騎士
すこし眠気が体を引きずっている、ベッドで寝ていたようだ。確か荷解きを終えたあと、風呂に入った所まではよく覚えている。あがってすぐ疲れで寝てしまったのだろう。
「あっ、担任の先生が来るんだった、着替えておかないと。」
着替えながら昨日の事を思い出す。フォールから送られていた荷物には服や、当分の生活費、そして手紙があった。
手紙には、「グレイス、入学おめでとう。学園生活に伴って、伝えておかなきゃいけない事がある。学園内は、あくまで公共空間。個人個人が他者に配慮するから、成立しているんだ。まぁ、お前の事だから心配はしていないが。フォールより」とのこと。
フォールさんらしい内容にすこし頬が緩んだ。
「グレイスくーん、いますかー?」
「はい、今開けますね。」
どうやら、例の担任の先生が来たようだ。だが、扉を開けたはずが見当たらない。
「グレイスくん、下です!、下!。」そう言われ下を向くと、身長が140センチ程の、淡黄色の髪を長く靡かせた少女が見えた、多分先生なのだろう。青色の瞳をこちらに向けていた。
「これは、申し訳ないです。今日はよろしくお願いします、よければ、お名前を聞いても?」
「そうでしたね、私の名前は、トールって言います!、これから4年間、よろしくね。」
僕からでも見やすい位置まで下がってから、トール先生は丁寧に挨拶をした。
「よろしくお願いしますね、トール先生。」
そう言うと、トール先生はとても嬉しそうに、「トール先生、いい響きだわ!。」とはしゃいでいた。
「ところで、先生。これからどちらに向かうんですか?」
「うん、今からトールと、グレイスくんは、教室に向かいます!。」
「わかりました、ペン等は持っていった方がいいですかね。」
「えーと、初日だから大丈夫!、授業ってよりかは、交流って感じだわ!。」
そう告げると、トール先生は上機嫌で僕の手を引っ張りながら教室の前まで連れて行ってくれた。
「グレイスくん、教壇までつれていくから、私が転入生を紹介します!、って言ったら、自己紹介よろしくね!。」
「了解です、任せてください。」
仲良くできるといいな、とありがちな考えだがそれに越したことはない。そう思いながら、教室に2人で入った。
「皆さん、おはようございます!、今日はなんと、転入生を紹介するのよ!。」
「はい、グレイスといいます、好きなものは空を飛ぶもの、苦手なものは、深いところです。」
席に座っている生徒達、おおよそ20人ほどだろうか。興味がありそうに、「転入生だって~。」、「深いところが苦手ってあまり聞かないね。」など声が聞こえてくる。
「せっかくなので!、3問だけ、グレイスくんに質問してみましょう!、質問したい人は、手を上げてくださいね!。」トール先生は、腰に手を当て、上機嫌だ。上手くいっていて嬉しいのだろう。
すると1人の生徒が手を上げた。こげ茶色でくせ毛髪の男子生徒だ。背は160センチ後半ぐらいだろう。「はい!、オルキ君!。」
「この時期に転入生ってことは、やっぱり、推薦生徒なんですか?。」
「そうですよ!、グレイスくんは、なんと、フォール元騎士団長の推薦で来ているんです!。」
それを聞いた生徒達は驚いたように、一瞬静まり返った。だが、有名人にあったかのように、「スゲーな、めっちゃ強いんじゃないの?!。」「背高いし、羨ましいなぁ。」「まぁ、俺の方が高いかな。190センチぐらいあるし。」流れるようにオルキは嘘をついていた。
みんな受け入れてくれたようで、多くの生徒が手を上げ始めた。それを見たトール先生はウンウンと頷きながら、「じゃあ、アリスさん!。」
手を上げていた金髪の小柄な女子生徒が立ち上がった。
「グレイスくんは、やっぱり騎士になりに来たんですか?。」
「はい、フォールさんに憧れているので、騎士になりたいですね。」
「やっぱり、そうなんですね!、これからよろしくね、グレイスくん。」
質問が終わると透き通るような翠眼をこちらに向け、会釈をしてから彼女は上品に座った。
その直後、大きな鐘の音が響いた。するとトール先生が、あっと驚いた顔をした。
「もう1時間目終わっちゃった!、ごめんね、質問は此処まで!。2時間目は、第一訓練場で授業を行うから、みんな、グレイスくんに教えてあげてね!。」
そう言い残し、トール先生は焦ったように走って何処かへ行ってしまった。2時間目の為に準備をするのだろう。何処に行けばいいのか分からず、先程質問をしてくれたオルキに聞こうとしたところ、先にオルキが話しかけてきた。
「よー、グレイス、ついさっきも聞いたかもだけど、オルキっていうんだ。よろしくな。」
「うん、よろしく、オルキ。」
「場所分かんないだろうし、取り敢えず一緒に行こうぜ、第一訓練場まで。」
ありがたいお誘いだ、そう思い一緒に廊下にでた。
「グレイスは何処の出身なんだ?、やっぱりカディス?。」
「そうだよ、カディスから来たんだ。そうゆうオルキは何処なの?」
「ガルズ村だな、ヴァールグから、すこし離れたところにある田舎だよ。」
2人で廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。「グレイスくん、よかったら私も話に混ざっていいですか?」つい先程のクラスメイト、アリスだった。
「いいよ、話す人は多いほうがいいですしね。」
「あ、アリスさんじゃん、いやぁ、ぜひはなそうよ。」
オルキは、忙しなく興奮しているようだった。アリスに好意を持っているのだろう。対照的に、アリスはあまり気にしているようではなかった。
「そろそろ、第一訓練場ですね。」
「だよな、いやぁ、いい天気だし、楽しみだなぁ。」
「そうだね、そういえば、2時間目はどんな事をするの?、アリスさん、オルキ。」
「ああ、それ「模擬戦でしょうね、第一訓練場では、学長が作った魔道具、聖流地帯がありますから。」
オルキに被せるようにアリスが言い切った。オルキは嫌われているのだろうか、すこしかわいそうだ。
「聖流地帯ってゆうのは、どうゆう魔道具なの?、訓練場にあるってことは、治癒系の魔道具なのかな。」
「ええ、治癒系の魔道具である事は間違いありません。ですが、効果が段違いです。基本的な治癒系の魔道具と違い、聖流地帯は、訓練場の地に触れている者、全てを癒します。」
つまり、訓練場では多少の怪我はすぐ治してもらえるわけだ。とてもいい環境が整っていると言える。
「お、そろそろつくぜ、あまり強い奴に当たらないといいけどなぁ。」
「まぁ、楽に越したことはないよね。」
「そうですね。」
訓練場の扉を開け中へと入った、広い部屋だ。トール先生はもうすでに来ていたようで、訓練で使うのであろう木剣などを奥の方で用意していた。
そして、それを手伝っている男性、服装からしてこの人も先生なのだろう。男性で背は180センチ程、白髪の混じった銀髪を後ろに一つにまとめている。とても姿勢が良く、青い瞳、そして体のあちこちに見える古傷は豪然さを感じさせるのだった。
準備が終わったようで、こちらにトテトテ、と鳴らしながらトール先生が歩いて、手伝っていた男性もそれに続いた。
「みなさーん、集まってください!。」
トール先生が周りを見渡し、生徒が集まりきったのを確認した。そして、すこし緊張しながら声を上げた。
「みなさん!、今日は模擬戦の訓練ですが、なんと!、現役の騎士団員さんに来てもらいました!。」
見た目から強そうだとは思ったが、やはり相応の人物だったらしい。クラスメイトのみんなも、ざわめきあっていた。
「騎士団員の、シャルドネさんです!。」
「外部講師として招かれた、シャルドネだ。この度は、剣術、また魔法の使い方等について指導させてもらう。短い間だが、よろしく頼む。」




