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空の愛し子  作者: uta
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ヴェルス総合学園

 ヴァールグをでて歩いて10分程、目的地であるガルド海の砂浜に着いた。そこで目にしたのは、いるだけで伝わる威圧感。羽をたたみ佇んでいたのは飛竜だった。全高は10メートルにも及ぶだろう。


「多分、初めて見るかな?、あれが今から乗る飛竜だよ。」


「凄いですね、やはり、飛竜はカッコいいです。」


「なんだ、グレイス、あなたも少しは子供らしいところあるじゃない。」


「でも、確かにカッコいい。」


 そんな話をしていると、飛竜の近くから人が近寄ってきた。


「やぁ、君達がヴェルス総合学園の推薦生徒であってるかい?」


「ええ、そうよ。」


「はい。」


「うん。」


 背は160センチ程であり、童顔である。耳を見るあたりエルフなのだろう。薄緑色の髪を靡かせた美男子だ。服装からして学園の関係者なのだろうか。


「俺は、ヴェルス総合学園の錬金術と生物学の教師を担当している、サラン·シェル·アトム。気軽にサラン先生と呼んでくれ。」


「先生でしたか、よろしくお願いします、サラン先生。」


「よろしく!サラン先生。」


「うん、サラン先生、よろしく。」


 サラン先生はうんうん、と頷きながら手綱を持ち、飛竜の鞍を手で優しく叩いた。


「元気があってよろしい、さっ、鞍に跨ったら、しっかり紐に捕まっていてね。」


「はーい!。」


「うん。」


「わかりました。」


 サラン先生が、こちらを見てしっかり鞍に乗ったのを確認すると、飛竜の首近くに乗った。飛竜にサラン先生が視線を送ると飛竜は羽を羽ばたき始め、大きな羽で風を切り始めた。


 少しずつ、空へと昇っていく途中。大声をあげながらエーテル、グレイス、フェルスは手を振り、ガルードへ感謝を伝えるのだった。


 首都カディスやヴァールグの街並みが小さく見え始めた頃、飛竜は空島に近づいてきていた。


「そういえば、サラン先生。私達、風の影響を全く受けないけど、これってどうなっているんですか?」


「これは、中級の風魔法、ウインドルの応用だね」


 フェルスは、不思議そうな顔をした。


「サラン先生、ウインドルって、確か攻撃魔法だよね。」


「ああ、そうだよ、そのウインドルを、向かい風を打ち消す様に調整して使っているんだ。」


「凄い、ただでさえ、体外系は難しいのに。」


 サラン先生は、嬉しそうな顔をした。


「やっぱり、いつの時代も生徒に褒められるのは、嬉しいもんだね。フェルス君も、その年にしてよく知ってるね。」


「魔法、好きだから。」


 魔法には、属性の他に、発動方法がある。体外系と内包系だ。内包系は身体に触れているもの、また身体の内部に作用する魔法の事を言う。魔法剣なども触れ続けているので、内包系だ。体外系は身体から離れた位置に魔法を放つ、また維持する魔法の事をいう。


 基本的に、身体から位置が離れれば離れる程、魔力は形を崩し霧散しやすくなる。それを放つだけでなく、維持し続ける事ができる。サラン先生は相当な魔法の使い手なのだろう。


「っと、そろそろ着陸の準備だ、体をできるだけ伏せ、紐を離さないように。ちょっとだけ衝撃がくるからね。」


「うん。」


「ちょっと怖いわ、落ちないかしら。」


「そうですね、ちゃんと伏せておきましょう。」


 伏せているとなかなかの揺れが起きたが、紐を離しそうに成る程ではなくちゃんと着陸できたようだ。エーテルのよかった、と言う声が少し聞こえてくる。


「よし、無事に着いたね。顔をあげてごらん。ここが、グラディウスが遺した空島、そしてあれがヴェルス総合学園だ。」


 この土地は、踏みしめているだけで感じ入るものがある。これはグラディウスの物なのだ。お伽噺では、グラディウスがこの空島を有り余る魔力を使って作ったとされていた。それを表すかのように、この島からは莫大な魔力を感じる。これでは魔物も近寄ることができないだろう。


 そして、目の前には見上げるだけでは目に入れきれない程の大きさを持つ校舎。その校舎の周りには、少なくない店等が並んでいた。まるで、この空島一つが一つの国のようだ。あまりの壮大さに目を奪われていると。


「んじゃあ、取り敢えず学長の部屋に向かおう。学園の説明があるだろうしね。」


「そうね、学園生活、楽しみだわ!。」


「うん、図書館とかあるのかな。」


________________________


 校門を抜け、学園の職員用の入り口から入り、そのまま二階まで向かった。


「色々と凄いわね。廊下なのに様々な講義の声が聞こえてくるわ。」


「あれ、もしかしてリザードの剥製?、初めてみた。」


「ああ、あれは、俺が授業用に用意した剥製だね。」


「生物学、面白そうですね。」


「だろう?」


 ちょっとした会話をしながら廊下を歩いていると、整った装飾が施された大扉の前に着いた。


「サラン先生、ここが学長室ですか?」


「ああ、ここに学長、モンターニュ·ド·ラヴィ先生がいる。優しい先生だが、偉大な人だ。失礼が無いように。」


「そうね、どんな人なのかしら。」


「うん。」


 サラン先生が扉にノックをし、名乗りをあげた。


「学長、サランです、推薦生徒の三人を連れてきました。」


「ええ、開けてください。」


 扉を開けると、そこには高級さを感じさせるテーブル、ソファー。そして、執務席に座っていたのは、グレーの髪色をした中老程の男性だった。黒縁の眼鏡をかけており、眼鏡から見える瞳はとてつもない眼光をちらつかせている。


「ええ、よく来てくれました。初めて飛竜に乗ったでしょう?疲れているでしょう。さ、皆さん、ソファーに座ってください。」


「あ、ありがとうございます。」


「では、失礼しますね、学長。」


「うん、ありがとうございます。」


「ご丁寧にどうも、失礼します。」


 ソファーに横並びに座り、対面に学長が座った。エーテルは学長の独特な目つきから生み出される威圧感に少し怯えているようだ。対照的に、フォルスは冷静そうに見える。いや、よく見ると足が震えていた。


「ええ、エーテルさん、フォルスさん、そしてグレイスくん。この度は我が校に来てくれて、とても嬉しく思います。確か、三人とも寮を希望していましたね?」


「そ、そうです。」


「うん。」


「ですね。」


「では、サラン先生、寮への案内はお願いしてもよろしいですか?」


「はい、学長、お任せください。」


 学長は、にこやかにしており嬉しそうに頷いている。


「優秀な生徒が来てくれたこと、とても嬉しく思います。グレイスくん、フォールさんにも、後でよろしくお伝えください。」


「はい、お父さんに伝えておきますね。」


「では、学長、失礼しました。」


「さようなら、学長さん。」


「ばいばい。」


「ありがとうございました、では。」


 扉が閉まり、生徒達を見送ったモンターニュ。その目は、何処か遠い所を写していた。

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