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全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします  作者: 水谷繭
4.広まる噂

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4-1

 その後も私は、サイラスが休日になると色んな場所に連れ回して、色んなプレゼントを贈って、楽しく過ごしていた。


 あまり高価な物を渡すと受け取ってくれないことに気づいてからは、それほど値段が高くなくてサイラスの気に入りそうな物をプレゼントすることにしている。


 始めは困り顔だったサイラスも最近は楽しそうなので、私は大変満足していた。


 パーティーに出るとまだひそひそ言われるし、近づいてくる人は以前と比べて明らかに減ったけれど、そんなことは些細なことだ。


 自由に外を歩けて、サイラスも生きていて。ほかに何を望むことがあるというのだろう。



 そうそう。先日出席した夜会でおもしろい話を聞いてしまった。


 どうやら貴族たちの間では、『公爵家のエヴェリーナ嬢は王子に婚約破棄されたショックで、美形の執事を強引に囲い込んでいる』なんて噂が流れているらしい。


 最近は時間があれば人目を気にせずサイラスを連れて出かけていたから、そんな話が広まってしまったのだろう。確かに囲い込んでいるみたいだわ、なんて思ったらおかしくなって笑ってしまった。


 サイラスにおかしな噂が流れてしまったことを謝ったら、逆にぺこぺこ謝られた。


 あんまり申し訳なさそうな顔をしているから、私と噂が流れるのは嫌か聞いてみたら、全力で否定されたので、よしとすることにする。サイラスが気にしていないならいいのだ。



 巻き戻ってからの日々は本当に楽しい。


 婚約破棄直後は嫌味を言ってくる知人も多かったけれど、私は毎日があんまり幸せだったので、彼らにも笑顔を振りまいていた。


 使用人の中にも明らかに態度の変わった者が少なくなかったけれど、彼らのことも笑って許してあげた。


 そんな風に過ごしていたからなのだろうか。いつの間にか人々の私を見る目が変わっていることに気づいた。


 パーティーに参加しても、街を歩いていても、お屋敷の中にいても、みんな見守るような穏やかな目で私を見るのだ。



 不思議に思っているとき、教えてもらった。


 それは、あるパーティー会場で少し休もうとバルコニーに出ていたときのこと。


 柵にもたれかかって空を眺めていると、伯爵令嬢のキーラがそばにやって来た。


 彼女は前回の人生で私が婚約破棄された後、仲が良かったはずの友人たちにも次々と距離を置かれていく中で、全く態度の変わらなかった貴重な人だ。


「エヴェリーナ様、今みんながエヴェリーナ様のことをどんな風に言っているか知ってます?」


「さぁ。王子に婚約破棄されたショックで執事を囲い込んでいるかわいそうな令嬢だったかしら?」


「全然違います! いえ、ちょっと前までそう言う無礼なことを言う人がいたのは否定できませんけど……。けど、今は誰もそんなこと言っていません」


「そうなの?」


「ええ! みんなエヴェリーナ様は本当は執事のサイラス様がお好きだったのに、王子と婚約しているからどうすることもできず、報われない恋をしていたんだって話してるんです。それが婚約破棄されたことでやっと心のままに振る舞えるようになったと……!」


「え? そんな話になってるの?」


「実際のところどうなんですか、エヴェリーナ様! みんな身分違いの恋って素敵よねって盛り上がってます!」


 キーラは目をキラキラさせて尋ねてくる。期待に沿えずに申し訳ないが、そういう理由ではない。ただ私はサイラスに恩返しをしたいだけだ。


「そういうのじゃないのよ。私はサイラスに幸せになって欲しいだけなの」


「まぁ、恥ずかしがらなくていいんですのよ。サイラス様といるときのエヴェリーナ様、とってもいきいきして幸せそうですわ」


「恥ずかしがっているわけじゃないんだけど……」


「そうですね、婚約者がいなくなってフリーになったとはいえ、公爵家のご令嬢が執事を愛してらっしゃるなんて気軽に言えることではありませんわね。失礼いたしました」


 彼女はうんうんうなずきながら、勝手に一人で納得している。


「でも、エヴェリーナ様はともかく、サイラス様のほうはエヴェリーナ様をお好きだと思いますよ。ずっと前から」


「え?」


「だってサイラス様のエヴェリーナ様を見つめる目、本当に愛を感じますもの。何か進展があったら教えてくださいまし!」


 そう言うと、キーラは元気に去っていった。



(いい子なんだけど思い込みが激しいのよね、あの子)


 私は息を吐いて、会場の中へ戻ることにする。キーラの思い込みには困ったものだ。


 しかし、そう思うのになぜだか妙に落ち着かなくて、顔が熱かった。キーラがおかしなことを言うせいだ。


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