後悔
今から15年程前の話。モンターニュは騎士団に所属していた。その騎士団の中で特に仲が良かったのは、フォール騎士団長。歳が近いのもあり、よく食事などに行っていた。
騎士団員になったものにはある事実が告げられる。シャガルガシャルはお伽噺などではない、実在するものであり、今もなお大海に封印されているのだと。それに、その封印はいつか解けてしまうことも。
そして、考えられるなかで一番の最悪が引き起こされた。当時活動していた悪しき龍を信仰するカルト宗教が、その封印に対してどのような手段を用いたのかは分からないが、封印を解いたのだ。
大海の近くで任務にあたっていたフォール、モンターニュ、そして、同じ騎士団員だったグレイスの両親二人は討伐に向かった。
だか、かの龍は強大であった。単純な話、強すぎたのだ。当時の戦闘でシャガルガシャルに傷をつけられたのは、フォール、モンターニュの二人だけ。グレイスの両親二人は攻撃の威力が足りず、陽動に回った。
だがそれが裏目にでてしまい、グレイスの両親二人は殺され、フォール、モンターニュの二人で、精々2〜30年程しか持たない封印しかかけられなかった。
モンターニュは悔いている。あの頃、もっと自分が強ければ。もっと、魔法を知っていれば。だから、学んだ。聞いた、見た、知った、覚えた。
モンターニュは土属性と水属性を得意としているが、15年前は体外系魔法は得意としていなかった。だが、シャガルガシャルが封印から這い出る時、必ず犠牲を出さず、後悔せず、確実に息の根を止めれるように体外系のオリジナル魔法を作った。
モンターニュはもう二度と、目の前で人を死なせない。フォールが預かった子供、グレイスに空属性があると知った時、きっとこの子がシャガルガシャルと相対するのだろう、そう思った。
だが、そんな事は関係ない。あの日、自分が不甲斐ないばかりに犠牲になった仲間の形見に傷を負わせるわけにはいかない。自分がシャガルガシャルを討ち滅ぼす、そう、自分自身への誓いだった。
そして15年経った今、推薦生徒の三人が我が校を訪れた。フォールの息子グレイス、そしてフォルス、エーテル。皆優秀な子たちであり、輝かしい未来があるだろう。だからこそ傷をつけさせるわけにはいかない。彼らを卒業まで導き、シャガルガシャルはこの手で殺す。
「さて、そろそろあの子達は、寮に着いた頃ですかね。」
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「よし、着いたね。」
「寮も校舎の中にあるんですね。」
「凄いわね、遅刻の心配がなさそう。」
「ゆっくり寝れる。」
サラン先生に案内され、寮へと向かっていた僕達、どうやら、ここが寮のようだ。何部屋もあるようで、なかなか壮観である。
「今から、入る寮の部屋番号を伝えるね、あと、部屋に入って準備を終えたら、今日はもう休んで大丈夫。明日、寮の部屋まで担任の先生が迎えに行くから。」
「えーっと、グレイスくんが21番、フォルスさんが30番、エーテルさんも30番だね。」
「やったぁ、フォルス、よろしくね。」
「うん、よろしく。」
「先生、僕の寮部屋には他に誰がいるんですか?。」
そう質問をすると、先生は少し気まずそうに、答えた。
「えーとね、今まで寮部屋には、推薦生は推薦生でまとめていたんだけど、今回は、男の子が君だけだから。」
「つまり?」
サラン先生は申し訳無さそうに、「グレイスくんは、一人部屋だね。」と言った。
期待があっただけに、まぁまぁ悲しい。だが、エーテル、フォルスとも仲良くなれたし、そう思えばプラスだろう。
「気にしないでください、クラスに入ったら友達も作れるでしょうし。」
「そう言ってくれると助かるよ。寮の部屋の中には、必要な物が備えてあるとは思うが、個人で必要な物とかは、学校近くの店で買い揃えるといい。困ったときは、寮の管理人さんか、職員室まできてね。」
「そうね、先に私達は寮の部屋に行ってるわ、またね、グレイス、サラン先生!。」
エーテルは、フォルスの手を引っ張りながら、先に寮部屋に入っていったようだ。そういえば、帰る際はどうすればいいのだろうか。フォールは帰りに飯でも食べてこい、そういってお小遣いをくれたが、すぐに帰れるような所でもないだろう。
「サラン先生、聞いておきたいんですが、帰りの際はどうすればいいんですか?」
「そうだね、月に一度、申請をした生徒達を地上まで送っているよ、なにかあったのかい?」
「いえ、父親が、帰りの際に飯でも食べてこい、そういってお小遣いをくれたので、すぐ帰れるものかと思っていました。」
それを聞いたサラン先生は納得したようだ。
「フォールさんはそういう所があるよね。苦労しているだろ、部屋にフォールさんから届いたものを置いているから、確認するといい。多分だけれど、金銭とか服とか、必要な物がある筈だ。」
「よかった、寮部屋に向かってみますね。」
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寮部屋に着いたグレイスは荷物解きも終わり、お風呂に入っていた。
「これ、いつでも炎の魔石で温めれるようになってるのか、高そうだなぁ。」
水を手で波立たせながら湯船に浸かっていると、なんとなく疲れが取れた気がした。




