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追放魔法少女は隣国で最強になる  作者: finalphase
第1章 追放と僅かな希望
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第1話 選ばれし者、ただ1つの理由

 私、ミナ。サーヴェニア王国の魔法少女だ。

魔法少女になるには、1つの条件がある。それは何らかの能力において秀でているということ。この国には私も含めて5人の魔法少女がいる。名前はクラリス、イザベラ、シャーロット、アメリア。クラリスは学業においては、常にトップクラスで頭脳派の魔法少女。戦闘力自体はあまり優れていないが、私たちが戦闘で使う武器の多くは彼女によって開発された。次に、イザベラ。彼女は防御力に一段と秀でた魔法少女。攻撃力はそこまで高くはないが、彼女が貼るバリアはまさに鉄壁。敵のいかなる攻撃も受け付けない。そして、シャーロット。彼女は驚異的な治癒能力を持ち合わせている。戦闘で負った傷は彼女の手にかかれば、一瞬で完治する。最後に、アメリア。彼女の攻撃力はサーヴェニア王国の中でもトップクラス。けれど、1回の攻撃で体力を限りなく消耗するため、それが使えるのは最大で1日2回程度である。どの魔法少女も、タイプは違うけれど、素晴らしい能力を持っている。けれど、私にはそんな力はない。攻撃力も高くなければ、防御力も低いし、頭が良い訳でも、運動神経が優れているわけではない。そんな私が、魔法少女に選ばれた理由は「人を思いやる心」を評価されたからだという。

魔法少女学校…それは魔法少女を目指す者を育成する機関。魔法を使える者だけが入学でき、特殊な才能を認められた者だけが卒業して、魔法少女になることができる。私がそこを卒業できたのは、多分運が良かったからだと思う。恩師のフィリア師匠は「人を思いやる心を真っすぐに持てるのは、なかなか真似できない、特殊な才能よ。」と言ってくれたけれど、私はそうは思わない。困っている人がいれば助けたくなるし、寄り添ってあげたくなるのが人間だと思う。クラリア、イザベラ、シャーロット、アメリアは入学早々から魔法少女としての頭角を現し、1年ほどで卒業していった。魔法少女学校は実力制なので、能力が評価された者から卒業することができるのだ。努力が報われず、自分には魔法少女の素質がないんだと思って去っていく者も少なくない。私は結局卒業するまで5年の歳月を費やした。この学校を卒業する平均年数は3年なので、2年分多く勉強したことになる。教科も、実技も落ちこぼれ。皆の前で怒られてばかり、それが私だった。私が孤児院育ちだったことも相まってか、学校では無視され、いじめられる。そんな地獄のような日々を送っていた。嫌なことがある度に、辛いことがあった度に、心の中で「負けるか!」と叫んで自分を奮い立たせた。

そんなある日、いつものようにいじめられて泣きながら家路を歩いていると、少年に襲われているモンスターの姿が目に映った。学校以外で魔法少女に変身することは禁止されていたけれど、私は咄嗟に変身し、少年を助けようとしていた。学校の決まりよりも、目の前の命の方が大切だと思ったから。けれど、もとより運動神経が優れているわけではないのだ。私はモンスターの攻撃を諸に喰らって地面に転がった。モンスターが私にとどめを刺そうとする。その時、少年が叫んだ。

「お姉ちゃん、左に避けて」

少年の指示に従い、ギリギリで攻撃をかわす。

「お姉ちゃん、敵は後ろだよ。あ、今だ!攻撃して!早く!」

少年に言われるがままに動く。これじゃあ、どっちがモンスターと戦っているのか分からない。結局、私の不甲斐なさのせいで目の前のモンスターを倒すことはできなかった。何とか追い払って、少年を助けることで精一杯だったから。昔から私の戦闘力はこの程度だ。少年は私の傷の手当てをしてくれた。少年は名をローワンと言った。

「痛たたっ。ローワン君、もっと優しくしてよ。」

少年の消毒が傷に染みる。

「これくらいは我慢してよ、お姉ちゃん。さっきは助けてくれてありがとう。でも、危なっかしすぎるよ。僕みたいな子どもにさえ心配されるなんて。」

少年の言葉に私は目を伏せた。

そして、静かに呟いた。

「そうだよね…私、どうしたらもっと強くなれるのかな。」

少年は私の言葉に噴き出した。

「ぷっ。お姉ちゃん、ほんとに情けないね。魔法少女なのに。」

「余計なお世話よ。」

「僕が言うのも何だけど、少しずつ成長してけば良いんじゃないかな。いきなり強くはなれなくても、毎日一歩一歩で。その途中で死なないでよね。」

その日少年に言われた言葉が胸の奥に突き刺さっている。

私は翌日、謹慎処分を食らう覚悟で学校に向かった。けれど、フィリア師匠が私に告げたことはかなり意外なものだった。

「ミナ、あなたは少年を守るために、魔法少女に変身したそうですね。」

「はい、申し訳ありません…」

「良いのですよ、謝らなくて。私はリスクを冒してまで少年を助けようとする思いやりの心、そして戦闘力が低くても敵に立ち向かう勇姿を評価したいと思います。あなたの卒業を許可したいと思います。」

私は驚きのあまり空いた口が塞がらなかった。

ただ、気が付くと、恩師のフィリア師匠に無我夢中で何度もお礼を言っていた。

その日から、私は魔法少女としての活動を始めたのだった。


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