【パパは‘何の’準備をしている?】 side レヴィオン·ビステル中将(マコ夫)
知らないふりをしている事は、なかなか厄介だ。
ここ数日、帝国軍の話題の中心は
『ターラン統括司令閣下による《採用試験》』。
何でも、あちらの『灰色』軍服の方へ、
『紺』軍服の方からの採用を募る事になったらしい。
その採用条件は、年齢制限‘35才’の他には、特に何も無し。
軍の中の人間でさえあれば、
売店の売り子でも、調理師でも、清掃員でも誰でも受験資格があるという。
ただし、将軍職に在るものは除く。
という、ざっくりとしたもので。
何回かの試験を突破するのが条件だと発表された。
帝国軍のカリスマであるサリュー·ターラン統括司令。
本人は、全然自覚がないらしいが、
ターラン統括司令閣下の下で働く事は、若い将監の憧れの的になっている。
俺には資格が無いことが少し残念に思う。
一次試験の筆記が終わった。
官位の上から下までが皆、意気込んで受けに行った試験だ。
その受験した者が、皆一斉に首をひねっている。
解答が、《わからない過ぎる》からである。
実は、身内のよしみで俺は《解答》を知っている。
知っていて、知らないふりをすることに一苦労している。
結論から言うと、ターラン司令閣下の試験問題、
略して《ターラン試験》に、
『正解はない!』のである。
正解など、初めからない問題を、ターラン司令が作り上げた。
我が舅ターラン統括司令閣下らしいといえば、
本当にそれらしい。
全問題5問中に、実際に採用の判断に使われるのは、最後の5番目設問だけと聞いている。
後の4問は、『ターラン司令の暇潰しのお楽しみ』に、なさるそうだ。
もちろん、その‘お楽しみ問題’にも正しい解答などはないそうだ。
随分と人を食ったようではあるが、
『‘そこを’みて判断を下したい』と仰っていらした司令は、
勿論ふざけた様子ではなく、大真面目だと仰っていた。
受験した者が、解答を貼り出すなり、広報に載せて貰いたい。
と、言い募る中、俺だけが知っているのも辛い。
『正解などないのだと』
俺に受験資格がない事で、裏事情も明かされた。
******
件の設問第5問目は。
《この帝国を落とす方法を答えよ。》
この解答の一番悪い例なら、分かるな。
『帝国は、不滅であり日々それを念頭に研鑽を積むべきである。』
こういうのが、一発で弾かれるのは分かるな。
ターラン司令が求めている能力には程遠いだろう。
俺なりの、考えなのだが、
司令はちゃんと‘穴が見える’人間を求めているのではないだろうか?
帝国の、穴や隙間が見えない者が、
攻撃を回避する事も相手を攻める事もできない。
妻のマコーレットと、弟のアロマと、この問題について話をしてみた。
妻のマコは、だいぶ目立ってきた双子の入っているお腹で、
物騒な事を言ってきた。
「落とすまではいかなくても、相当に弱らせる事はすぐに出来るわよ。」
「どうやってだ?」
「この帝国は、今まで外から強烈な病原菌が入って来た経験があまりないでしょう?
帝国主義で、他国民の流入がとても少ないから。
まあ、その分排他的で、
こっちに来た当時はなかなか苦労したもんなの、私も。」
「で?どうする?」
「そんなに強い細菌兵器みたいなものでなくてもいいのよ。
みんなが免疫を持っていない、
どっかの風土病の弱いので充分。
感染力さえつよければ。
それに罹患した人が、気がつかないで空港から入って来たらあっという間に。」
おいおい、随分と《胎教に悪い》話をしている“ママ”だなあ?
「帝国民も軍も、そういう想定の準備をしてこなかったでしょう?
今まで。
きっと、あっちもこっちもおたおたして、
軍も民間も回んなくなっちゃうわよ。」
「確かにな。」
「弱らせるだけですんじゃうのは、
軍があることで決断と行動は早いだろうから、
上が馬鹿じゃなければ徐々に何とかなるだろうから、
《帝国を落とす》まではいかないでしょうね。
でも、
弱っちゃってるところに、2発目や3発目の何かが起こったら、
《帝国が落ちちゃう》かもね?」
「その2発目、3発目とはどういう事だ?」
「やーねーレヴィパパ。
そんなの私が分かる訳ないじゃないの。
そんな事が分かるくらいなら、ここで産休とって主婦やってないわよ。
ねーパパはしょうがないですねー。」
と、お腹に話かける。
でも、このマコの解答だって、充分‘補欠合格’くらいにはなれるんじゃないのか?
『帝国が不滅!』という解答を叫んでいるやつよりはよほど。
マコに誉めたつもりで、そう話すとぷりぷりして怒られた。
「どうせ、私はいつも‘補欠合格’ですよー。」
アロマが横で大笑いをしている。
俺は何か地雷を踏んだのか?
「アロマは、どう思う。どうやって帝国を落とす?」
マコの作ったお茶菓子を食べながら、物騒な会話だと思う。
「残念でした。兄さん。
僕は、主席での合格を目指していますから、
たとえ兄さんでも教えません。」
主席合格をって、そもそもアロマが受験問題の1つを司令から言われて作っていたよな?
いいのか?
ターラン司令がアロマに話していたのを、俺は見ていたぞ?
『アロマ、なんか統計を解析させる問題を作れよ。
途中にトラップを何個か挟んじゃって。
結局、この資料は使い物になりません!
みたいなの。
パッと見に使い物にならない事が分かったら駄目だからな。』
『パパ、僕がそれ作ったらなんか良いことあるのかな?』
『きっと、来年から、休む間もなく働けるぞ!
優雅に将軍のお茶入れ出来るのは今のうちかもよ。
まだ分かんないけど。』
しょうがないのか。このターラン家ではこのくらいは。
横でパズルをして遊んでいたフレイアが可愛い声で口を挟んだ。
「パパ、ママ。皇帝陛下がいなくなれば、‘帝’国はなくなっちゃうのかな?
だって、帝国の‘てい’は皇帝陛下の‘てい’でしょう?」
おい、子供の前で滅多な事は言えないな?
何て事を言い出すんだうちの娘。
外で、しゃべって来られたら困るだろうこれは。
「大丈夫よ。そんな事には絶対にならないから。」
「どうして?」
「うちのパパが陛下のお側にいる限り、
絶対にそんな事にはならないの。」
「どうして?」
「どうしても!
うちのパパは、宇宙で一番お利口だからですよー!」
「パパってパパのこと?」
フレイアが指を俺に向けるが、残念だけれど俺ではない。
「違う違う、レヴィはフレイアのパパ。
私とアロマのパパのことです!」
「なんだ!“おじい”の事か。
ふーん。おじいって、お利口なんだ。
ママ、おじいって‘ひー様’よりもお利口なの?」
「そーねー?
マケル宰相閣下とは、違うタイプの宰相になるんでしょうね。
パパだったら?」
「おい、マコ滅多なことを言うな!
子供の前で。」
3人が一斉に俺を見た。
「レヴィ兄さん、何を今さら。
全てその為の準備でしょう?
見え見えじゃない。」
「そうよぉ、レヴィ。
この頃の‘お祖父様’は急に、
人が変わったようにニコニコしているじゃない。
その分、パパが苦虫を噛み潰したような顔になっちゃって。
ミラママは、ハッキリ仰ってるわよ。
『時代が動き出します。あなた達も周辺をお気をつけなさい』って。
ねえ、フレイア?」
「うんそうだよ。
おばあちゃまが、フレイアにもちゃんと覚悟をお持ちなさいって。」
「パパだけだよ。早く覚悟をお持ちするように、
どっかからもらってこれる?
フレイは、持ってないのよ。それまだ。」
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妻のマコーレットの出産準備は、着々と進んでいる。
2度目の出産とはいっても、
お腹は前回のフレイアの時よりもずっと大きくなるのが早い。
双子の男の子は、お腹の中でも元気に暴れているようで、
マコがだんだん辛そうになってきた。
マコの勤め先の病院が変わったせいで、
休みがとりやすくなって、早めに産休がとれる。
それを聞いて、少し安心をしている。
産み月に入った時点で、早めに入院をするそうだ。
双子の出産は、危険度も高くなる。
フレイアは、周りの皆に可愛がられて、毎日元気に過ごしている。
ありがたい事に、俺達両親の不在でも日常を変わり無く過ごせているようだ。
それでも、後2人産まれた後に、育児に手が足りるのかを俺も心配していた。
お義母様も、ターラン司令が新しい局面を迎えるのであれば、
孫の世話よりもターラン司令夫人としての役割も重くなるはずだろう。
「他人の手は足りていても、
どこかに肉親の目があるのとないのでは大きく違うものよ。」
片親の、その父親までほとんど不在の‘父子家庭’で育ったからこそ分かる、というマコの言葉に。
「田舎の俺の母に、双子が産まれた後の暫くの間、
こっちに来て貰えないか頼んでみようか?
うちの母がいることで、かえってマコやお義母様が動き難くはならないだろうか?」
俺の提案に、お義母様とマコが声を揃えて。
「是非とも!お願いしたく存じますわ。」
「お願いできたら心強いわ。」
早速、田舎の母に連絡をとった。
母は、喜び勇んで3日後には帝都にやって来た。
母について来ると言ってきかない父に。
『男はこういう時に役には立ちません!』
母は、一刀両断で置いてきたそうだ。
俺の両親が住んでいるところは、近所付き合いも濃い場所。
父がひとりで留守番をしても不自由のないように、
母が周りに頼んで来たそうだ。
母、マコーレット、お義母様、横にちょこんとフレイアが並んで。
『さあ、男の方はしっかりお仕事をなさって下さいませ。』
『レヴィオン、後は任せてちょうだい。』
『レヴィ、産まれたら知らせるわね。名前をちゃんと考えておいてね。』
『パパ、お仕事頑張ってね。』
俺に居場所はなさそうだ。
まずは、仕事に専念しよう!
俺も、3人の子供の‘父親’になるのだしな。
決意を新たにしたところに、軍から呼び出しが入った。
軍本部に出頭した後に、向かうよう指示をされたのは、
ターラン統括司令の本部執務室だった。
ターラン司令から、直接呼び出しがかかったのは初めての事だ。
案内をされた執務室は、ごく普通の会議室のようだ。
広さと機材の量はあっても、将軍各位の執務室よりも、
いたって簡素で派手なところのない作りだった。
ターラン司令らしいな。
4人の幕僚も顔を揃えて座っていた。
「レヴィオン·ビステル中将に尋ねたい。」
ターラン司令が声を発する。
よし、今日は、お父上ではなく、
帝国の重鎮としてのターラン司令閣下との面談だ。
気持ちを引き締めて、礼を尽くして所作をとる。[敬礼!]
「まあ、まず座って楽にしてよ。レヴィ君。」
ん?
「率直に言うね。
ビステル中将の今までの戦績を見させてもらって。
細かい機動力と、必要な要所での切り込み方が、
俺は気に入っている。
今うちに欲しい部隊とその頭としての“ビステル中将”に、
今日はご足労をお願いした。
間違っても、‘娘婿’を呼び立てたんじゃないよ。」
「はい。」
「こっちの陛下のお側近くの兵力で、
ちょこちょこと、あっちこっちに押さえに行ったりしてた仕事は、
今まであまりそっちには聞こえていないでしょう?
でも、結構こっちも静かに頑張ってやってるんだよ色々と。
その殆どが、大きな機動力でドカンとやっちゃうやつではなくて、
計算をしつつタイミングを計って効率的に潰して行く戦い方だね。
大概は、俺が絵図を描いて、
そこの“ぶっ怖し屋のゴーラ大佐”が実行部隊。
それで、今までは回って来てたんだけどさ。
相手の規模が大きくなったら、
手が回んなくなるのが見え見えなんだよね。
もうそろそろ。」
「でさあ、ビステル中将に聞いてみたかったわけ。
俺の下に就くのは抵抗があるかな?部隊ごと。
今ビステル中将の部隊全部でどれくらい?航空部隊とかも入れて。」
「自分が帝国から預からせて頂いている兵の数は、5千というところでしょうか?」
「うん、どうかな?」
「少し、足りねえな。」
ターラン司令閣下の筆頭幕僚のガレット准将が答える。
「で、どうする?ビステル中将。
断ってくれても、全然君の処遇に変わる事もないし。
強要はしないよ。」
「自分に異存などありません。
ただ、…」
「ただ?」
「職分として、今との違いにどのようなところがありますか?」
「何も変わらないよ。
今と同じ帝国と皇帝陛下をお守りする帝国軍。」
「そうだなあ、敢えて言うなら。
万が一、今の陛下と次代の皇太子が争ったりしたら、
いち早く皇帝陛下の方に付いて動く機動力にはなってもらうかも?
ただ、そんな未来は勘弁してもらいたいのは俺の本音。」
「分かりました。
自分は、喜んでターラン総括司令の旗下に入らせて頂きます。」
「あのさ、ちょっと違うかもよ。
別に俺の軍隊でも、俺の旗下でもなくて。
帝国軍は、全部陛下の軍隊な訳でしょう?
だからさ、レヴィ君の部隊は所属を変えられるんじゃなくてさ。
身軽に動ける機動力として、
俺と一緒に動いて欲しい訳なんだけど。
それって何か、敷居を乗り越えちゃう決意がいる感じがするかな?」
「いえ、全部隊『灰色』の軍服に着替えて皇帝陛下にお仕えいたします。」
「ああ、そこかあ?やっぱりね。
バルバ大佐説明してやって。
レヴィ君なら、もういいんじゃないか。」
「ほい。軍服の事ですね。」
「ビステル中将閣下、まだ正式発表前ですが。
この度、我が帝国軍の軍服を新しい仕様に企画統一する事になりましてね。」
「軍服の企画統一?」
「帝国軍全部の軍服を新調いたしますので、
服屋は大儲け特需でしょうが。
全軍の衣替えで、あっちもこっちも大わらわになるでしょうね。
今の軍服の意匠は随分と古くからで、
現代向けに可動しやすくなるよう作り変えるのも悪くはないでしょうし。」
「ですから、ビステル中将の部隊は、
『灰色』軍服をお召しになる必要などないんですよ。」
「企画統一とは、今ある『灰色』軍服と『紺色』軍服が、
同一の軍服を着用となるわけでしょうか。」
ターラン司令が、重ねて仰った。
「そうそう。みんな同じ。
色は今の『紺色』よりも少し淡い感じに、
ちょっと‘灰色’の明るいの混ぜたような色?
らしいよ。
俺もまだみていないけれど。
陛下がそう仰ってた。」
ガレット准将が、補足するように。
「司令、少し兵隊の数足りませんよね。
どうします?
ビステル中将んとこの兵の数はこれ以上増やせませんか?」
「出来ない事もないだろうけど、
今の官位だとそれでいっぱいいっぱいだろうし。
兵の数を持たせる都合でレヴィ君を上の位に上げちゃうと、
レヴィ君が帝国軍の中で、とっても生きにくくなるんでないの?
ものには、順番ってもんがあるからさ。」
「ですよね。
だったらお友達でも引っ張って来てもらいますか?
できれば1万、最低でも8千欲しいですよね。」
「レヴィ君、心当たりはあるかな?
若手で、功名心ばっかり先走らない。
頭使って働く事に快感覚えるようなお友達はいないか?
少将当たりの何人か?」
「思い当たります。
もし、先ほどの新しい意匠の軍服の話を密かにさせて頂けますなら、
話をより早く通せるのですが。」
「わかった。ちょっと待ってて。
お茶でも飲んでて。」
ターラン司令閣下が、席を外された。
暫くして、戻られると。
「近日中に、公式発表してくれるってさ。」
「いいんですか?司令。
上は、一斉に、
こうバーっとやりたいんじゃないんですか。」
「でもさ、俺も、
それはもともと無理があるとは思っていたんだよ。
だって、魔法を使うんじゃないんだから、
いきなり全員の軍服が『ぽぽぽぽん!』って変わるわけはないだろう?
先にみんなに新しい軍服を作っておいてから、
はいどうぞ!で着るんだろ?
だったら、作っておくのに“時間”も“手間”も“説明”も要るわけだろう。
そういうの、陛下は全然わかってくれないからさ。
全部一斉に、《あっちもこっちもびっくりしたら面白い》って、
そんなの無理だってばさ。」
「ですよね。」
「だからさ、レヴィ君ちょっと待ってて。
数日内に軍服改革の発表があるだろうから。
その間は、お友達には言わないで、
ちょうどいいから、先に‘お友達のリスト’を作って、
こっちに送っておいてくれないかな?
ちょっとだけ下調べさせて。
その後に、レヴィ君のお友達勧誘にかかってよ。
窓口は、ついでだから軍服係りのバルバ大佐、
レヴィ君と連絡とってやっといて。」
「司令、自分はいつから“軍服係”に就任したんですか?」
「あはは、今ねー。よろしく。」
はあ、確かに色々動き出すのかも知れないなあ。
***************
仕事中に母から連絡を受けた。
マコーレットが無事に出産。
“母子共に健康”何よりだった。
今は子供の顔を見に帰る時間がない。
ターラン司令閣下の直近に入る事が決まった途端に、
仕事が軽く3倍にはなったんじゃないか?
俺の部下達、俺と一緒にターラン司令の直近採用となった少将2名、准将1名。
皆が声を揃えて言う。
『本当に、噂通りだったな。』
嘆いている暇もない程に、仕事に忙殺されている。
それでも、皆が“良い顔”をしている。
ターラン統括司令に選んで貰ったという誇りと、
まだ何も聞かされてはいなくても
『時代が動き出す!』という臨場感を何とはなしに察している。
とりあえずは、マコには手の空いた時に通信を入れようと…思ってはいたんだよ。
気がついたら、産まれた知らせを聞いてから6日がたっていた。
あわてて、モニターの向こうにいる、マコと俺の母に平謝りだ。
母と、マコに抱かれた俺の息子達は‘二卵性双生児’ということだ。
ひとりは、俺と同じ暗めの茶に近い金髪、
もうひとりは何と‘黒髪’だった。
周りに思いあたらないと思ったら、ターラン司令閣下の父上と同じだと。
ターラン司令がモニター画面から、産まれた息子達の様子を見て、
『ゲッ!親父と同じかよ?』
と、仰ったそうだ。
マコが怒る怒る。
「まずは、『おめでとう』くらい言ってくれたって良いのに。
レヴィといい、パパといい。
もう。」
母も横から口を挟む。
「あんたって子は、本当に信じられない!
父さんは、あんたが産まれた時には、それはもう!」
「ごめんごめん、今は本当に忙しいんだよ。
ごめんな。マコ。」
「はあ、まあ良いわよ。
パパよりは‘まし’だから。
どうせレヴィが忙しいのも、パパのせいでしょう。
それより、この子達の《名前》をどうするの?
考えてはあるんでしょう?」
「ああああああ!
すまん。すまん。すまん。
本当に申し訳ない。」
「レヴィオン、あんたって。どういう父親だい!
母さんは恥ずかしいよ。」
「そんな事だと思ったわよ。
後4日で役所に届けを出さないと!
この子達、名前無しになっちゃうわよ。」
「うわあ、どうしようか。」
ため息をたっぷり吐いた後にマコが言った。
「ねえ、レヴィ。
あなたの“お父様”につけてもらおう。
この子達の名前。
急いでお願いしよう。
レヴィ、せめてそのお願いは、今直ぐにレヴィがしてね。
後4日。4日よ。」
「親父?
ええと、良いのかうちの親父で?
ターラン司令がお気を悪くしたりしないか?
せめてひとりずつ付けてもらうとか?」
「やーねぇ。レヴィったら。
パパがそんな面倒臭い事を言うわけないじゃない。
まだわかんない?
パパは、『助かった!』くらいの事しか言わないわよ。どうせ。
レヴィ絶対よ!
この‘至急案件’だけは、今すぐお父様に伝えてね。
はい、復唱して!」
俺は、さすがにこれ以上の“駄目パパ”になってはいられないので、
軍の最短時間の通信を使って父と連絡をとった。
父と連絡をとる前に、司令の幕僚に通信許可を取ろうとしたら、
横から司令の怒鳴り声が聞こえた。
『そんな事でいちいち許可なんかとるな!
みんな家になんか帰れないんだから、
通信くらい、いくらでも使えよ!
こいつらみたいに、奥さんに逃げられたくなかったらな。
家庭崩壊を防ぐ福利厚生。
通信?いくらでも、使って下さいよ。』
父と連絡をとって、事情を話した。
父は次の日には、息子達の名前を携えて帝都に飛んできた。
やれやれ、役所の届け出に間に合って良かった。
たぶん、俺は一生マコーレットに言われ続ける事になるんだろうなあ。
息子達に向かってマコが。
『あなた達のパパは、産まれても会いにも来ないで、
名前を考えるのも忘れていたのよ。』
ってなぁ。
息子達の名前は、『リカルド』と『イズミール』。
父の“平民レジスタンス”時代の盟友であり命の恩人から貰った名前だそうだ。
仲間を助ける為に若くして散っていった《男の中の男》だったと父が嬉しそうに語った。
公務の隙間に、ターラン司令閣下にお会いした時に息子達の名前をお知らせできた。
「金茶が『リカちゃん』で、黒が『イズミちゃん』ね。
はい、了解。」
マコーレットの父上は、いつも通りだなぁ。




