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【浮気】

作者: 南かずしげ



 はじめまして、ボクの名前は四豊院奏。

 ―――ヨロシクね。

 ちなみにボクの隣にいる大男が、()()七照院燕彦だよ。 結構デカイよね? ボクもそうだけど、()()()も意外に繊細なんだよねぇ。 ()()()()身体がデカイけど……。

 ちなみにボクたち二人は霊感が強いし、心霊現象もよく体験するよ。 何だったら幽霊も()たことあるしね。



 今回もまた、ある心霊現象の噂を聞きつけて調査に向かった。



 その噂を聞きつけて北海道・網走市に来ていた。

 北海道の北側にある地方・某所である。 ()()にかなり古い踏切がある。 その踏切は生活道路の一部であり、昼間はよく人々の往来がある。 そんな踏切を通らないと、学校に行けない者。 通勤できない者。 自宅に帰れない者。 様々な用途で使用している。

 勿論、夜間でも人々の往来はある。 ただし、深夜1時を越えてからは地元の人も近隣の住民も、その踏切は使用しない。 何故なら、その踏切には恐ろしい噂があるからだ。



 深夜1時を越えて、しばらくすると踏切の脇に、白いワンピースを着た女性が立っている。 その女性は白い帽子を被っていて、うつ向いているので、顔はよく解らない。 ただし、その女性は普通ではない。 何故なら、その女性には左腕がなく、両足首が透けて見えるからだ。 この不思議な女性は、()()()()()()にしか見えない。 霊感の強い人間と、()()()()()()()である。 ただ、その女性自体は特に何もしてこない。 確かに真夜中に、こんな女性が踏切の脇に立っていたら、普通なら驚愕するだろう。 だからといって、この女性が通行人に取り憑くとか呪い殺すとかはしてこない。 ただ、この女性が()えたことで、次なる恐怖が発動する。



 さて、ここからが本題ね。

 深夜1時を越えて、その女性を()続けていると、突然カンカンカンという警報機の音と共に遮断機が降りる。 勿論、こんな時間に電車などやって来るはずもないけど、何かが来る奇妙な気配がある。 いつまでも(とど)まっていないで、()()()()()()()立ち去ることができれば、特に何も起こらない。 けど…電車の代わりに黒く長細い物体が通過する時、その時に踏切にいた者を喰い殺す。 その黒く長細い物体とは、全身が黒い体毛で覆われていて、先端の四角形が黒い顔となっており、そこから大きな口を()けて、()()()()()()()()()を喰い殺す。 その者を喰い殺すと居なくなる。 カンカンカンという警報機の音も()んで遮断機も元の上がった状態になり、あの女性も消えている。 ただ、踏切にいた人間全てを喰い殺す訳ではない。 これもまた、神隠しの一種であろうか。







 その…()()()()()()()とは―――







 ―――浮気をした者である。







 ()()()男Sが実際に体験した話だよ。


 その男Sは既婚者で妻子持ちにもかかわらず、別の女性Dと密会していた。 仕事が終わり、自宅に帰る前に、女性Dと出会い、一時(ヒトトキ)を過ごす。 妻には夜遅くまで残業している(てい)でやり過ごす。


 その後で、不倫相手の女性Dと別れて、自宅に帰る。 その途中にある古い踏切がポツンとある所へ到着。 普段なら通らない所だけど、近道になるため、今夜は通る。 勿論、こんな時間では電車は通過しないので、警報機も遮断機も作動してないはず。 普通ならば、ただ通り過ぎるだけ。


 カンカンカンカンカン―――


「なんだとっ!?」


 なんと終電が終わってるはずの踏切の警報機が突如として鳴り始めた。


「ふふふ」

「??」


 すると踏切の脇から女の笑い声が聞こえて、笑い声がした方を見ると―――


 カンカンカンカンカン―――


「うわあああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!?」


 ()()に立っていたのが、左腕のない白い帽子を被り、白いワンピースを着た女だった。 彼女はうつ向いていて、顔はよく解らない。 だが…彼女が普通でないのは、すぐにわかった。 何故なら、彼女の両足首が透けて見えたからだ。


 ドサッ!


 あまりの驚愕ぶりに腰を抜かし、尻餅をつく。 この男は生まれてこの方、幽霊など見たことないし、心霊現象など信じていなかった。 それが目の前に現れたのだから、そりゃぁ腰も抜かす。


「あなた………浮気してるわね………匂いでわかる………」

「っ!!?」

「ふふふ、浮気・不倫は悪よ………死んでしまいなさい………」

「えっ!!?」


 その女がうつ向いたまま話してきた。 それがより一層恐怖を掻き立てる。 すると警報機の音に混じって、電車がやって来る音も聞こえた。 だけど終電も終わり、もう電車など通らないはずのこの踏切で、電車がやって来る音がしたということは、もはや()()以外にない。


 カンカンカンカンカン―――


 ゴゴゴゴゴォォォーーーーゴゴゴゴゴォォォーーーーゴゴゴゴゴォォォーーーーッ!! ピタッ!!


「えっ!!?」


 ()()はなんと踏切で停止した。 電車の代わりにやって来た()()とは、電車の形をした黒く長細い物体である。 全身が黒い体毛で覆われていて、先端の四角形が黒い顔となっており、()()が腰を抜かす男Sの方を向く。 目や鼻や耳はないが、あーーんと大きな口を()けて、男Sを食べようとする。


「うわああああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!?」


 ササッ、ガシッ、タッ!


 ()()に七照院燕彦が颯爽と現れ、男Sを見事に救出。 さらに "幽霊界の歌姫" と()われたこの四豊院奏(ボク)まで踏切に現れたことで、黒く長細い化物は、男Sを食べることを諦めて、そのまま踏切を通過した。 また踏切の脇にいた女も、いつの間にか消えていた。 気がつくと警報機や遮断機までが、まるで最初から動いていなかったみたいに、じっと静かなままだった。


「……お……俺は……?」


 燕彦にお姫様抱っこされた男Sが、なんとか正気を取り戻して話しかける。 なのでボクが()()について話す。


()()は【浮気】という妖怪よ」

「……【浮気】……?」

「そう、この踏切を夜遅くに通ろうとした浮気の者を喰い殺す妖怪。 あの黒くて長細い化物と踏切脇にいた左腕のない女がワンセットで【浮気】よ。」

「……………」

「あなた……運が良いわね。 ボクたちは北海道・網走市の深夜に古い踏切に出てくる妖怪の噂を聞きつけて、()()()()この踏切を見つけてきたのよ。」

「!!!」

「そう……ボクたちがこの踏切を見に来なければ、あなた……本当に喰い殺されていたのよ」

「…………」


 ゾクッ!


 思わず顔色が悪くなり、背筋が凍るほどの体験をしているはずなのに、何故か顔や身体中から汗が()まらない彼。



 この後で、落ち着きを取り戻した彼が、なんとか踏切を渡って帰宅した。 というかボクたちが踏切を渡らしてあげたと言った方がいいだろうね。 ()()()Sが、その後どうなったかは、ボクたちは知らない。 女性Dと別れて浮気を()めたのか、それとも今でも浮気をしているのか―――



 でももう、()()()()()()()彼はもう二度と、この踏切には近づかないだろうと思う。




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