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6-①

本編の少し後くらいの話です!

 王宮での冤罪騒動から数週間が経った。


 私は相変わらず、日々サイラス喜ばせる方法を考えて過ごしている。



「うーん、次は何をあげようかしら」


  お部屋のソファに腰かけながら、私は頭を悩ませる。


 サイラスが受け取ってくれるくらいの金額で喜んでくれそうなものは、大体あげ尽くしてしまった。


 あまり高いものをあげると遠慮して受け取ってくれないので、プレゼント選びは難しいのだ。


 けれど、私としてはまだ全然恩返ししたりない。


「サイラスが喜んでくれそうなもの……」


 百貨店から取り寄せた商品リストを見ながら頭を悩ませるが、ちっともいいアイデアが浮かんでこなかった。


「物は諦めて、またレストランにでも連れて行ってあげようかしら」


 そう考えつつ、他にもいい案はないかなと思案する。レストランもいいけれど、できればプレゼントを渡したい。


 その時、ふと思いついた。


「そうだ! 私がお料理を作ってあげるなんてどうかしら!」


 自分のアイデアにすっかり感心してしまった。


 手作りって心がこもっていてとても素敵だ。サイラスは小さい頃私があげた刺繍入りハンカチをすごく喜んでくれたし、きっと料理も喜んでくれるはず。


 うんうん、それがいいわと私はすっかりその気になる。


 問題は、私がこれまでの人生で一度も料理をしたことがないことだけど、練習すれば何とかなるだろう。



 私は早速厨房に行き、キッチンメイドたちに料理を教えてくれないか頼んだ。


 サイラスに作ってあげるために料理を覚えたいのだと伝えると、彼女たちはなぜだか目を輝かせてすぐさま了承してくれた。


「それは素敵な計画ですね!」


「お料理を作ってさしあげるなんて素晴らしいアイデアです」


「本当? そう思う?」


 メイドたちに褒められ、私は得意な気分になる。


 彼女たちはすぐさまレシピ帳を取りにいってくれた。


 それから初心者の私にも作れそうな料理をいくつか教えてくれる。


 私はレシピを眺めながら、どれが喜んでもらえそうか考えた。



「あ、このりんごのコンポートなんていいかも。この前、カフェで食べたらおいしかったわ」


「いいですね、それなら料理に慣れていなくても無理なく作れると思います」


 メイドたちはそう言いながら、手早く器具と材料を用意してくれる。


 それから簡単にやり方を説明してくれた。



「ありがとう。ここからは一人で大丈夫よ!」


「え、私たちもお手伝いしますよ?」


「ええ、下準備は私共でしますから」


 私が元気よく言うと、メイドたちは戸惑い顔になる。


「いいの! きっと時間がかかるから、みんなは戻っていいわ」


「お気になさらなくていいのに……」


「サイラスにあげるから、私一人でがんばりたいの!」


 私は勢い込んで言う。


 なるべく人に協力してもらわずに、自分の力で作りたかった。


 メイドたちはちょっと迷うような顔をしながらも、私が強引に押し切ると、それならと寮へ戻っていった。



 一人になった厨房で、私は調理器具とリンゴを前に意気込む。


「絶対おいしいコンポートを作ってあげるわ!」


 私は早速メイドたちに教わった通り、リンゴの皮を剥いて、小さく切り始めた。


 しかし切ったのはいいけれど、なんだか思っていたのと違う。


「……なんだかやけに歪つね」


 私はバラバラになったリンゴを見ながら呟く。


 皮がところどころ残っている上、形は全部バラバラだ。レシピに描いてある林檎の絵と全然違う。


「……まぁ、最初はこんなものよね。味がよければいいのよ」


 私は気を取り直して、加熱に取り掛かる。


 確か、鍋にお水と砂糖と絞ったレモンを入れて……。


「……?? これでいいのかしら??」


 私は鍋をかき混ぜながら首を傾げた。


 レシピにある時間通りにシロップを煮詰めたのに、なんだか妙にドロドロしている気がする。


 この前カフェで食べたコンポートのシロップはこんな風だっただかしら。


 迷ったけれど、このまま料理を進めればシロップもサラサラになるかもしれないと思い、リンゴを投入した。


 鍋でコトコト、歪つな形のリンゴを煮詰める。


「長く煮たほうがいいわよね。時間をかけたほうが愛情がこもっている感じがするもの!」


 私はコンポートに愛情を込めるべく、ひたすら煮続けた。


 しかし、心を込めて作ったはずのコンポートは、想像とは全く違った仕上がりになった。


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