初めての友達
「結局、試験の内容はわからなかったな。」
廊下を歩きながら、学長が担当するという試験について考える。やはり、サラン先生には試験内容が伝えられていないのだろう。不安はあるが興奮が勝る。
「ここで試験に受かれば、また一歩、夢に近づける。」
そう思うと不思議と悪い方向には想像が働かず、受かった後を想像してしまうのだ。もし決闘部に入部できて決闘祭にでれるようになったなら、まずはフォールさんに伝えたい。きっと自分の事のように喜んでくれるのだろう。
「たしか、ここを左に曲がるのか。」
寮につき、自分の部屋の番号へ向かう。だが、番号を見ると、何か忘れているような気がしてきたのだ。今日の事を思い出しながら頭を捻るとすぐに答えはでた。
「そうだ、アリスに呼ばれていたんだった。」
確か、アリスが住んでいる寮部屋は32番と言っていた。暇な時に来て欲しい、そう言っていたし早いほうがいいだろう。32番の寮部屋前まで向かい、ドアをノックした。
「グレイスだ、アリスはいる?」
声を掛けると、ドタバタと音がなった。そのすぐ部屋から、「グレイスくん、少し待ってくださいね!。」と聞こえる、慌てているようだ。数分後ドアが開き、アリスがドアから顔を覗かせていた。
「ごめんなさい、グレイスくん。待たせましたね。」
「気にしなくていいよ、精々数分だしね。」
「それならよかったです、さ、入ってください。」
アリスに手招きされ、部屋に入る。玄関周辺は綺麗に整えられていて、花瓶に添えられた花が少しいい香りを感じさせる。
「おじゃまします。」
「はい、おじゃましてください。」
アリスは嬉しそうにしている。部屋に入って思ったが、アリスも一人部屋なのだろうか。ベットが一つしかないようだ。部屋には、テーブルとイス、本棚。そして、至る所に可愛らしい人形が飾られていた。テーブルにある裁縫道具などをみるに、いくつかの人形は手作りのようだ。アリスに促されイスに座った。
「アリス、人形が作れるんだ。いい趣味だね。」
「ほ、本当ですか?、嬉しいです!。」
アリスはいじらしく、服の裾を掴みながら緊張の表情を浮かべた。
「そ、その。グレイスくん。よかったらですね……。」
「どうしたの?」
「えっと、友達になってくれませんか?!。」
突然大きい声をあげたアリス。だが、聞いてみれば、なんだ、そんなことか。いや、本人にとっては緊張していたのだろう。
「いいよ、てゆうか、もうアリスやオルキとは、仲良くなれたと思ってたけど。思い違いだった?」
「いえ!、そんなことはないです……。ちょっと意地悪ですね、グレイスくん。」
弄りすぎただろうか、だが先程までは浮かべていた緊張の表情も、今となっては笑顔に転じていた。
「ええ、伝えれて良かったです。いままで、何度も話しかけようとはしていたのですが……。」
「あれ、1時間目辺りの話?」
「いえ、実はですね。」
アリスは、懐かしそうに話を始めた。首都カディスで生まれた子どもだったアリス、まだちいさな頃、両親、そして祖母と4人で暮らしていたそうだ。ある日、祖母の買い物についていったアリスは、カディスの兵士訓練場、そこの横を通ったらしい。そこで見かけたのは父、フォールと鍛錬を積む僕だったようだ。それから、朝の少しした時間に早起きして毎日見に来ていたらしい。だが、恥ずかしかったらしく声はかけられなかったとのこと。
「そうだったんだ、でも、見ていて様になっていたなら嬉しいな。」
「ええ!、本当に、格好良かったですよ。せっかく仲良くなったんですし、ご飯を一緒に食べませんか?」
「おお、初めての友達と食事だ。楽しみだね。」
そう、今まで同い年の友達は僕にはいなかった。本来なら、ちょっとした学び舎に通ったり、近所の子供と遊んだりで友達もできるだろう。ただ、僕の持つ属性は所持するだけで相応の重みがある。フォールが僕の身を案じ、一人では外に出さなかったのだ。
「私が、最初の友達ですか?、本当に?。」
「うん?、そうだね。今まではあまり外に遊びに行ってなかったから。」
それを聞くと、アリスは頬を赤らめながら、「最初の友達……。」と、ブツブツと繰り返していた。
「アリス、ご飯はどうする?、確か学園周辺にお店があるんだよね。」
「はっ、ええと、せっかくです!、初めての友達として、料理を作らせていただきます!。」
アリスはいたって真面目な表情で、そう言った。席から勢い良く立ち上がり、「グレイスさんは、座って待っていてください!。」そう言うと、氷結箱を開け、中から鶏の卵や、レタス、ミルクなどを取り出した。
フライパンをコンロに置き、魔石に魔力を込め、少し熱が伝わってから油をフライパンに引いた。そしたらボウルに卵を割り入れ少しのミルクと混ぜる。フライパンにとき終わった卵を注ぎ、広げ、火が通ったらうまい具合にたたみ、手際よくオムレツを作っていた。皿にちぎったレタスと一緒にオムレツを盛り合わせ、完成のようだ。二つの皿と、トマトソースを乗せたトレイを持ってきた。
「持たせてしまいましたね、どうでしょう、うまくできたほうじゃないですか?。」
「だね、手際もいいし、美味しそうだよ。」
「お好きな量で、かけてから食べてくださいね。」
「ありがと、よしと、アリスもかけなよ。」
対面の席にアリスが座り、トマトソースを渡してくれた。自分の分のオムレツにはかけ終わったので、トマトソースを返す。アリスもかけ終わったようだ。
「じゃあ、いただくね。」
「グレイスくん、召し上がれ。」
オムレツをスプーンに取り分けて口へ運ぶ。ミルクが入っているからか、少しまろやかな味わいだった。トマトソースをかけたことによって少し甘さも感じる。
「美味しい、僕は料理できないから、尊敬するよ。」
「グレイスくんは、褒め上手だね、うれしいです!。」
初めての友達と食べたオムレツはなぜか、一人で食べるご飯よりも美味しく、それでいて心が強くなれる気がした。




