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全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします  作者: 水谷繭
番外編3.料理

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6-③

「お嬢様、今日も遅くまで起きてらっしゃったんですか?」


 サイラスは眉根を寄せてそう尋ねてくる。


 私は笑顔でうなずいた後で、言った。


「ええ。でも目標は達成したから、今日で終わりにすると思うわ」


「そうですか? それはよかったです」


 サイラスはほっとした顔になる。


 私は続けて言った。


「実はね、さっきまでサイラスに渡すプレゼントを作っていたの。それが今日完成したのよ!」


「え、私に? それはありがとうございます」


 サイラスは顔を綻ばせる。


 それからはっとした顔になった。


「お嬢様、まさかそのために毎晩夜遅くまで起きてらっしゃったんですか……!? 手の包帯もそれで!?」


「初めて作ったから手間取っちゃったの。でも、無事完成させられたわ」


「私などのために、そこまでしてくださらなくてもよかったのに……」


 サイラスは複雑な表情でこちらを見ている。


「私がやりたかったんだからいいの。はい、これ。プレゼント」


「……ありがとうございます」


 私がコンポートの瓶の入った箱を渡すと、サイラスは遠慮がちに受け取った。



「そういえば、サイラスは何か用事だったの? 私がちゃんと寝ているか見にきただけ?」


「あ、いえ、実は私もお嬢様にお渡ししたい物がありまして……」


 サイラスはそう言いながら、先ほどから手に持っていた木箱をさしだした。


 どうやら私にくれる物だったみたいだ。


「まぁ、ありがとう! 開けてもいい?」


「はい。どうぞ開けてみてください」


 サイラスはにこやかに言う。


 私はわくわくしながら箱を開けた。


 すると、ひんやりとした空気とともに、中から瓶に入ったフルーツのようなものが出てきた。


 私はそれを見て固まってしまう。


「サイラス、これ……」


「お嬢様が毎日お疲れのようでしたので、昼間にリンゴのコンポートを作っておいたんです。よろしければお召し上がりください」


 サイラスは微笑みながらそう言った。


 私は改めて瓶を眺める。


 均一に切られたリンゴに、綺麗な透明のシロップ。どう見ても、私が作った物よりも数段上手だった。


「コ、コンポート……」


「お嬢様、前にカフェに連れていってくださったとき、リンゴのコンポートを気に入ってらっしゃいましたよね。昼間に空いた時間があったので、厨房を借りて作っておいたんです。氷魔法で作られた保冷用の箱に入れておいたので、保存に問題はないはずです」


 サイラスは笑顔で言う。


 そうだった。前にリンゴのコンポートを食べたのは、サイラスを連れていったカフェでだった。


 私は呆然としながら尋ねる。


「これを空いた時間に作ったの……?」


「はい、簡単なものですみません」


 サイラスは事も無げに言った。


 簡単、という言葉に私は愕然とした。


 私は一週間毎晩練習して、ようやくなんとか形になったばかりだというのに……!



「お嬢様、どうかなさいましたか?」


 呆然とする私にサイラスは首を傾げて尋ねてくる。


「あ、いえ、なんでもないの。これ、ありがとう……」


「いいえ。お嬢様からいただいたプレゼントも開けてみてもよろしいでしょうか」


「え、ええっと……」


 私は返答に困って視線を泳がせた。


 しかし、すでに渡してしまった後なのでどうにもできず、破れかぶれにうなずいた。

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