02 「勇者」ガルフ
「魔王討伐史録 ー56章ー 魔王ヴィリエルム」
「魔王」それはすべての生物の敵。
100~200年周期で神大陸と呼ばれる不毛の大地に現れ魔獣の軍勢を引き連れ侵略する。
多くの魔獣を引き連れているため、魔王と相対することすら難しい。
もう1つ、魔王を討伐するにあたって厄介な問題点があった。
「勇者の呪い」
それは、魔王が死ぬ直前に残す傷痕。
魔王付近にいる生物に「長く生きられない」という呪いをかける。
生半可な覚悟を持つものでは戦おうと思わないだろう。負けても死に、勝ってもすぐ死ぬ。
この呪いは戦う者達をふるいにかけるものでもあった。
それ故に、戦いに赴く者たちは強かった。
30年前に現れた魔王は歴代現れてきた個体の中でも屈指の強さだった。
戦いは熾烈を極め戦場にいた半数以上が亡くなったと言われている。
周りが倒れていき、疲弊しきり、多くの兵士があきらめかけていたその時
「魔王討伐」の一報が戦場に響き渡る。
その戦いの終止符を打ったのが冒険者ガルフだった。
ー追章
「勇者の呪い」それは今まで死の呪いと恐れられていた。
最高の癒してと名高い聖女による解呪。
残り10本もないと言われている古代の聖遺物「永久の血」。
数々の方法が試されてきたが大陸歴8000戦年の中でその呪いを解呪する方法は確立されていなかった
それを史上初、魔王の傷痕をついに打ち破るものが現れた。
彼のことを、魔王の呪いに因み。
「勇者ガルフ」
そう呼ぶようになった。
著者 アーム・ドルド
あの後、僕は両親から「勇者の呪い」とはどういうものなのかについて詳しく話を聞かされた。
正直、どう反応すればいいか分からなかった。まず、勇者になれないことに落胆した。これからだと思っていた自分の人生がもうすぐ終わってしまうことは言い表せない衝撃だった。
父から「勇者の呪い」について話を聞きに行ったときに渡されたこの本を今自室で読んでいた。
「なぜ、僕がこんな呪いに罹ったんだ…。」
己に突如降りかかった理不尽にルネスは嘆いた。
「冒険者ガルフって…?お爺ちゃんと名前が一緒だ…!」
「治らない呪いじゃない!?治るんだ!!!」
本を最後まで読んだルネスは居ても立っても居られなくなり、夜遅くにもかかわらずバックに荷物を詰めだした。
「ガルフ爺ちゃんに会いに行こう。」
爺ちゃんの家なら家族と何回も言ったことがある。
さすがに一人で行くのは初めてだが、ルネスは自信があった。
「これくらいでいっか、まあ 何とかなるでしょ。」
最低限の荷物をまとめたルネスは自室の窓を開いた。
窓枠に手をかけ勢いよく飛び降りたルネスは魔術を唱える。
「風動」
小さいころから使っていた魔術。人を飛ばすのは難しくても自分一人と少ない荷物程度なら問題ない。
「急いでいこう…2日くらいで着くはず。」
そうつぶやいたルネスは、一人祖父の住む辺境の地ロザワーへと向かった。
加筆・修正いたしました。