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Snake Skin  作者: 中野震斗
S1バンドバトル
34/42

第三十四話リハ×本番×観客

ライブハウスの中で五人は次のバンドの番を待っていた。


「いや~マジで緊張するな~」


「「「「・・・・」」」」


蛇山が適当なことを言って場を和ませようとするが皆は緊張で固まってしまう。


「だっ大丈夫だよ!本番は明日なんだから!」


黒川も明るく振舞おうとするが冷や汗をかいていることが丸わかりだ。


「うっうん頑張ろう!」


そういってるうちに自分たちの番がくる


「次スネークスキン、どーぞー」


「はっはい!」


皆と一度ライブをしたはず……本番よりリハーサルの方が緊張するのは気のせいだろうか?


「いきまーす!」


五人はステージに上がる。リハでは神谷さん一人が椅子に座りこちらを見ていた、これが本番では増えるとなるととても気が滅入る…


(さて…本番に一回しか出てないあの子たちの演奏はいかがなものか…かなり楽しみだな…)


神谷は期待や不安ではなく、新作のオリジナル映画を見るようなまだ見ぬ物へ対しての好奇心へと変わっていった。

何故、圭一郎はあのシンセサイザーの弟を見込みが高いと感じたのか?何故ボーカルが二人いるのか?バンド結成の経緯は?いろんなことを聞いてみたものの、やはりライブを見てみないとわからないものがある。


「さぁ、どう転ぶかな」


神谷は演奏を始めた五人をマジマジと血走った目で見つめ始めた。


____________________________________


蛇山は演奏しながら、一瞬神谷の方を見る。

すると血走った目でこちらを凝視している。


(何あれ!?怖!?何人か人殺してんじゃないの!?)


と思わんばかりの熱を感じる。別に神谷のせいでギターと歌声が崩れるわけではない、ただ何であそこまで怖い顔があの人から出るんだろう。そんな単純な疑問で頭がいっぱいになるだけだった。


(集中しろ…いや集中は出来てる!でも…気になる…!)


蛇山はそんなことを考えながらただただ曲を弾き歌い続ける…それが一流のバンドマンになるまで一歩だ。


____________________________________


神谷は蛇山を凝視しながら考える。


(なるほど…最近バンドを組んだにしてはかなり上達が速い、あいつが見込んだのも納得できる。)


蛇山のギター、澤村のベース、川のシンセサイザー、鳴神のドラム、黒川の歌声。その五つが重なりこのバンドは完成されている。高校生バンドはまだまだ奥が深い魅力があると神谷は思った…


____________________________________


そして皆の演奏が終わり神谷は用紙に集計をする。


「このバンドは〇…このバンドは×…」


神谷はバンドの名前を書きだし出来が良かったものに〇、出来が悪かったものに×を着けていく。

性格が悪いと思われるかもしれないがこれも皆を理解し、評価するために必要なのだ…


「このバンド…」


そのバンドは一石一鳥だった。


「うち所属のバンドで一番伸びてるし曲もよかった、ライブパフォーマンスは大分アレだったけど…〇でいいか」


どんどんの〇×を着けていくとスネークスキンの名を見つけた。


「この子たちか…かなり良かったから〇を着けておくけど…本番の経験が乏しいから突然のトラブルに対応できるかな…」


少し考えた後、神谷は眼鏡を拭く。


「まっやってみないとわからないか…」


____________________________________


ついに来た、来てしまった…バンドバトルの当日が…出場するバンドが抱く感情は希望か?絶望か?いや多くは希望に向かうためへの不安だろう。


(ここで私達のバンド生命が決まるんだよね!?緊張が凄い!)


「みんな!準備はできた!?」


「まだ出番じゃないから大丈夫だよちょっと落ち着いて。」


焦りに焦っている黒川を川は窘める。


「そっそうだよね…で出番はいつだっけ?」


川はパンフレットを見つめる


「えっと…次の次…」


「次の次!?ヤバいって!!」


いつも何も考えていなさそうな鳴神も流石に焦りだした。


「龍生!ちょっと落ち着いて!確かに無駄に焦っても何にもならないし…」


正気を取り戻した黒川は鳴神を制止する。


「落ち着いてくれてよかった…ところで蛇山は」


「蛇山ならトイレじゃね?」


川も少しの焦りを見せる。


「なんだよ…リーダーなのに…」


「そういえばひよちゃんは?」


「ひよちゃん?」


恐らく澤村のことだろうが聞き慣れない言い方に少し疑問を持つが、確かに澤村の気配が見当たらない。


「ここだよ…」


先ほどまで気配を感じなかった澤村は生気のない幽霊のような雰囲気で川の真後ろに隠れていた。


「怖っ…どうしたの…」


「怖いのはこっちのセリフだよ…怖いというか緊張だけど…」


結局蛇山はギリギリになってトイレから出てきた…


___________________________________



初めのバンドを見終えた観客たちは次のバンドの出番を待つ。


(最近の高校生はすげぇな…)


蛇山の叔父である大山は45歳独身彼女いない歴=年齢ながら自分の甥と同年代の若者たちに感心していた。


(結構いいじゃん、高校生にしては)


日和の弟である和樹はスマホ片手に演奏を振り返る。


(そういえば次はどんなバンド何だろう?)


和樹はパンフレットを見る


(次のバンドはスネークスキンか…さっきのバンドの名前が死都羅須シトラスだったから凄い普通な名前だな)


和樹はふと疑問に思う。


(何でねーちゃんはライブのチケットなんか持ってたんだ?確かに家にベースはあるけど…)


そして五人がステージの壇上に上がる。


(どういう人たちなんだ…)


そのバンドのベースはどこか見覚えのある風貌…髪色…顔…完全に自身の姉である日和だった。


(ねーちゃん!?なんで!?)


和樹は驚きのあまり自分でも気づかないうちにスマホを落としていた。


___________________________________


「…………ここで合ってるんだよな」


途中からライブハウスに入る黒いフードを被った怪しげな不審者…ではなくそれは情報屋名取士郎だった。


(あの眼鏡…シンセサイザーなのか…)


端でステージに上がった皆を見ながら水をすする。


「頑張れよ…眼鏡」


そう名取は呟いた。


その名取の隣には寺尾仁太ことテオジンがいた。


(なななっ何でここに名取が!?もしかして蛇山が目的か!?)


名取はもちろんその筋の業界ではテオジンや鳴神と違って有名人である。それに加え蛇山も現在BIRDに捜索される程の騒動を起こした人物でもあるためテオジンからしたら別の意味で緊張するような場所になる。


(とっ隣の人は…別に何ともないよな…)


テオジンが隣を振り向こうとすると、誰かが耳元まで来ている。


「!?」


気配は感じるものの話しかけてこない…いやその恐ろしい雰囲気が時間を遅く感じさせているのだ。


「だっ誰だ…」


何とか勇気を振り絞ってその人物に声をかける。すると…


「よっ」


テオジンが振り返るとそれは佐鹿だった


「佐鹿さん!?なっ何でここに?」


佐鹿は少し複雑そうな表情を浮かべる。それはテオジンにもすぐにわかった。


「………………あの白髪の子いるだろ?」


佐鹿が言うのはボーカルとして紹介されている同年代くらいの少女…そして鈴木が撮った写真と同じ人物だ…


「前々から探してましたよね…あの子とはどういう関係なんですか?」


「元カノ…」


佐鹿はそうきっぱりと答えた。


「その…何で元カノを探してたんですか?もう別れたんでしょ?それじゃストーカーと変わりませんよ」


二人は周りの迷惑にならぬよう小声で話すがテオジンは自分で佐鹿の地雷を踏んでしまったと思う。


(あっまずいかも…)


「すっすいませんそういうつもりじゃないんですけど…」


だが佐鹿はあまり気にはしていてないようだった。


「……色々あってさ…ちゃんと別れてなかったんだ……」


意外にもテオジンから見て佐鹿はいつもより穏やかそうだった。


「それより、せっかく来たんだろ?見ようぜ」


「はっはい!」


佐鹿とテオジンはライブに視線を戻そうとするがチケットをもらっただけでこのライブがどういうものかわかっていないためあることを疑問に思う。


((何で審査員みたいなのがいるんだ?))


___________________________________


ついに始まったバンドバトルでは通常のライブと違い、フロアの一番前に五人ほどの審査員がいる。そして後日結果と順位がライブハウスに張り出される形式だ。


(審査員って誰なんだろ…)


蛇山は審査員たちに目をやる。何を話しているかはわからないが重要な確認しておいて損はない。


右から順にKAWAの店長兼川の兄圭一郎、現在ライブを行っているGOD立川の店長神谷明浩。そしてその横には見慣れない黒髪ロングの女性と…あの忌まわしき調子に乗りに乗っているロン毛男、海月せいこうだ。


(あいつ!出る側じゃなくて審査員なのかよ!?)


しかも海月は審査員だというのに、缶ジュースを飲みながらこちらを見下すような瞳で見ている。


(うわー!めっっっちゃむかつく…!)


そして海月の横の髭とサングラスが特徴ないかつい男……一瞬目を疑ったが、前回ライブをしに来たメガラバのボーカルメガマックスRYOだ。


(マジかよ!?何でRYOさんまでいるんだ!?)


今の緊張の度合いをコップとして表すなら、もう少し水を入れればあふれてしまいそうだ。蛇山とメンバーのみんなのコップは同じとは限らない、みんなこの緊張に耐えられるか。蛇山は心配を抱えながら本番が始まった。


___________________________________


「いや~さっきのバンドよかったね~」


そう呑気に話すのはあの神谷の友達のバンドの元メンバー、名を柴下一沙しばしたかずさという。


「一沙は今のバンド、〇付けておくかい?」


「う~んそうだね…まぁいいんじゃないんかな」


柴下はライブステージであんなことをしたとは思えないくらい、今は完全に丸くなっている。


「他は?」


川の兄圭一郎は


「う~ん、いつもなら〇を付けてあげたいけど…今日は厳しくいかないとですからね…ギターがまだ練習不足だと感じたので…×で…」


圭一郎は〇を着けてあげたい気持ちをグッと抑えて、心を鬼にし×を付けた


「くっ海月くんは…」


海月は圭一郎にギラギラとした厳つい雰囲気で威圧する。


「甘いんすよ川さんは、少しでもミスがあった時点で×付けるにきまってるじゃないすか。」


この海月という男は自己中心的で相手を見下し、尚且つ完璧主義な性格の厄介な人物だ。


「RYOは~」


メガラバのボーカルのメガマックスRYOは海月とは違い、いい意味で変わった人物だ。一人称も何故かRYO…


「このバンドはありだと思う、でもミスが割と多かったから今回はあえて×を付けよう。」


「で?次のバンドは?」


海月はそう言い放つ。そして蛇山たちが出てきた。


(あのバンド…そうかあの眼鏡はシンセサイザーなのか…)


今回はいつもとは違う服装で出てきた皆に圭一郎は思う。


(オシャレしてバンドか…青春じゃねぇか。俺も友達が居ればな~)


柴下はスネークスキンはもちろん、このライブハウスに属する他のバンドも見たことがない。


(私も…どこかで働こうかな…でもこのバンドに興味がわくねぇ…五人もいるとなると大変だろうに。)


メガマックスRYOは以前KAWAでライブをしたことがあったので、彼らに薄っすら見覚えがあった。


(前のライブで見かけた気がする…思い出した!ボーカルが途中で倒れたバンドだ!)


メガマックスRYOは圭一郎に聞く。


「あのバンド川さんところですよね?」


意外にもこの人は他の人には丁寧な言葉でしゃべる。


「はい、シンセ担当の奴いるでしょあいつは僕の弟何です。」


そう話しているうちに始まる…蛇山たちの演奏が…!

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