第四十七話ヤギの目
激しい火花と表現でよく言うものの実際に火花を散らすような戦いはまさにこのことを言うのだろう。佐鹿と真崎、互いに一歩も引けない状況がこの戦場全体をフロアのように沸かせていた。そして互いの状態を詮索し合っている。
(真崎はパワーはあるがスピードがあまりない…ということは懐に入ることがキーか?)
佐鹿の読む間もなく真崎の拳が腹部に直撃する。痛みを我慢し真崎の手に視線を向ける、すると左手が少し前に出ている。
(次は左か…アイツは動きが遅いから…)
その一瞬で佐鹿は懐に入り込み足を蹴る、そして真崎の腕を掴み顔面を殴った。
「お前…!」
「ああ、一手そのまま読んでやったぞ」
そしてそのまま土が混じった足でのハイキックを顔面に繰り出した。
(クソ!ここまで見越してやがったか!)
真崎はただガムシャラに拳を振るう。だがその巨体による動作の遅さと疲労で攻撃は全く当たらず、たあだ反撃され続けるだけであった。
(戦闘IQはかなりあるようだな…だが)
目に土が入ったままそれでもなお突進する。佐鹿は当然よけ続けるものの、何と真崎は後ろに倒れた。そしてそこには佐鹿が居た。
「お前!何で分かったんだよ!」
「お前の性格的にな…ある程度避けた後は俺の後ろに行ってナイフでも使うと思ってな、ほら」
真崎の手には佐鹿のナイフが握られていた。
「いつの間に!」
「そして…馬乗りになった状況なら相手を一方的にボコせるんだよ、俺はあいつの忠犬だからななんだってしてやる」
手が血まみれになりながらも、真崎は佐鹿を殴り続ける。
(ここから抜け出す方法?これならいけるかもな)
殴られ意識が飛びそうになりながらも佐鹿は見極め、腕を掴んだ。
「忠犬ってのはな…普通柴犬とかがやるから可愛いんだよ…誰がブルドッグに任せるんだよ…」
「ブルドッグに任せた方が安心できるだろ?」
「まお前はブルドッグにしては顔がいいけどな」
尚も掴み続けるが突如真崎の筋肉が隆起し始める。
「お前…腕掴んでばっかだな…それしかできないのか?」
先ほどから佐鹿はよく真崎の腕を掴んでくる。それはただ単純な攻撃の一手に思われたが
「それなら話してやってもいいぞ」
あろうことかすぐに手放してしまった。
「何がしたいんだお前?」
そして真崎の拳が眼前に来る。それを颯爽と受け流し背中に肘を叩きこむ。
(少量でもダメージを叩きこんで俺を倒すつもりか?)
佐鹿目掛けて振るうも拳は中を切る、すかさず佐鹿は真崎の顔面を平手で押し出し足を蹴る。
「足ばっかり狙いやがって!」
そしてトラックのような思いタックルが体にぶつかる。この少し狭い空間では他人にぶつかるはずなのに真崎はそれを鑑みず佐鹿にぶつかっていく。気づいてないだけで何人かが巻き込まれているかもしれない。なのになぜこの大男は全てを巻き込んでこの戦いに勝とうとしている。
「お前も何か負けられない理由があるのか?」
ナイフで刺されようとも、足を中心に蹴られようとも、止まらない様子はどこか自分に重ねてしまうところがあった。
「ハハッ…お前と俺は同じかもな」
真崎は微笑しながらも佐鹿に周り蹴りをし、顎を殴る。
「俺はあいつの忠犬だ!何がなんだろうと!俺は止まらない!」
何度も何度も拳をぶつけに来るものの佐鹿はいなし続け髪を掴み、顔面を今度は佐鹿の方から何度も殴る。
「天道か…?」
狂犬のように暴れまわる真崎はこちらの問いに答えない。
「お前の友達だからか?」
だがその言葉を聞いた瞬間、真崎の手が止まった。
「友達?」
近くの壁の一部を千切り取り投擲武器として投げてきた。
「それ以上に決まってるだろ?」
だが天道と真崎の二人は全く雰囲気も、背丈も、性格も違う、まるで表裏一体…佐鹿は意味が理解できなかった。
「俺も負けられない…か…」
次の瞬間、佐鹿は飛び上がり周り蹴りを真崎の顔面目掛けて直撃させる。
「クソッ!」
土煙が舞い、血が噴き出すも真崎はよろめくだけでびくともしない。
「おぉおおおおおおおおお!俺は不死身だあ!」
今に掴みかからんとする手を振り払い、ナイフを突きだす。
「俺も負けれないんだな…それが…BIRDを潰すまで!」
壁の破片とナイフがぶつかり合う。それは周りの戦っている両軍の構成員の一部がこちらの様子を伺うほどだった。
「どうした!俺を殺したいのかぁ!」
ナイフにより削れた壁の破片でこめかみ目掛け佐鹿を殴る。血がダラダラと垂れるが、何故かナイフをしまう。
「なんだ!?」
真崎が驚くその間に手を殴り、壁の破片を吹き飛ばした。
「ステゴロだあ!真崎ぃ!」
その言葉を聞いた真崎は笑みを浮かべる。
「いいぜ!」
そして拳と拳がぶつかる。圧倒的な対格差があり、右手が使い物にならないほどダメージを受ける。
「がっぁあああ!痛ってぇ!」
思わず右手を抑える。
「終わりだ!」
真崎が上から叩きつけようとする。だがしかしいつの間にか佐鹿が懐に入っていた。
「こっちのセリフだ」
そして左の拳で真崎のみぞおちを思いっきり殴る。
「ぐぁああああ!」
今までのダメージが蓄積され真崎は叫び声を上げその場に倒れた。
「ハハッ…俺の負けだよ…」
どこか満足そうことを言ったものの、倒れた真崎を見るような佐鹿の目は、ヤギ…いや悪魔のようだった。




