模擬戦
思いがけぬ人物の登場に、つい先程までちらほらと聞こえていた声も鳴り止んでいた。そもそも、騎士というのは21人しかいない。現代の英雄その人といっても差し支えないのだ。
「指導とは言ったが、生憎私は、戦い以外をあまり得意としていない。武器を持て、私が相手をする。」
その発言に、静まり返って聞いていた生徒達も驚愕のあまり声が漏れ出ていた。それもそのはず、ここの生徒達は確かにヴェルス総合学園において、特待クラスである。優秀な者達だが、騎士は格が違うだろう。
「さっ、みなさん。得意な武器を取ったら、一人ずついってみましょ!。ちゃんと手加減してくれますから。」
生徒達の中には、騎士と打ち合えるのを嬉しく思うもの、騎士とゆう存在を畏怖するもの、様々だったが武器を取り始めたようだ。
「あー、俺達も武器を取りに行こうぜ。」
「そうだね。」
「ですね。」
僕とオルキ、そしてアリスは先生が準備した、木でできた武器を手に取った。
「オルキは、槍を使うんだね、凄いな。」
「だろ、これでも槍は結構上手い自信あるぜ。」
僕は剣を取り、オルキは槍を選んだようだ。アリスの選んだ武器が気になり顔を向けると、それは剣だった。
「アリスは剣士なんだね、いっしょだ。」
「ええ、剣以外があまり得意ではなくて。」
人差し指で頬をかき、アリスはすこし恥ずかしそうにしていたのだった。
武器を取った僕達はできるだけシャルドネさんから離れたあと、三人で横にならんで座った。どうやら、順番は席順らしく僕が最後らしい。
「では、ダインくん、よろしいですか?。」
「はい!。」
ダインという名の男子生徒がトール先生に返事をした。そして、シャルドネさんの対面に立つ。
「ダイン、と言ったな。好きに打ち込んでこい。」
その瞬間、ダインはたった数歩で間合いを詰め剣を横に薙ぎ払った。だが、シャルドネはその場から動かない。
「魔力の身体強化はなかなかだな、だが、安直すぎる。」
シャルドネが告げた瞬間、ダインは転がされていた。手に持っていた剣を叩かれ転んだのだ。
「やべぇ、何したのか見えねぇ。」
「これは、凄いですね。」
オルキ、アリスはあまりの速さに驚いていた。動きを目で追えないとなると、そうなってしまうのも仕方ないだろう。
「ダイン、お前は身体強化は上手いが、実戦の動きが甘い。もう少し、他と戦い、鍛錬に励め。」
シャルドネがそう言うと次の生徒が来て、それまたなすすべもなく転がされていった。それが何回か繰り返される中、とうとうオルキの番が来たようだ。
「オルキくん、準備はよろしいですか?。」
「へい、大丈夫ですよ。」
「よし、では、向かってくるがいい。」
シャルドネがそう告げた瞬間、オルキはシャルドネに向かって突きを放ちながら、詠唱を唱えた。「ウインドル!。」ウインドルにて加速された槍は轟音を放ちながら進む。だが、その刹那。とてつもない爆音とともにオルキの槍は、天井近くまで打ち上げられた。
「はぁ、うぅ、これでもダメか。」
「気を落とすな、オルキ。お前のこの一撃は、今までで一番洗練されていた。ウインドルを使っての加速は、調整が未熟だと怪我を負うが、その点、よくできている。」
クラスメイトの中でも、あそこまでの一撃を放てた者はそうそういなかった。オルキはすこし情けないように見えるが、実力はあるのだろう。
「次は、アリスさんね!。準備はいいかしら?。」
「ええ、よろしくお願いします。」
シャルドネの前に立つアリス、だがその立ち振舞は、とても堂に入っているように思えた。シャルドネもそれを感じたのか、今まではあまり剣をしっかりと握っていなかったがちゃんと握りこんでいる。
「では、かかってこい。」
瞬間、アリスの持つ剣から光が溢れる。あれは魔法剣だろう。
「凄いね、もう魔法剣を使えるなんて。」
「だよな、しかも、光の特異属性まで持ってるんだぜ、やってられねぇよなぁ。」
アリスはシャルドネの右に回り込み鋭い切り上げを放った。それをシャルドネは剣で打ち払うが、アリスは直撃を避けるため剣を滑らせながら、シャルドネの手を狙う。そこで初めてシャルドネはその場から動いた。避けたのだ。
「特異属性に、魔法剣。そして、その剣術。相当に鍛錬を積んでいるようだな。」
「あら、お褒めにあずかり光栄ですね。」
シャルドネは避けた先から動かない。アリスは再度切りかかった。腹を狙われたその剣に対し、シャルドネは一撃目でアリスの体勢を崩し、二撃目でアリスの剣を弾き飛ばした。
「やっぱ、うちのクラスのお姫様はやべぇな。」
「そうだね、シャルドネさんが初めて避けた。」
「あら、負けてしまいました。」
「恥じることはない。アリス、お前の魔法剣は、良い精度を持ち合わせていた。だが、まだ魔法剣を習得しきれてはいないようだな。」
「ええ、体外系魔法が不得意でして。」
「そうか。」
アリスは、笑顔のままこちらに歩いてきた。
「どうでした?、グレイスさん。私、結構強いんですよ?。」
「だね、驚いたよ。魔法剣も完全ではなくとも、習得しているなんて。」
「だな、俺達も頑張らなきゃなぁ。」
話していると、トール先生から声がかかる。
「えーと、最後はグレイスくんね!。準備は大丈夫?。」
「ええ、今行きますね。」
どうやら、僕の番だ。少しだけ剣を強く握った。




