【パパはどこまで陛下を愚弄(ぐろう)する?】side メルキオーア皇帝陛下 パパと陛下…♡♡
この世で、あの者だけが私を苛立たせる。
目を奪い、執着をさせ、憎悪させる。
あれが無防備に笑いを向けた先が、私以外の時には嘗て持った覚えのない感情に支配をされる。
初めて目の前に表れた、13の子供の時からずっとこの私を翻弄させる。
この帝国を統べ君臨する私を、あれだけが揺さぶる。
私は、この帝国の皇太子として産まれ落ちた時から人間に飽いていた。
帝国の絶対君主として、どの人間に接しようと心を泡だたせる感情は、未だかつて持った事もない。
此度の、西の属国の反乱を7日で収めた異彩を放つ手腕は、何よりも私を楽しませた。
サリュー·ターラン、お前だけが私に生き飽きた色のない世界に、色を佩く。
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この帝国で、近来稀に見る規模の、恩賞の式典を開く運びとなった。
7日という短い戦乱が、事の功績の大きさを見間違える阿呆もおろう。
だらだらと、無能に生きながらえる貴族らでは理解も追いつかぬのは道理。
この度の内乱が、惰性な先代の皇帝のもとで起こったのであれば、お前達《塵芥》の貴族どもは、帝国とともに消えたであろう。
私の望みは、この先もサリューを生きながらえさせ、私の横に名実共に並び立たせる景色を欲している。
マケル宰相とても、不死身ではあるまい。
あのサリューが
『帝国に忠誠を誓った過去はない。忠誠は今上皇帝にのみに誓った。』
と、どこぞで屁理屈をほざいたそうだ。
ならば、この度の恩賞は、私の欲する風景の足掛かりとする好機と得心している。
ところが、どうだ?
あれは無欲なのやら、厚顔無恥なのやら訳がわからない。
前々から、何かを与えようとすると、迷惑そうな顔を隠そうともしない。
『私は、誰だ?』と、叫ぶ不細工を抑える苦労を突きつける。
数々の発明品で帝国民を豊かな日常へと導いた功績に、領地のひとつふたつを与えようと用意すれば。
『面倒臭いので、勘弁してください。
自分以外の、領民の面倒をみるのなんて真っ平。
仕事をこれ以上はしたくありません。』
馬鹿か?本当に腹を立たせる。
家屋敷、体を休める地方の遊び場でも与えてやろうとすれば
『棺に入らないものは、後処理が大変になるので遠慮させて下さい。』
と、このまま一言一句間違いなく、ほざいた。
今回も嫌な予感はしたものの。
流石に定石通りの対応くらいは、学んで来ただろうと。
忘れていた。
あれサリューは、そのような生き物だった。
『望みのままに褒美をとらせる。申してみよ!』
『ありがとうございます陛下。
では、遠慮なく。
物品は要りません。
恩賞は今回力を尽くした将兵、部下達に賜れますようお願い申し上げます。
自分は、褒美に一回長期休暇?をとらせて頂けませんでしょうか?』
何を言い出したのやら。
この馬鹿に定石文のひとつも仕込んではおけなかったものかと、マケル宰相に目線を厳しくする。
薄くなった頭皮を抱えてため息をついておるくらいなら、この野生動物を躾けておかんか!
どいつもこいつも。
『休暇……?と?』
『はい、15からずっと働き続けておりましたら、いささか疲れて参りまして。
一度でいいから、人間のいないところで。
酷いことをされずに、仕事をしないでボーっとして過ごしてみたいんです。
それが長年の夢だったんですけれど。
お許し頂けませんでしょうか?』
夢?酷いこと?誰がだ?
この帝国中の要職要人が居並ぶ前で、それは何だ?
それならば、無人島にでも捨てて来てやろうか?
この馬鹿は!
どこまで、私を愚弄するのやら?
確かに、今日もサリューの顔色は冴えない。
今回は、かなり無理をさせた。
体を休ませる事に異存があるべくもない。
あまりの規格外れの申し様。
無欲を通り越して、何かの思惑の謀計でもめぐらせているのではないかと。
貴族どもの顔が騒がしい。
軍服で並ぶ者は『紺』『灰』どちらも、笑いを堪えて震えている。
立ち姿に乱れが多い。
この帝国で、ここまで私の思うようにならぬ者は、サリューお前以外にはおらぬ。
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「戦勝報告をするようにって、陛下変じゃないですか?
もともと、時間も変だと思っておりましたけれど。ブツブツ……」
「うるさい口は塞いでやろうか?」
「陛下、真面目に仕事をしてきたんですから。
真面目に報告を受けては頂けませんでしょうか?
普通、戦勝報告って、ちゃんと軍服を着て行いますよね。
それに、場所が寝台の上って絶対に絶対におかしいですよね。」
「ちゃんと、お聞き頂けませんか?
んっっ、陛下。」
「聞いている。好きなだけ話せ。」
「ほお、今度は黙か?何を膨ふくれているのやら?」
「ぷーーー。」
「どうした?好きに報告をしてみればいい。」
「陛下は、御立腹でいらっしゃるのでしょうか?」
「まあ、恩賞のでは、誉められたものではなかったが?」
「………」
「どうした?報告をいたしたいのであろう?」
先帝の、字面を読む事も困難な皇帝と一緒にするな。
すでに、全ての報告書は詳しく上がって来ている。
お前の仕事とあれば、一言一句見の見逃もしなく楽しんで読み込んだ後。
「陛下におかれましては、自分が派手に動き過ぎた事に御立腹でいらっしゃいますか?」
「なぜ、そう思う?」
さらりとした感触の髪をかきあげて、その顔を眺める。
整った目鼻立ちに、まるでどこぞの聖職者のような表情をみせる。
この顔をつい、羞恥と泣き顔を我慢させてみたくなる。
もうずっと、飽きもせずに。
「陛下にとってのドゥーダン提督は‘盟友’でいらしただけではなく?」
「ほお、だけではなく? 何だ?」
「いえ、そのドゥーダン提督の治めた地を、短期決戦との目的の為に四方を防御装置で閉じ込め、内部だけで、ネズミ花火を転がしましたのは、他意があっての事ではなく………んっっ、」
「他意? それで?」
「ん えっと、ですから短期で外に被害を 内側で、」
「だから?どうした?」
「その、ん
陛下が一時は情を交わされた、‘盟友’の地を。
結果自分が蹂躙するように、んっな った 事を」
「ほおお、お前は蹂躙したのか?」
「ち、ちが い ます。
あそこから、外に結びつきを、ん 後から帝国に厄介が」
「ドゥーダンが、気にかかるか?」
「ですから、いえ、ですから自分ではなく、陛下が?」
「サリュー、お前焼いておったのか?」
「はーーー?。何で?そうなるのですか。」
これはこれは、面白い。
確かに一時は ドゥーダン提督は退屈を紛らわすあてにはなった。
西の方から我が宮殿に、飛び込んで来た《蝶·獣》と同じく。
しかし、それとて代わりのきかぬものでもない。
サリュー、お前とは違う。
これは、今宵は興が乗る事だ。
うっかり、抱き潰して仕舞わぬように歯止めを効かせるのは厄介な事。
まだ、この体を使い潰してしまう訳にはいかぬ。
「陛下、俺それ本当に苦手で、本当にあの、」
嘘をつけ、この形が一番お前の良い泣き所であろう?
私から、顔がみえぬのが難点だが。
「やめて欲しいのならば、ねだってみよ!
恩賞の場では言えぬ事を上手く口にしてみせたのなら。
聞いてやらんでもない。」
「本当ですか?陛下?」
なんだ、変わり身の早い?
色気も何も吹き飛ばす様子が、どういうつもりか?
なぜ、寝台に行儀よく座ってみせる?
「あの、陛下、今回西で使用しました小型高速艇ですが。
今後は帝国軍において情報連絡の早足として活用して参りたく存じます。
のですが?」
「ですが?」
「ええと、場合によっては、職権乱用も甚だしいのですが、
自己の負担で、乗船の回数券を購入いたします事をお許し頂けませんでしょうか?」
「回数券?なんだ!それは?」
本当に、こいつは、なぜここで?なぜそれを?
子犬のように私に目を向ける?
どうせ、お前のところの本当の子犬が、帝国に帰省する足にでもしたいのであろうが?
興も何も冷める。馬鹿バカしい。
計算ではなく、これは本当に地物らしい。
流石に、長く手元において、それはわかる。




