の間には、分厚い壁があるみたいで……すごく、寂しい」


「寂しい……?」


アルヴィスの表情が、一瞬だけ揺らいだ。鉄壁の騎士団長の顔に、年相応の青年の戸惑いが浮かぶ。


「……リヴィア様。貴女は、私が信仰心だけで貴女を守っているとお思いですか?」


「え、違うの?」


アルヴィスは立ち上がると、リヴィアとの距離をぐっと詰めた。威圧感ではなく、包み込むような、けれど逃げ場のない熱量が伝わってくる。


「……千年前、私の先祖であるヴァンは、貴女を守りきれなかったことを死ぬまで悔やんでいました。一族に伝わる秘匿記録には、彼の後悔が血の滲むような言葉で綴られています。『もし次があるなら、次は誰にも彼女を奪わせない。たとえ世界中を敵に回しても、彼女の安息の場所を、この命で囲い抜いてみせる』と」


アルヴィスの大きな手が、リヴィアの横にある手すりに置かれた。


「私はヴァンの末裔です。同時に、この千年間、一度も貴女を忘れたことのない一族の執念そのものです。私が貴女を『女神』と呼び、聖域から出さないのは……貴女がこの時代の薄汚い政治や、欲望にまみれた他国の王たちの目に触れ、再び利用され、傷つくのを防ぐためです」


アルヴィスの瞳が、リヴィアを射抜くように見つめる。


「世界は貴女を『神』として求めている。でも、私は……貴女を『神』という檻に閉じ込めてでも、失いたくない。これは信仰ではありません。……私の、エゴです」


「アルヴィスさん……」


「ですから、リヴィア様。どうか、私に『女神』を守らせてください。貴女がただの人間として笑える場所を維持するために、私は世界に対して『女神の騎士』という仮面を被り続けなければならないのです」


リヴィアは、彼の熱い言葉に圧倒された。 彼はただ盲目的に神を信じているのではない。千年前の後悔を背負い、リヴィアという一人の少女の「平穏」を守るために、あえて彼女を神格化し、世界から隔離しようとしているのだ。


(……過保護の理由が、思っていたよりずっと重くて……愛されてた)


「わかった。呼び方は……まあ、少しずつでいい。でも、たまには二人きりの時に、普通に話して。アルヴィスの『エゴ』、私、嫌いじゃないから」


リヴィアが少し顔を赤らめて微笑むと、アルヴィスは一瞬だけ呆然とした後、慌てて視線を逸らした。


「……っ、承知いたしました。では、本日の『普通のお話』として……リヴィア様のその微笑みがいかに破壊的であるか、三時間ほど講義させていただいてもよろしいでしょうか」


「やっぱり重いよ!!」


結局、二人の絶妙に噛み合わない、けれど温かい距離感は今日も続いていくのだった。



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