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第28話 一方、その頃コーネリアスは





 ――あれから。

 祖父の言うことを疑ったわけではないが、ファナという女がどういう女なのかを自分なりに調査してみることにした。


 ――ファナ・クレイドル。


 今は名前をかえて、ファナ・ノーワンと名乗っているらしい。

 年齢は十七歳。

 冒険者ギルドに登録しており、クラスはSクラスらしい。

 冒険者のランクに詳しくはないが、どうやらそれなりに優秀ではあるようだ。


 ――なるほど。だからあの時、ギルド長と一緒にいたのか――。

 ならばやっぱり、あの時もうすこし粘ってファナを引き入れておくべきだったか……。


 そうすれば、ファナの口利きで冒険者コンへの出資も容易になっただろうし、ギルド長に紹介してもらって第二王子と接触することもできただろう。


 ……あの、エリクとかいう男が邪魔をしなければ。


 思い出すだけで腹立たしさが募り、自然と眉間に皺がよる。

 冒険者ギルドでファナを調べるついでに、あのエリクとかいう男のことも調べてみた。


 ――エリク。

 二十二歳。ソードマスター。

 クラスはB。


 やはり、予想していた通り苗字がない。

 底辺のど平民だ。


 クラスがファナよりも下のBだということも、余計しようもなさを感じた。

 どうせ、自分より実力に長けたファナの腰巾着をしているのだろう。


 あの男とファナを引き離し。

 どうにかしてファナをクレイドル家に戻し、とりあえず形だけでも結婚する。


 そうすれば俺は伯爵位を得て安泰だし、祖父も納得させられるだろう。

 正直ファナは趣味ではないが、職業妻として置いておき他に遊び女を見繕えばいい。


 ――金さえあればなんとかなる。


 実際、クレイドル家の帳簿も確認してみたが、確かにファナが家に収めている額は結構な額だった。


「ねえええ、コーネリアス様あぁ〜」


 浪費しか脳のない妹と比べたら。

 雲泥の差と言っても良かった。


「あ、あのう……。メアリ、クローゼットがすかすかになってしまって、お部屋がさびしいのですけれど……」

「そうか」


 クレイドル家の書斎で帳簿を確認している俺に、すすすと擦り寄ろうとしてくるメアリ。

 そんなメアリに対して、すぱっと一刀両断で返す。


 先日、玄関先で借金の返済を請求しにきた商人と遭遇した後。

 宣言通りクレイドル家の資財を売り払い、当座の借金の返済に充てた。

 もちろん、その中にはメアリのドレスも含まれる。

 財産整理のためにメアリの衣装部屋に入った時には目眩を覚えた。


 たかが伯爵令嬢に、これほどのドレスが必要だろうか?

 自分を公爵令嬢かなにかと勘違いしているのではと思うほどの膨大な量。

 中には、買うだけ買って一度も袖を通したことがなさそうなものもあった。


 メアリは『クローゼットがすかすかになった』と言うが、それでも三分の一程度は残してある。他の伯爵令嬢と比べてもまだだいぶ多い方だ。


 それとて、今後まだ俺が把握していない借金が発覚した時のために残しているに過ぎないが。


「――そんなことより。ファナと連絡を取る方法を調べてこいと言ったろう」


 そう追求すると、メアリはぐっと顔をしかめて反抗するような表情を見せる。


「……本当に、お姉様と結婚するおつもり?」

「ああ」

「お姉様なんて、社交界にまったく興味なんてないから、貴族社会では役に立たないわよ」

「別に、ファナにそんな役割を求めているわけではないからいい」

「…………」


 俺の言葉に、メアリはますますぶすくれた顔をする。


「ふん。いいもーんだ。メアリはメアリで、もっとメアリのことを大事にしてくれるお金持ちの男の人を見つけるもん!」


 拗ねたメアリは、俺の前で大人ぶって背伸びをすることをやめたのか、より子供じみた口調で頬を膨らませた。


「あっ、そうだ。どうせお姉様と連絡を取る方法を探さなければいけないのなら、冒険者ギルドにでも行ってみようかしら。そうしたら、噂の王子様にも会えるかもしれないものね!」

「……ファナを連れ戻すために動くのは構わんが、俺の邪魔はするなよ」


 能天気なメアリに苛立ちを覚えながら釘を刺すと、俺にそう言われたメアリはまた面白くなさそうな顔になって「ふん」と言い捨てて部屋を出て行った。


 しばらくすると、ガラガラと馬車がクレイドル家の敷地から出ていく音がした。


 ――ちっ。


 考えるよりも先に舌打ちが出た。

 メアリが家を出て行ったのだ。


「おい、あいつを追いかけて連れ戻せ。外でまたツケで買い物しないとも限らん」


 そう言って、クレイドル家の使用人の一人にメアリを追いかけさせる。

 こいつも、いつまでも家に置いておくとただの金食い虫だ。

 ファナを戻したら、さっさと外に嫁にでも出すのが得策だな……。


 そんなことを思いながら。

 メアリを追いかけるべく出て行った馬車の音を聞きながら、再び舌打ちをするのだった。

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