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『スキマに棲むキミへ。~この恋は、悪魔に支配されている~』  作者: 南蛇井


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第20話「君の声で、闇がほどける」

1.笑わない少女、真白

「……綾瀬くんは、やっぱり、優しいね」


夕暮れの渡り廊下。真白がぽつりと呟いた。


学校の窓にはオレンジ色の光が差し込んでいて、彼女の白銀の髪を、炎のように照らしていた。


「今日は春野さんと話してたね。屋上で、ふたりきりで」


「……見てたの?」


「うん。別に、気にしてない」


でもその言葉とは裏腹に、真白の瞳は、少し曇っていた。


「優しさって、不平等だよね。誰にでも向けられるものなら、特別じゃない」


智久は返す言葉を探した。


でも、真白はすぐに微笑んだ。とても、薄く。まるで自分に言い聞かせるように。


「だから、わたしは……“感情”なんていらないって、ずっと思ってたのに」


2.君を見て、心が痛くなった

放課後、校舎裏のベンチ。


真白は自らの正体について、少しだけ語った。


「私の母は人間、父は“悪魔”だった。……私は、“境界の子”」


「……境界?」


「人でもなく、悪魔でもない。だから、どちらの世界でも居場所がなかったの」


それでも――と、真白は続ける。


「なのに、君を見ているとね……私、心が動くの。

誰かのために、なにかをしたいって、初めて思ったの。

……痛いくらいに」


智久は、じっと彼女の言葉を聞いていた。


その沈黙が、逆に真白の胸をかき乱す。


「ねえ、お願い。そんなふうに黙って優しくしないで。

何も言わないのに、心だけ揺らして……」


「――壊れそうになるじゃない……っ!」


その瞬間、真白の背後に黒い影が立ち上がる。


彼女の感情の揺らぎに呼応するかのように。


3.溢れた感情、触れた手

黒い影――“悪魔”が、真白の背から這い出し、手を伸ばす。


「ダメだ、真白!」


智久が思わず叫び、彼女の手を握った。


「感情が暴走すれば、お前自身が“悪魔”になる……!」


「いいよ、それでも。私は……“人間”になりたいの。

苦しくても、哀しくても、嬉しくても、――誰かの手が、温かくて、

……そんなのを、本当は知りたかったんだ」


「なら、俺が――教えるよ」


智久は、しっかりと彼女の手を包み込む。


「真白、お前はもう、人間と同じだ。

苦しんで、泣いて、嫉妬して……それって、全部“生きてる”証だよ」


その言葉に、真白の目から、涙が零れた。


初めて、彼女は泣いた。


泣きながら、手を握り返してきた。


4.“愛”が呼ぶもの

だが――。


その瞬間、遠くで“鐘の音”が鳴った。校庭の空間がひび割れ、異質な気配が溢れ出す。


「来たか……!」


真白が顔を上げる。


「“完成された悪魔”が、動き出したの」


「え……?」


「私の“もう一人の兄”――すべての悪魔を統べる存在。

……彼は、私が“人間になろうとすること”を、絶対に許さない」


智久の背筋に、悪寒が走る。


(あいつが……この物語の“ラスボス”……!)


そして、空が割れるように、黒い翼の影が夜空を覆っていった――。



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