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追放魔法少女は隣国で最強になる  作者: finalphase
第1章 追放と僅かな希望
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第7話 盗賊と小さな奇跡

 私たちが野営をしていると、何者かに囲まれた。雰囲気や言葉遣いから、私は彼らが盗賊団らしきことを認識した。

「やい、てめぇら、金目の物を出せ。俺の名はドブネズミのジャック。職業は盗賊でぃ。狙った獲物は逃がさねぇ。」

「自分で職業盗賊って言うんかい?」という突っ込みを入れつつ、私は身構えた。

サムは、「ドブネズミのジャック」という名称を聞いて笑っていた。大したタマだと私は素直に感心した。

「笑うんじゃねぇ。こう見えても俺ぁ盗賊のプロなんでぃ。やれ!」

彼の掛け声と共に、取り巻きたちが一斉に私たちに襲い掛かる。私は弓矢で応戦するが、その攻撃は簡単に弾き飛ばされる。盗賊たちに追い込まれて、地面に横たわる私の前に御者が立ちはだかった。

「ミナ様、ここは私が引き受けますゆえ、お逃げください。」

「そうはいかないわ。」

「私は一国の御者にすぎませんが、ミナ様は魔法少女なのです。ミナ様を隣国へ無事お届けするのが私の役目…」

そう言うと、サムは盗賊団の前に躍り出た。全員で10人ほどいる彼らに勇敢に立ち向かう。私が放った弓を地面から拾い上げ、2人ほどに致命傷を負わせることに成功する。だが、他の8人に押さえつけられる。

「サム!」

私は彼の名を叫びながら必死に起き上がる。

「なんでぃ、魔法少女より御者の方が強いのかよ。いや、あんた随分弱えーんだな。」

ドブネズミのジャックが呆れたように言った。

「まずはこいつから金目の物を頂く悪く思うなよ。大人しくしろ。」

ジャックがサムの首にナイフを突き立てる。私は渾身の力を振り絞って素早く立ち上がると、ジャックに向かって体当たりをかわした。ジャックの身体が後方に吹き飛ぶ。次の瞬間、ジャックの仲間が私の後頭部に後ろから蹴りを入れた。私は声を挙げる間もなく、その場に倒れ込んだ。解放されたサムが再び盗賊に捨て身で立ち向かう。

「ミナ様、今のうちに早くお逃げください!」

「そういうわけには、いかないのよ!」

必死に叫ぶ彼に返事をする。結局、私もサムも仲良く盗賊に捕まって、身体を縛られた。荷物を取られ、中身を確認される。私の心は、絶望に染まっていた。なぜなら、私がたった今取られた荷物は私の命そのものと言っても過言ではないからだ。あの中には、長い旅に必要な費用、食料、飲料のすべてが入っている。そう、生きるために必要なもののすべてが。だからこそ、それを失いそうになった今、絶望感が押し寄せる。私が特殊な能力を持っていれば、餓死することを避けられるかもしれないけれど、残念ながら私の有している能力は魔法少女としての微々たる戦闘力のみ。しかも、それに至ってもかなり弱い。御者であるサムに助けられるくらいなのだから。肝心の優しさもこういう時には役に立たない。

「なんて情けねぇんだ。…良くこれで一国の魔法少女が務まったもんでぃ。同情するぜ。だがよ、俺らにも生活があるんでぃ。悪事を働いてでも金目の物を手に入れる必要があるんだ。悪く思うなよ。」

起き上がったジャックが、私の荷物から金品を奪おうとしたその時、遥か上空から何かが飛んできた。それは全身を炎で燃やして、まるでフェニックスのように美しく輝き、ジャックの頭に攻撃を加えた。

「痛ってぃ。何すんでい。」

それはジャックの言うことを気にも留めず、再びジャックの頭に直撃した。周りに覆っていた炎が消えると、見慣れた姿がそこにあった。

「ピータ!どうしてここに?」

サムも彼がこの場所に来たことに驚いている様子だった。ピータは盗賊たちの頭を嘴で突きまくった。彼らは痛がって、私たちの荷物を置き去りにしてその場をあとにした。ピータは空を周回して私たちの傍まで来ると、嘴で器用にロープを髪切った。

「ありがとう、ピータ!」

私はピータに深々と頭を下げた。彼は元気よく「ピー」と鳴いて、再び上空の彼方に消え去った。私とサムは顔を見合わせて、安堵の息をついた。私がサムに話しかける。

「ねぇ、サムさん?」

「ミナ様、何でございましょう。」

「私さ、良く考えたら自分1人の力でモンスターを倒せたこと1回もないんだよね。ほんと魔法少女がとして頼りなくて、その、今日もサムさんに助けて貰っちゃって。ごめん。」

「滅相もございません。ミナ様、顔をお上げください。人の上に立つ立場になりますと、権威に慢心し、傲慢な振る舞いに及ぶ方も少なくございません。

しかしながら、ミナ様は常に謙虚でいらっしゃり、いかなるご境遇の方にも変わらぬご敬意をもって接しておられます。

このようなお姿勢は、誠に立派であらせられます。

戦闘の才につきましては、これからゆっくりと身につけていかれれば何ら問題ございません。」

「サムさん、ありがとう。」

私は嬉しさのあまり涙目になっていた。

「全く、何て情けないお方なんだ。」と心の中で思いながらも、サムはミナにティッシュを渡した。

「こちらでお涙をお拭きになってくださいませ。」

私は微かに微笑みながら涙を拭いた。


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