第三十話一石一鳥
スネークスキン渋谷の小さなバンドハウス「ライブハウスKAWA」で誕生、一回のライブだけで多くの観客を魅了しバンドバトルに出場することになった…
そう海堂がモノローグのように話を進める
「一回しかライブしてないのね、それなのにバンドバトルに出れるなんて相当な実力者じゃない?」
リーダーの言葉に皆は感心するが唐突に始まった展開に柳田はついていけていなかった
「あわあわ…」
そして千歳は写真の中からメンバーを見つめる
「えっと…これがボーカルとギターの蛇山君で…」
「あとドラムの…鳴神君…」
「ベースの日和ちゃんとシンセの川君」
「あと写真には写ってないけどもう一人のボーカルの詩音ちゃん」
四人はスネークスキンのライブ映像を見て観察をし始めた
「そういえばロイちゃんが好きな鳴神君の衣装結構凝ってるね」
「いやこれは別に衣装じゃないらしい…」
沖野の言葉に柳田の顔が徐々に赤くなる
「言わないでよ~!」
沖野の頭をポカポカと殴り始める。すると千歳がドアの向こうにいる人物に気づく
「あ…またいるよ…」
そこにいたのはあのロン毛の男、それに柳田も気づく
「うわ…あの子たちに絡んでる」
「私たちが止めに入ってもあれだしね…」
少し気まずくなった雰囲気に沖野が話を変える
「あそういえば次のライブでもミルワーム使うの?」
その言葉に千歳はキラキラとした目で話す
「もちろん!!今回の曲は恋人との死別を歌った悲しきラブソング!!」
「だからってミルワーム居るの!?」
「死=死体、死体=放置された愛…放置された死体には蛆虫が群がるの、だから代わりにミルワームにしようかなって」
柳田、海堂は彼女の芸出的観点に協力的だったが沖野は困惑の様子を隠しきれなかった
「だからって観客にミルワームぶちまけるのは違うでしょ!!」
柳田が沖野の肩を掴む
「違うよ、これは芸術だよ」
その言葉に海堂も賛同する
「これだから非芸術者は…」
そんなわちゃわちゃした雰囲気のまま時は流れていった。本当の目的も忘れて…
あのロン毛の男と乱闘になりそうになってから少し空気がひりつき始めた
(どうしよ…あの人のせいで空気がかなり重いぞ…)
だがこれを逆手にもくもくと練習を始める川
(どうしよ!凄い複雑な感じになっちゃったぁ…)
気まずい雰囲気でただじっとするしかない黒川
(何か話した方がいいかな…でも私なんかが話してもな…)
この状況を良くしようと考え事をする澤村
(………………………………)
そして何にも考えていない鳴神とメンバーはそれぞれ思うことがあったが、蛇山は立ち上がる
「どうしたの?急に立ち上がって」
すると質問をした黒川に向かい言う
「ちょっとあの人ストーカーしてくる」
「うん行ってら……え?」
黒川が制止しようとする間もなく蛇山は行ってしまった……
蛇山は先ほどのロン毛の男を見つめる
(なるほど…あれを見た感じシンガーソングライターか?)
(つーかあんな性格じゃ誰とも協力できないか)
そんなことを思っていると後ろから気配がする
「………………」
そしてそっと振り返るとそこには一石一鳥のベース海堂だった
「あっ海堂さん…」
「あの人になんかいや嫌なことでも言われた?」
図星を突かれ気まずそうにする蛇山を海堂は見通していた
「まああの人は最近そんな感じだからね」
海堂の発言に心当たりがありながらも、蛇山は質問する
「あの人って誰なんですか?」
「名前は海月せいこう、このライブハウスだと私たちに次いで二番目くらいに人気があるの」
(凄い名前だな…)
と蛇山は内心思う
「で、最近人気が出てきたからか…すごい調子に乗ってるの」
(結構ずかずか言う人だなぁ…)
「あの人もバンドバトルに出るんですか?」
「うーんどうなんだろ?練習してるから出るかもね」
と海堂は両料を得ない返事をする
(まぁあの人にはあんまりかかわらない方がいいかな)
「ありがとうございます、いろいろ教えてくれて」
そういって去ろうとしたとき、海堂は海月の方に近づく
(何か用でもあるのか?)
蛇山が思う立ち止まる
「結構久しぶりじゃない?」
何気ない顔で言う海堂に海月は複雑そうな表情をする。
「………………なんだよ」
そしてそっけない返事をする
(見た感じあの二人も仲が悪いのか)
すると海月が机をその場にあった机をたたく
「そっちから別れ切り出したんだろ?もう関わんなよ…」
その発言想像できるのは二人がもともと付き合っていたということ
「……ごめん…ちょっと顔見たかっただけなの…」
海堂はいつもなら見せないような落ち込んだ顔で去っていった
(あれ見た感じもしかしてDVとかもあり得ちゃうのかな…あいつ…)
海月と海堂の知らないところで蛇山に因縁をつけられそうになっているのであった
海月の件を皆が忘れたとき、黒川は店長に言われたライブパフォーマンスについて悩んでいた
(確かに一石一鳥のライブパフォーマンスは凄いし、前に来たメガラバもライブパフォーマンス結構気合入ってたしなぁ…)
黒川は悩み続ける
(でも流石に観客にミルワームぶちまけるのはちょっと…)
そして一石一鳥が上げた過去のライブ映像を探ってみることにした
普通真っ先に目に入るのは四人の奇抜な衣装のはずだが、それが気にならないくらい衝撃的なものが置かれている。それは何故かマイクの隣に置かれた本格的なラーメンだった
「何でラーメンおいてるの!?」
チャンネルの概要欄を見てみると
「今回の曲は中国をモチーフにした曲なので、ラーメンを置いてみました!」
「ラーメンを置いてみました!じゃないよ…何でそうなるの…」
この独特な芸術センスはいつからなのか気になり過去の動画を探るとすぐにわかった。初期はありふれたガールズバンドだったが、海堂虹乃…もといNJIKAIが加入してからというものかなり独特なライブパフォーマンスを繰り広げるようになった。
「うーん…このバンドはあてにならないな…みんなに聞いてみようかな」
黒川は皆のところに向かうことにした。
まず澤村のところに向かうことにした
「日和ちゃーん」
「ひゃ!」
「ちょっといい?」
突然話しかけられたことにびっくりしたのか澤村はかわいらしい声を上げる
「何だ詩音ちゃんか…どうしたの?」
「驚かせちゃってごめんね~実はライブパフォーマンスの案を募ろうと思ってて…」
「ライブパフォーマンスね…」
澤村は考える
「うーーん……」
そして考え出す
「何か照明ビカビカに付けるとか?そうしたらなんか派手な感じするかも」
黒川は自身のメモに書きつなれる
「ありがと!じゃ川くんかな?」
「あ…」
自分では何にもアイデアが思いつかないので身を潜めていたが気づかれてしまった
「アイデアか…僕はあんまり思いつかないな…」
黒川は手を合わせる
「お願い!ちょっとだけでいいから!」
川は無難なアイデアを出してその場を乗り切ろうとする
「何かダンスをするとか?」
その言葉に黒川は目を輝かせた
「ダンスね!なんか踊れる曲だといいかも…あ、自分で作ろうかな!?」
ウキウキでメモを書きつつ
「ありがとう二人とも!」
黒川は別のところへと向かった
次に行ったのは鳴神のところだった
「鳴神くーんちょっといい?」
鳴神を探しに来たはずがそこには柳田もいた
「ん?ああ黒川か」
鳴神と柳田は恋人と見間違うほど距離が近かったが、二人に下心はあまりなさそうだった
「えっと…お取込み中だった?」
二人は顔を赤くして否定する
「詩音ちゃん!?違うよ!?」
「べっ別にそういう関係じゃないからな…」
何か勘違いされたのか三人とも焦っているようだった
(鳴神君は知ってるのかな?)
いらない心配をしつつ黒川は鳴神に聞く
「ライブパフォーマンスか…」
鳴神は自身のカバンを弄る
「これとか使えそうじゃないか?」
鳴神が取り出したのは血まみれの警棒やナイフのような櫛、それにバイクのキーがあった
「これは出していいやつなの?」
黒川はバイクのキーを指さす
「あっミスった」
バイクのキーはおろか鳴神は先ほど取り出したすべての物をカバンに入れなおした
「じゃなくてこれだ」
そこにあったのはミルワームの入った袋だった
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
黒川は絶叫し鳴神に袋を投げつけた。それを鳴神はキャッチする
「ナイスキャッチ」
柳田がぐっと親指を上げる
「何だよ…せっかく柳田さんにもらったんだぞ」
「私が上げました」
一石一鳥の芸術センスだけは真似したくなかったが、鳴神がそっち側に行っていることを感じてしまった
「まっまぁアイデアありがと!」
このセンスが伝わった鳴神はなんとなく恐ろしそうなことを感じそそくさと黒川は去っていった
「あとは葉月だけか…」
黒川は蛇山のところに向かった。
蛇山は気になることがありつつも黙々とギターを続けていた。
「ヤッホー」
「わぁ!」
後ろから千歳と沖野が居た
「なっなんですか、偵察ですか」
少し動揺する蛇山を沖野は見抜く
「もしかして…なんか秘密とか知っちゃった?」
どうもこのバンドメンバーたちは簡単に図星を突いてくるから困る
「…鋭いっすね」
「やっぱり優香ちゃんは洞察力凄いね」
「でしょでしょ~でなに?」
そうずけずけと入ってくる二人に蛇山は押されつつも答えようとする
「わっわかりましたから…でも二人もなんか俺に言いたいこと言ってくださいね」
その後二人は顔を見合わせる
「あれ…言う?」
「でっでも…え~せっかくだし聞いちゃおっか!」
そして蛇山は気になっていることを聞く、そう海堂のことだ
「海月って人分かります?」
二人はあまり浮かない顔をする
「あぁ…いるね」
「海月と海堂さんってもしかして元恋人だったりします?」
二人は同時にすぐ答える
「「違う、二人は別のバンドのメンバー」」
そのまま二人は続けた
「何か音楽の方向性的なので揉めてこっちに来たらしいけどね」
「じゃあ、あの人の性格が結構粗暴なのって…」
「うん…多分まだ虹乃ちゃんのこと気にしてるんじゃないかな?」
しかし蛇山は
(まあでもあの芸術性だと、揉めるのも仕方ない気もしないくないな…)
と心の中で思ってたが言うことはなかった
「でも、二人は別に恋人同士とかじゃないんですね?」
二人は少し黙りながら考え続けた後、沖野が言う
「どうなんだろ?でも海月のあの未練タラタラ具合はなんかありそうだけどね」
そしてもう一つ気になっていたことを聞く
「…確かあの芸術性は大体海堂さんの入れ知恵なんでしたっけ?」
沖野は黙ったままだが千歳は自信満々に話す
「そうだよ、このチームに虹乃ちゃんが来てから結構変わったんだよね」
蛇山は一つある結論を考える
「もしかしてその未練タラタラ具合は多分海堂さんがこっちに来て人気が無くなったとかじゃないんすかね?」
二人は納得したような顔をする
「確かに…それならちょっとつじつまが合うかも」
「ありがとうね蛇山くん!それならあいつをバンドバトルでぎゃふんといわせてあげれば解決だよ!」
解決したような…何も変わってないような…とにかく海月は一石一鳥にとってもあまりよくない存在であることはなんとなくわかった
「じゃ、二人も話してもらいますよ」
「あぅ…そうだったね…どうしよ…」
沖野は自身の胸に手を当てる
「どうか…どうか…蛇山くんが気づきませんように…私は配慮します…」
そう何やら念仏のようなことを言う沖野だったが
「よっし覚悟が決まった!私が言いたかったのは…」
しかし意を決した沖野とは違い千歳はスパッと話に切り込み始めた。
「蛇山くんって!!」
「蛇山くんって詩音ちゃんのこと好きなの?」
一瞬空気が凍り付いた気がした
「えっいやぁ…」
はぐらかそうとしたのも束の間
「………………えぇ………………」
その場は黒川の登場により完全に氷河期と化した。




