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逃げるしかないだろう  作者: だるっぱ
明美 一九八〇年三月
21/80

白黒写真

 ブッブ――――!


 車のクラクションの音で目が覚めた。


 ――今、何時だろう?


 布団に潜りながら、私は壁に掛かっている時計を見る。まだ、朝の九時前だ。

 窓の外からは、街が賑やかに活動を始めている音が聞こえた。車のクラクションだけではない。ガヤガヤとした人々の話声や、ガラガラと響き渡るシャッターを上げる音。


 いつもなら、十時ごろに京子さんが、私を起こしに来てくれる。でも、早くに目が覚めてしまった。もう一度、布団に潜ろうとして、思い出した。


 ――ジョージ君が、家に来ている。


 布団を勢いよく跳ねのけた。もう起きないといけない。立ち上がると、私は部屋を出て洗面台に向かった。


「ル、ルルー、ルー」


 お台所から京子さんの鼻歌が聞こえてきた。挨拶をしようと思い、中を覗き込む。ひどく驚いた。なんと、喜美代伯母様が、京子さんと一緒に朝ご飯の支度をしていたのだ。


「お、おはようございます」


 包丁を動かす手を止めて、京子さんが振り向いた。


「あら、おはようございます。お嬢様」


 お台所に入り、喜美代伯母様に近づく。


「喜美代伯母様、おはようございます。今朝は、お早いんですね」


 伯母様が、嬉しそうに私を見た。


「おはよう、明美さん。だって、正治さんに朝ご飯のご用意をしないと……」


 この安達家で寝起きするようになってから、喜美代伯母様がお台所に立つ姿を、私は初めて見た。味噌を溶きながら、京子さんと同じように鼻歌まで歌っている。

 昨日までの、目に輝きが無かった喜美代伯母様は、どこに行ったのだろう。

 ジョージ君は、正治さんではない。でも、伯母様がそう思い込むだけで、ここまで元気になれるんだ。


 ――これって、奇跡?


 驚きと同時に、私は伯母様に出鼻を挫かれた形になってしまった。だって、早起きをして、ジョージ君の為に朝ご飯の支度でも手伝おうと思っていたから。なんだか少し残念な気持ちになってしまう。

 洗面台に向かい、蛇口を捻って顔を洗った。冷たい水で顔を洗うと、気持ちがちょっとスッキリした。


 部屋に戻り、服を着替える。鏡台の前に座り、軽く化粧を始めた。鏡に映る自分の姿を見ながら、私は昨晩の出来事を思い出していた。


 タクシーで帰って来た私たちは、少しお腹が空いていた。京子さんにお願いして、温かいおうどんを用意してもらう。

 食事が終わると、ジョージ君が先にお風呂に入ることになった。ジョージ君がお風呂に入っている間、ジョージ君のことを思い浮かべる。うどんを食べながら、青く腫れた唇を痛そうに摩っていた。勲お兄さんが、ジョージ君を殴りつける様子が思い出される。心が痛かった。

 京子さんにお願いして、軟膏を用意してもらう。ジョージ君がお風呂から上がった。


「ちょっと、そこに座りなさいよ」


 私は、ダイニングテーブルの椅子に、ジョージ君を座らせた。


「あのー、何でしょうか?」


 ジョージ君が、不安な表情を浮かべていた。一緒に食事をしたのに、まだ緊張しているみたい。

 ジョージ君の隣に座った。顔を寄せる。ジョージ君は、突然のことで体を仰け反らせた。


「アッハッハ、逃げなくてもいいわよ」


 笑いながら、私はジョージ君の唇を見つめる。


「いや、でも……」


 ジョージ君は、私から目を逸らして固まった。


「青く腫れているね」


 容器の蓋を開けた。人差し指で、軟膏を掬いあげる。ジョージ君の殴られた唇を見つめた。

 ジョージ君が、恥ずかしそうに私を見つめる。私と視線が繋がった。なんだか私まで恥ずかしくなってくる。

 ドキドキしながら、指を伸ばした。青くなったジョージ君の唇に、軟膏を優しく塗りつける。

 ジョージ君が、目を瞬いていた。緊張しているジョージ君の姿が、とっても可愛い。


 ――何だろう、すごく新鮮で、すごく嬉しい。


 私の胸が、キューッと締め付けられた。


 その夜、ジョージ君は大広間で寝ることになる。着替えが無かったジョージ君の為に、衣類を用意したのは喜美代伯母様だ。

 むかしお兄さん使っていた衣類を、押し入れから出してくる。一晩寝るだけなのに、ジョージ君にどの服を着せようか迷っていた。ジョージ君が服を着た後も、伯母様はジョージ君に何かと関わろうとしている。


 ――何なの、伯母様と私の関係は?


 思わず、笑ってしまった。


「明美お嬢様、朝ご飯にしましょうか」


 京子さんが、私を呼んだ。物思いに耽っていた私は、現実に引き戻される。

 化粧台に座っていた私は、慌てて鏡を覗き込んだ。ちょっと化粧が強すぎたかもしれない。ジョージ君に、朝から気合の入った女みたいに思われるのも嫌だし……。


「お嬢様」


 京子さんが、再度、私を呼んだ。


「はーい。いま行きます」


 仕方なく立ち上がった。大きく深呼吸をして、部屋を出る。

 居間に顔を出すと、ジョージ君は、もう席に付いていた。ジョージ君に微笑みかける。


「おはよう、ジョージ君」


「おはようございます」


 ジョージ君が、畏まっている。


「良く眠れた?」


「ええ、いつの間にかぐっすりと寝てしまいました」


 昨日のことがあったので心配だったけれど、なんだか元気そうだ。


「あら、案外、タフじゃない? 親分さんの実家なのに」


 ちょっと意地悪く言ってみる。ジョージ君は、困ったような表情を浮かべた。彼の隣に座る。ジョージ君が、私の方に体を向けた。頭を下げる。


「あのー、昨日から色々とありがとうございました」


「いいのよ。伯母様を助けて頂いたし、お互い様よ」


「それから……」


 なんだかジョージ君が言い難そうにしている。


「どうしたの?」


 ジョージ君が、私を見た。


「月夜さんのことを、明美さんって呼んでもいいですか?」


 私は、笑顔になる。


「ええ、明美でいいよ。ただ、ジュエリーボックスでは、月夜って呼んでね」


「ええ、分かりました」


「それとね、ジョージ君」


「なんでしょうか?」


「私もお願いがあるんだけれど」


「ええ、何でしょうか?」


「私に敬語を使うのは、やめて欲しいな」


「あっ!」


「お店でのため口は、ちょっと困るけれど、この家に居るときくらいは、敬語を使われるのは、ちょっと嫌なの」


 私の提案に、ジョージ君が目をパチパチとさせた。


「分かりまし……分かった」


 言い難そうにしている。そんなジョージ君を見て、私は笑ってしまった。とても素直な子だと思う。

 ジョージ君との、この距離感が何だか気持ちがいい。私の中の悪戯な気持ちがくすぐられてしまう。とても楽しい。一緒にいて気を使わないって、とっても楽だと思った。


「今日は、めざしと玉子焼きとお味噌汁ですよ」


 京子さんが、食卓に朝ご飯を並べていく。

 喜美代伯母様と京子さんは、そんなにも年が変わらない。伯母様の方が少しお姉さんになる。

 京子さんは、先代の伯父さんの時から、この家でお手伝いをしてくれている。ある意味、安達家の母のような存在だ。伯母様や私の面倒をみるだけではない。離れ屋で生活している、子飼いのヤクザのお世話もしていた。

 喜美代伯母様が元気だったころは、伯母様がこの家の事を考えていた。でも今は、京子さんがこの家を仕切っている。安達家にとって、京子さんはなくてはならない存在だった。


「このお味噌汁、美味しいですね」


 ジョージ君が、感嘆の声を漏らした。そんな彼を見て、京子さんが嬉しそうに微笑む。


「嬉しいわ、このお味噌は私が仕込んでいるのよ」


 ジョージ君が、京子さんに人懐っこい笑顔を向ける。


「へー、そうなんですか。本当に美味しいです。おかわりを頂いてもいいですか」


 ジョージ君の催促に、京子さんが嬉しそうに立ち上がった。彼からお椀を受け取って、嬉しそうにお味噌汁をよそう。


「長い間、女だけの食事でしたでしょう。ジョージさんがいると、なんだか張り合いが出ます。たくさん食べてくださいね」


「はい」


 ジョージ君が、京子さんからお椀を受け取った。美味しそうに食べている。いつもの静かな朝食が、今日だけは賑やかだ。


 朝食が終わると、ジョージ君が喜美代伯母様に尋ねた。


「あの〜、喜美代さん」


「はい、何でしょうか?」


 名前を呼ばれて、伯母様が嬉しそうに微笑む。


「僕のことを、正治さんって呼んでいましたが、どなたなのか、お聞きしても宜しいでしょうか?」


 ジョージ君の質問に、私も関心を示した。


「そうそう、私も聞いてみたかったの」


 伯母様が、嬉しそうに微笑む。少し悪戯っぽい表情で、私を見た。


「ここだけの、秘密にしてね」


 私は、強く頷いた。伯母様がどのような話を始めるのか、期待に胸が膨らむ。


「正治さんはね、私の初恋の人なの」


 ――わー、伯母様の恋話だ!


 京子さんも、驚いて伯母様の顔を見た。


「あらまー、お姉さんのそんな話、私も初めて聞きますよ。少しお持ちくださいね。話の前に、お茶を用意しますからね」


 立ち上がると、京子さんはお茶の用意を始めた。その間、喜美代伯母様は、宙を見つめている。正治さんのことを思い出しているのだろう。


 テーブルにお茶が並べられた。喜美代伯母様が、穏やかに語り始める。


「私がね、まだ、十八だった頃のことなの。正治さんはカメラ屋の息子でね、私より、二つ年上だった……」


 伯母様が懐かしそうに眼を細める。


 正治さんは、若い頃の伯母様をモデルにして、よく写真を撮っていたそうだ。お互いの両親も二人の仲を認めていた。伯母様は、将来は正治さんと結婚することを微塵も疑ってはいなかった。


 ところが、伯母様が二十歳になった頃に、太平洋戦争が始まった。正治さんは国の命令で招集され、中国へ渡ることになる。叔母様は、正治さんが無事に日本に帰ってこられるように祈り続けたが、その願いは叶わず、帰らぬ人となってしまった。


 伯母様が、ジョージ君を見つめる。


「昨日、貴方と出会った時ね、正治さんが帰ってきたって、私は本当にそう思ったの。嬉しくて嬉しくて、あの時は涙が止まらなかったわ」


 伯母様が立ち上がる。


「どうされました?」


 伯母さまが、ゆっくりと笑う。


「良かったら、若い頃の私の写真を見てみる?」


「見たい!」


 私は即答で、返事した。


 居間を出て、伯母様が自室に向かう。暫くするとスチール製の四角い箱を、手に持って帰って来た。テーブルの上に置いて、その蓋を開ける。

 中には大小様々な写真が何葉も仕舞われていた。時代を感じさせる、それらの写真は全て白黒で、写真の中で若い頃の伯母様が幸せそうに微笑んでいた。


「伯母様、とっても綺麗よ」


 写真を手に取って、一葉ずつ眺めていく。その内の一葉を手にしたとき、驚きの声をあげた。


「あっ!」


 二人で写っている写真の男性が、ジョージ君にそっくりだったのだ。


「この方が、正治さん?」


「そうよ」


 伯母様が、微笑んだ。


「本当にそっくり……」


 ジョージ君も、興味津々でその写真を眺める。

 その時、ジョージ君が伯母様を見て、頭を下げた。


「あの、お願いがあるのですが」


「何かしら?」


「色鉛筆か、クレパスみたいなものは、ありませんか?」


 伯母さまが不思議そうな表情を浮かべる。


「色鉛筆?」


 京子さんが、その問いに答えた。


「色鉛筆でしたら、お坊ちゃんが子供の頃に使っていたものが仕舞ってあります」


 京子さんが居間から出ていく。色鉛筆のセットを持って、直ぐに帰ってきた。ジョージ君が、その色鉛筆を受け取る。


「一晩、泊めて頂きありがとうございます。お礼に、僕に喜美代さんの似顔絵を描かせてもらえないでしょうか?」


 ジョージ君の提案に、私は心が弾んだ。


「伯母様、ジョージ君は絵がとっても上手なのよ。きっと素敵な伯母様を描いてくれるわ」


 伯母様が、はにかんだ。


「似顔絵って言っても、もう、私はお婆ちゃんよ」


 そう言いながらも、伯母様はジョージ君の似顔絵のモデルになることを承諾した。

ジョージ君は、似顔絵を描く前に画材の準備を始める。色鉛筆は、全ての色がキレイに削られた。そうした作業を見守りながら、伯母様がジョージ君に不安そうに質問をする。


「私は、どのようなポーズをしたら良いのかしら」


 ジョージ君が、微笑んだ。


「そのままでお願いします。それよりも、正治さんとの思い出話を、もう少し聞かせてもらえませんか。その話を聞きながら、似顔絵を描いてみたいです。昔を懐かしむ、喜美代さんの笑顔は、とっても素敵ですよ」


 ジョージ君の言葉に、伯母様は恥ずかしそうに顔を赤らめた。ジョージ君が、クロッキー帳を開く。私はジョージ君の後ろに椅子を運び、彼が描く絵を観察することにした。


 ジョージ君は、慣れた手つきで簡単な当たりを付ける。サラサラと伯母様の輪郭を描いていった。舞台の時とは違って、ジョージ君は少し考え込みながら、丁寧に鉛筆を走らせていく。一体どんなことを考えているのだろうか。


 伯母様は、正治さんとの思い出をポツリポツリと語った。そうした昔話に、京子さんが懐かしんで相槌を打つ。二人にしか分からない、昔の話題で盛り上がった。

 京子さんが声をあげて笑うと、それに釣られて、喜美代伯母様も楽しそうに笑う。そんな二人の様子を、ジョージ君はじっくりと観察していた。

 ジョージ君の細い指が器用に動くたびに、真っ白だったクロッキー帳に、伯母様の似顔絵が描かれていく。ただの線だったものが、命を吹き込まれたように生き生きと輝きだした。まるで魔法のようだ。見ていて、とても楽しい。

 ところが、私は段々と驚きはじめた。目を大きくして、クロッキー帳を眺める。描かれていく喜美代伯母様は、確かに伯母様に間違いない。ただ……。


 ――若過ぎる!


 どう見ても、先程の白黒写真に写っていた二十歳の頃の喜美代伯母様なのだ。しかも、色鉛筆で着色されて、それは、まるで、生きているような温かみが感じられた。


 似顔絵を描くジョージ君の横顔を、私は驚きの目で見つめる。一心不乱に描き続けるジョージ君に、目を奪われた。

 長いまつ毛に縁どられた瞳が透き通っている。とても綺麗だ。伯母様を見つめるときに、目を細く閉じる。その仕草が、とてもセクシーだと思った。

 私の胸が、強く締め付けられる。


 手に持っていた鉛筆を、ジョージ君はダイニングテーブルに置いた。描き上げた喜美代伯母様の似顔絵をしばらく見つめる。ジョージ君は伯母様に微笑みかけた。


「出来ました。ちょっと工夫して描きました。気に入って頂けると嬉しいのですが……」


 クロッキー帳から、その似顔絵を切り取る。ジョージ君が立ち上がった。伯母様に近寄り、その似顔絵を伯母様に差し出す。

 喜美代伯母様が、その絵を受け取った。


「まぁ」


 伯母様が、目を大きく広げて驚いた。横から、京子さんもその絵を見る。口に手を当てて呟いた。


「あらー、若い頃の喜美代さんじゃない。とっても綺麗……」


 伯母様は、声が出なかった。暫くその絵を眺めていた。顔を上げる。優しい目でジョージ君を見つめた。


「正治さんの、写真のモデルになったような気分よ」


 そう言った途端、伯母様の目が潤みはじめた。頬に涙が零れる。伯母様が、ギュッと目を瞑った。顔がくしゃくしゃに崩れる。絞り出すようにして呟いた。


「正治さん……」


 ダイニングテーブルに手をつくと、伯母様はオイオイと泣き始めてしまった。あんまり激しく泣くものだから、京子さんが伯母様を抱きしめる。その背中を優しく撫でた。伯母様は、京子さんに抱きつくと、更に声をあげて泣き続けた。


 私は、呆気に取られているジョージ君の肩をポンポンと叩いた。


「ジョージ君、ありがとう。後は、京子さんにお任せしましょう」


 私に促される様にして立ち上がる。伯母様に向かって、ジョージ君が深々と頭を下げた。


「喜美代さん、一晩、泊めて頂きありがとうございました。京子さん、お味噌汁、本当に美味しかったです」


 京子さんが、ジョージ君を見上げた。


「また、遊びにいらっしゃい」


 伯母様も、顔を上げてジョージ君を見た。見た途端に、また、激しく泣き出してしまう。

 そんな二人を残して、私はジョージ君の手を引っ張った。居間を後にする。

 廊下を歩きながら、ジョージ君に問いかけた。


「ねえ、この後は、どうするの?」


「このまま、帰るよ」


 足が止まった。寂しい気持ちが込み上げて来る。


「無理を言って、ごめんね。でも、この家に来てくれて嬉しかった。ジョージ君のお陰で、伯母様、とても楽しそうだったよ」


 ジョージ君が、居間の方に振り返った。


「でも、最後は泣かしてしまったから、何だか申し訳ないような」


「いいのよ。ジョージ君のお陰で、伯母様は元気になれたんだから。また、遊びに来たら――」


 言葉の途中で、最大の障害を思い出した。ジョージ君から視線を逸らす。残りの言葉を口にした。


「――とは言っても、勲お兄さんが問題ね」


 お兄さんの名前に、ジョージ君が少し怯えた。沈黙が流れる。

 私は、慌てて言葉を繋げた。


「まー、でも、今日は、本当にありがとう。ジョージ君が来てくれて、私も嬉しかったのよ」


「僕も、楽しかった。喜美代さん達に会うことも出来たし。また、遊びに来れるかは、分からないけれど……」


 ジョージ君が、寂しそうに笑う。


「……そうよね」


 また、言葉が途切れてしまった。


 ――今日は、もうお別れなんだ。


 そう思うと、寂しさが一層込み上げてきた。そんな気持ちを振り切るようにして、ジョージ君に笑顔を見せる。


「ちょっと表を見てくるね。私が合図をしたら、素早く帰るのよ」


 サンダルを履いて、表に出た。隣の離れ屋周辺に、人影がないか確認する。振り返り、ジョージ君に合図した。


「今のうちよ」


「ありがとう、明美さん」


 ジョージ君は、振り向かずに走っていった。その背中を見つめる。


「盗まれちゃったかな」


 思わず呟いてしまった。

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