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Snake Skin  作者: 中野震斗
S1バンドバトル
35/42

第三十五話バキバキ

バンドバトルで演奏する曲は三つ。一つはオリジナル、一つはカバー、もう一つはどちらでも良い。


(アイツらのオリジナル曲…前はかなりクオリティ高かったし今回も楽しみだ)


前奏は蛇山のギターと澤村のベースから始まる、そして鳴神のドラムだ。その演奏を神谷は凝視する。


(前奏は、いい感じだな…)


そして黒川の歌声の後、川のシンセサイザーが入ってくる。そして途中からサブのボーカルとして蛇山が入ってくる。これで五人が出す六個の音が揃った。


(最近始めたばっかでこれは将来有望だねぇ~)


柴下は穏やかな雰囲気で五人を見つめた。


(やっぱ私も働けるライブハウス探さないとな…)


そうこうしているうちに一番最初のサビの部分まで来た。


最初のサビの処まで来た。


(よしっ!大丈夫私!歌えてる私!)


黒川は心のなかで自分を勇気づけた。


____________________________________


学校に行っていない黒川にとってライブハウスは唯一の居場所だった。次第に学校に行ってみようという気も出てきた。でもまだ人を信じ切れない部分もあった。黒川と蛇山は同じボーカルということもあり、一緒にいる機会が多かった。


「ねぇ…ちょっといい?」


黒川は誰かに相談したかった。


「どうした?」


何か自分に区切りをつけなければいつまでも学校にいけないままだ。黒川は心の中でいつも思っていた。


「私ってこのままでいいのかな?」


「このままって?」


蛇山と会ってからまだ二か月ほどしかたっていない、なのにこんなに信頼しきっていいものなのかわからなかった。両親もいないうえに名も知らぬ誰かに傷つけられた心と自分で傷つけてしまった体で生きるのはとても苦しかった。


「私ってさ、学校に行かないでずっとライブハウスにいるけど本当にこのままでいいのかわからなくなってきて…」


「うーん」


蛇山は少し考えを巡らせる。


「学校は…行った方がいいんじゃない?」


「うっうん…そうだよね…」


「でも…正直、今はどうすればいいのかわからないかな。ま明日に少し期待でもしようよ」


「明日…ね」


「まぁでも今はライブに備えて練習しないとな」


「あっそうだね!頑張ろう!」


蛇山も内心思うことがあった。


(黒川は本当は元気だから友達とかもすぐできると思うけどな…)


____________________________________


皆も気づかぬうちにいつの間に曲は終盤まで来ていた。


(ドラム遅れてないよな!?)


鳴神は他の皆に比べて音楽経験が少ないので焦りが凄かった。観客や他の四人はあまり気にしていなかったが、鳴神本人が唯一気にしていた。


(ドラムを弾きながら…他の音とも合わせるんだ)


鳴神の恋心はまだ潰えていない、だからこそ今聞いているかもしれないその人《柳田》に届けたいという気持ちがこのドラムの演奏だ。

____________________________________

(柳田さん…聞いていますか…俺らの本気マジ演奏ライブ!)

____________________________________


そして最後のギターソロが終わった。


(アイツ中々やるじゃねぇか…)


テオジンは元敵ということもあり少し上から目線で感心していた。


(詩音がやりたいことを見つけれたよかった…)


佐鹿は元カレ…というか保護者のような目線で黒川のこと見ていた。そして審査員たちも満足そうな顔をしていた。


一曲目は終わったものの、鳴神は不安が残りながらドラムのスティックを見つめていた。


(なんか…ヒビ入ってね?)


____________________________________


次に二曲の準備をする。


「蛇山…一応これ上げる」


川が渡してきたのはのど飴だった。


「あぁ…次の曲激しめだからな…」


そして準備が終わり演奏が始まる。ギャラリーの反応はというと、先ほどのロックながら爽やかな局長に反しハードパンクな曲調…先ほどまで青春を歌っていた蛇山は今は激しいグロウルを叫んでいる…


(ねぇーちゃん…あんな激しい曲弾いてんだ…)


澤村の弟和樹はかなりの衝撃を受けていた。


____________________________________


和樹から見た双子の姉の日和の印象は根暗ではないが明るくもない。そんな印象だったが中学、高校と友達の話を聞いたことも家に連れてきたこともなかった。ずっと部屋で一人でベースの練習をしていた。


誰と引くわけでもないのに。


でもライブハウスでバンドを始めてから少し顔が明るくなったような気がする。おしゃれを意識し始めてからは弟ながらかわいいと思っていた外見がさらに美しく見えた。だがそんな姉がこんな激しいバンドでベースを弾いているのは想定外でしかなかった。


____________________________________


澤村はどんどん早くなるベースに対応する。


(私だってやっと友達ができたんだ!あんたと同じように青春してる!)


澤村に全くそんな意図はなかったが和樹には姉がそういってるかに思えた。


____________________________________


先程の曲とは違い今回シンセサイザーの川はあまり目立つ位置ではない。だがだからといって怠ってはいけない影の功労者的な立ち位置なのである。


(一応アイツに呼ばれて来たわけだか…結構頑張ってるじゃねぇか。)


名取は親目線で感心していた。


(あんな逸材の友達が少ないなんて…神は何をしてるんだ…)


____________________________________


今回は普段のシンセサイザーの使い方とは違い後ろに定期的にオートチューンを流し続ける。これが簡単に見えて意外に体力を使う。


(一音も!一音もズレちゃダメだ!)


川圭介…普段学校では勉強はできるものの蛇山や鳴神とはあまり絡めていない。でもそれは一石一鳥の千歳も同じだった。だからこそメインの音楽業に打ち込むことが出来たのだ。


(このバンドだからこそみんなと会えたし、澤村さんともいい感じなんだ!)

(だから恩返ししなきゃ!)


川にとってこの仲間と会えたロック…いや音楽はどんな些細なことであっても本気でやってこそ意味があるものだ。曲が終わるまで川はキーボードをたたき続ける。


引っ込み思案で陰気な正確な彼も今この新たな学生生活を作り始めた。


____________________________________


今日にラウドでハードでデスボイスなサウンドが流れ始めた際は観客も驚いたがそれはもちろん審査員たちも驚きを隠せなかった。


「なんか…急に方向性変わったね…結構頭がアレ系のばんどなのかな?」


柴下は自分のバンド時代の活動を忘れたかの如くスネークスキンにレッテルを張る。


「でもあなたも相当頭おかしかったでしょ?」


その発言には流石に突っ込まざるをえなかった。しかし柴下が圭一郎に見せたのは意外にも満足そうな笑顔だった。


「でも~こういうイカレたバンド?っていうのかな?メガマックスRYOくんも含めて大好きだからさ」


「RYO…姉御にそういってもらえて感激です」


むふーと効果音でも付きそうな顔を柴下はするがメガマックスRYOが急に姉御と呼び始めたことに違和感を抱いた。審査員のうち神谷はあることに気づいていた。


(そういうば今日は海月の口かずが少ないな…いつもは文句言いなのに…)


____________________________________


そうして二曲目が終わった。皆の体力は消耗しきっていたが、中でもギターとボーカルを兼任する蛇山の疲労は計り知れないものだった。まだ限界ではなかったものの息切れをしていることが黒川には分った。


「ねぇ…大丈夫?」


蛇山に小声で尋ねる


「あぁ…でも次は本当に歌いたい曲なんだ」


フラフラの蛇山に肩を貸し壇上に立ち皆が息を飲む。そして最後の曲の始まりだ。


川のシンセサイザーがピアノのリズムを奏でる、澤村と鳴神の音が重なり黒川のコーラス、そして蛇山の歌声。経路はバラバラだが集合地点は一緒だ。


____________________________________


この曲は本来一人で歌うはずの曲だが、最近他の歌手とのコラボバージョンが出た。そのコラボバージョンを今回黒川と蛇山が歌うことになった。


「この曲…」


なんの曲を歌うかという提案の後に蛇山はこの曲を流した。


「葉月もこの歌手知ってるの?」


「えっ?うっうん…」


蛇山は少し動揺を見せた。まさか黒川に近づきたいがためにわざわざ情報をかき集めたことは本人に知られてはならない。


____________________________________


ここまで来るのには大きなトラブルこそなかったものの、かなりの紆余曲折があった。沢山練習して沢山歌い、喉を嗄らした、腕を釣ったこともあった。それもここまで頑張ってこれたのは何かその先の目標や利益のためではない。単純にみんなとの練習が楽しかったからかもしれない。蛇山は心の中で思った。


____________________________________


そしてギターとドラムが一番激しくなる部分にいく……が。


プツッ バキッ


何か嫌な音がし自身のギターを見ると弦が一個外れていることに気づく。


(まずい!早く直さないと!)


弦はすぐに直せたもののバキッという音が気になる


(もしかしてピックもイカレたか!?)


だがピックを見ても何ともなっていない。


(じゃあ何だ)


蛇山は一瞬周りを見渡す。するとすぐに理由が分かった。


鳴神が妙に片方が短いスティックでドラムを叩いている。


(もしかしてスティックが折れたのか!?そんなことあるか!?)


今は人のことなんか気にしていられない。蛇山は弦を弾き続ける。しかし鳴神はそうともいかない。


(スティックが折れた!?そんなことあるぅ!?)


鳴神も蛇山と全く同じ反応だった。このスティックは鳴神曰中古で買ったとても安いもの…つまり経年劣化が激しかったのかもしれない。


(こっこれも何かのライブパフォーマンス受け取ってもらえるかもしれない!)


鳴神は心の中でそう思うことしかできなかった。


この状況に当然観客は困惑していた、今日二度目だ。


「佐鹿さん…あれ…」


「あぁ…折れてるな…ドラムの…なんていうんだっけ?」


「スティックです」


当然審査員たちの反応も気になるところだ。


「ね~スティック折れちゃったけどちゃんとできてるね」


意外にもこの状況で鳴神は起死回生のチャンスをつかみ取ることが出来た。


「どんな状況に落ちようともバンドマンならチャンスをつかみ取らないとな」


神谷も感心していた。すると海月が口を開く。


「俺が間違ってた…」


「ん?」


久しぶりにしゃべったと思ったら海月らしからぬことを言うので神谷は思わず聞き返す。


「あいつらいいな…それに比べて…俺は傲慢だったよ」


「どうした?」


「俺…調子乗ってました、歌や演奏が一人でもうまいからって、でもあいつらは五人もいるうえ短期間で結成したバンドなのに俺より精神面では上じゃないすか?しかもあいつら俺より年下らしいし……なんか自分が情けなくなって来て…」


「俺後であいつらに誤ってきていいすか?」


神谷は海月の瞳を見る。嘘はついていないようだ。


「お前まだ高校生だろ?大丈夫今ならまだ間に合うさ」


そしてトラブルはあったものの演奏が終わりスネークスキンの出番は終わった。


「みんなーお疲れ!」


声をかけたのは黒川だったがそれと同時に千歳ら一石一鳥も後ろから出てくる。


「次ですか?」


「うん!」


いつも通りの奇抜な格好であの四人が壇上に上がる。


「しっかり見といて!」


沖野がギターを肩にかけ言った。

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