1 中二病
高校一年生の春。
俺は入学式初日に中二病に出会った。
「キミ、転生者ね」
初対面でいきなり話しかけられた言葉は全く理解できなかった。
最近は昔よりも漫画やアニメと言ったジャンルが世間から近くなってきた現代において、多少のアニメ知識を持っていたとしてもオタク扱いをされる事は少なくなった。
むしろ娯楽の知識が豊富という事で知らない相手に紹介しても恥ずかしくない。
それほど現代のアニメや漫画は芸術作品として見られている節もある。
しかし
行き過ぎた趣味はやはり周囲からみれば異常になるものだ。
アイドルが好きなオタクが応援だけでは抑えきれなくなり、ストーカーをしてしまえば犯罪者となるように、アニメに没頭するのは良いがそれを日常的会話にしてしまうと周囲からは変人扱いされてしまう。
実際、俺はいきなり転生者だと断言され話しかけられた相手の事を変人だと認識している。
「ちょっと、聞いてるの?」
変人は俺に返事をされていない事に不服なのか頬を膨らませて腰に手を当てている。
「いえ・・ちょっと何言ってるか分かんないッス」
「・・・はぁ。 まぁいいわ。 確かに急に言われても混乱するだけだものね」
「えぇ、それはもう。 大混乱ッス」
「まぁいいわ。 それじゃあとりあえず自己紹介しておきましょうか」
変人は仕方がないと言わんばかりに首を振り、俺と視線を合わせる。
「私の名前は一条優樹菜。 この高校の生徒会長をしているわ」
「・・・生徒会長?」
「えぇ。 先ほど新入生への挨拶をしたのも私よ」
「確かに入学式でそんな事があったようななかったような・・?」
「まったく。 しっかりしなさい一年生。 貴方は今日から我が高校の生徒の1人なのだから」
「はぁ」
気の抜けた返事をしたせいか、一条と名乗る生徒会長は再び頬を膨らませて腰に手を当てた。
「それで?」
「・・それでとは?」
「先輩が自己紹介してるんだから貴方も名乗るのが礼儀でしょ」
「あぁ・・まぁ、そっすね」
正直いきなり変な言葉で声をかけられて困っていた側ではあるが、これ以上余計な事を言って引き留められるのも嫌だから名乗る事にしよう。
「え~一年生の山伏清寺です。 よろしくお願いします」
「やまぶきせいじ・・覚えたわ!」
「どーも」
「それじゃあ改めて清寺くんッ!」
いきなり名前呼びをされて面をくらったが、次の言葉ですぐに肩を落とした。
「私と一緒に、世界を救いましょう!」