モンターニュ·ド·ラヴィ
アリスが作ってくれたオムレツを食べ終わり、グレイスは洗い物をしていた。
「ありがとうね、グレイスくん。」
「いいよ、タダで食べるなんて、罰当たりだしね。」
洗い物を終え、手ぬぐいを使わせてもらう。手ぬぐいには可愛らしい黒猫が編み込まれていた。
「よし、洗い物は終わったよ。」
「うん。そういえば、暗くなってきたけど、グレイスくんはこのまま自分の部屋に戻るの?」
「んー、そうだね。特に用事はないし、このまま戻るかな。」
アリスは、氷結箱を開きなにかを取り出した。
「はい、グレイスくん。せっかくなので、小腹が空いたときにでも食べてくださいね。」
「クッキー?ありがとね。」
どうやら、手作りクッキーが入った小袋のようだ。ありがたくもらっておこう。
「じゃあ、また明日、アリス。」
「うん!また明日ね、グレイスくん。」
ドアノブに手をかけアリスに向かって手を振ると、ベッドに腰掛けたアリスもこちらに小さく手を振っていた。ベッドに置かれた人形、金色の髪、緑色の瞳も相まって、まるでお姫様のようだ。
自室に戻った後は湯船にゆったりと浸かった。その後、風呂から上がりそのままベッドに入る。模擬戦や決闘祭についてなどなかなかに濃い1日だった為、ベッドの上で目を瞑ると体の疲れが際立つ。だが、そのおかげでよく眠れたのだった。
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朝になったようだ。カーテン越しに光が漏れてきている。今日ははやく起きれたので早いうちに服を着替え、身だしなみを整えた。食べれるものを買っていなかったので、昨日貰ったクッキーを朝食代わりにつまみながらサラン先生を待つ。
三十分程経ち、クッキーの数も心許なくなってきた頃。ノックの音が聞こえ、サラン先生の声が聞こえた。
「グレイスくん、サランだ。」
「はい、今開けますね。」
ドアを開けると、薄緑色の髪を揺らしながらサラン先生が顔をチラリと覗かせる。
「グレイスくん、おはよう。昨日は疲れただろうが、よく眠れたかい?」
「ええ、準備もばっちりですよ。」
それを聞いたサラン先生は、「いいね、元気でなによりだ。」と嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、第二訓練場に向かおう。そこに学長が待っている。」
サラン先生案内の下、第二訓練場へ足を進める。寮をでて生物学の話を聞きながら校舎を歩いていると、サラン先生が学長について話し始めた。
「モンターニュ学長が元々騎士だったのは知ってるね、じゃあ、騎士に任命された者には、二つ名が国から与えられのは知っているかい?」
「ええ、お父さんがよく話してくれていたので、二つ名を賜る、とゆうのはよく聞きました。」
騎士が与えられる二つ名は、基本的にその騎士の戦闘方法などを考慮して与えられる。たとえば、先日模擬戦の授業を行ったシャルドネ、その二つ名は燐火。魔法剣に纏う炎が通常と違い青色の炎であることから名付けられている。
「じゃあ、ここで問題。モンターニュ学長が与えられた二つ名、知っているかい?聞いたことはあるかもね。」
「たしか、水断ち、でしたっけ。」
「そうだね、だけれど、もう一つある。」
それはなぜか。サラン先生は僕の目を見て、話を続けた。
基本的に騎士に与えられる二つ名は一つだけ。二つ名が変わったことなど今まで一度も無かった。だが、例外が生まれた。モンターニュ·ド·ラヴィだ。ある事を機に、モンターニュは己を鍛えなおした。苦手だった体外系魔法を克服した。その結果、ある魔法を作るに至る。その魔法があまりにも強力であり、モンターニュの戦闘方法自体を大きく変えたことから歴史上初めて、二つ名が国によって改名された瞬間である。
「その二つ名は、泥流。多分だけれど、君は学長に様々なことを学び、成長する。その為に、知っていて欲しい。」
サラン先生は、何処か遠い所を眺めながら言った。
「モンターニュさんは、強い。現騎士団長ですら、学長には及ばないだろう。フォールさんなら、また話は違うのかもしれないけど。」
「そうなんですね…、物凄く緊張してきました。」
サラン先生は申し訳無さそうに頭を掻きながら、緊張させてしまったことを謝罪した。
「ごめんね、そんなつもりじゃなかったんだけど。歳を取ると、話が長くなっちゃうね。」
「いえ、気にしないでください。モンターニュ学長の事を知れて、ちょっと嬉しいです。」
そして、第二訓練場に到着した。




