授業
寮のシャワーで汗を流し終わり、一階にある教室へ向かった。
扉を開け、教室に入る。すると授業中だったようで、トール先生が教壇に立っていた。前の方から入ったのでクラスメイトからの視線が集まる。
「あら、グレイスくん!試験が終わったのね。」
「はい、遅れちゃってごめんなさい。」
トール先生は手に持っていたチョークを置き、席を教えてくれた。
「グレイスくんは21番だから、アリスさんの隣の席なのよ。」
教室を見渡すと、最後列の席にアリスは座っている。笑顔でこちらに視線を送っていた。オルキも近い席のようで、眠そうに机に伏している。アリスの隣の席に座り、僕はアリスとオルキに小さな声で話しかけた。
「アリス、オルキ。今はなんの授業をしてるの?」
すると二人は、基礎魔法学の授業だと教えてくれた。僕は小声でありがとうと伝え、姿勢を正してトール先生の方を向いた。
「じゃあ、グレイスくんも戻ってきたわけだし、ちょっとだけおさらいするわね!」
「魔法は、体内にある魔力を使って行使するとされているわ。魔法を放つ際に、魔力を自らの属性に変化させているの。この変化させるのが上手い人ほど、魔力消費量が少ないって言われているのよ!」
おさらいを終えると、トール先生は教壇の下にある木箱を重そうにしながら持ち上げる。
「んしょ、っと。じゃあ、魔力を変化させる練習をしましょ!今から皆に魔道具を配るから、落とさないようにね。」
クラスメイト達はトール先生の前に並び、一人一つ魔道具を受け取っていった。僕とアリス、オルキも受け取り、落とさないように手に持つ。青いガラス玉のような見た目をしていて、触るとひんやりしている。すべすべとしていて触り心地がいい。
「そういや、オルキとアリスはやったことあるの?コレに魔力を通せばいいのかな。」
「ああ、そうそう。コレに魔力を込める、んで、それがうまくできればできるほど無色に近づくんだよ。」
席に戻り魔道具を触っていると、クラスメイト全員が魔道具を受け取り終わったようだ。トール先生が教壇に戻った。
「では、魔道具に魔力を込めたら、トールに見せてくださいね。うまくできていたら、プラス評価です!」
オルキの気遣いで、先に魔道具に魔力を込めるところを見せてくれるらしい。やっぱり気配りが上手いな。
「まぁ、俺にかかれば見えなくなるぐらいは余裕かな。」
そういってオルキが魔道具に魔力を込めると、青色がすこしだけ薄くなった気がした。
「オルキ、全然色変わってないじゃん。」
「ええ、やっぱり下手ですね、オルキくん。」
「えっ」
オルキはあまりのショックに机に伏しているが、どうせ授業中も机に伏していたのだから変わらない。オルキのうめき声を聞きながら、魔道具に手を添えた。
「んんと、こんな感じ……?」
「ええ、凄いですね!初めてでこんなに色が薄まるなんて。」
すこし青かがってはいるが、限りなく透明になった魔道具がそこにはあった。アリスは物珍しそうに、僕が魔力を込めた魔道具を眺めている。
どうやらアリスも終わらせており、アリスの手には、空色ほどに薄まった魔道具があった。
「すごいじゃん、アリス。僕とアリスは結構上手くできたんじゃない?ねぇ、オルキ。」
「いやぁ、オレの魔道具は薄まりすぎて見えてないんだよね、実は。」
「お二人共、いつの間にか更に仲良くなっていますね。」
同年代で、同性だからだろうか。気軽に話が振れるからとついつい話をしてしまう。どうやらオルキもそう思ってくれているようで、僕の肩に手を回しながら「まぁ、オレの次にカッコいいからな、グレイスは。」と調子の良いことを言っていた。
三人共魔道具を変化させ終わったので、トール先生に魔道具を見せに行った。
「トール先生、どうですかね。オルキはともかく、僕とアリスは結構良いんじゃないですか?」
「ごめん、トールちゃん。オレが本気を出すのは今じゃないんだ。」
トール先生は少し呆れながらオルキを見つめる。
「もうっ、オルキくん。次はちゃんと本気を出してくださいね?」
そう言うと、僕とアリスの評価に移った。
「でもでも、グレイスくんとアリスさんはよくできてます!プラス評価、あげちゃいますね。」
「嬉しい、上手くできてよかったです!」
「だね。先生、早く終わっちゃったみたいだし、席で待っていればいいですか?」
先生は手帳にペンを走らせている。評価のメモを取っているのだろう。
「よし、と。ええ、三人とも戻ってていいわよ!」
席に戻ると、周りの生徒はまだ終わっていない人が多いようだ。することもないのでアリス、オルキと話をしながら過ごしていると、あっという間に十分程経っていた。殆どの生徒が返却できたようで、トール先生が魔道具の数をチェックしている。
「うん、大丈夫そうね。じゃあみんな、1時間目を終わるわ!2時間目は、引き続きこの教室で行うわね。」
数を確認し終えた魔道具を、木箱に丁寧に入れている。入れ終わった木箱を少し重そうに持ち上げながら、トール先生は教室からでていった。




