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消えた兜 4

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「どういうことだ⁉ ジュリエッタが見たのは騎士の兜をかぶった男だぞ?」

「ベリンダ様は女性にしては身長がお高めですし、失礼ですけど、凹凸のない平坦な体つきをされていますから、男性に間違われてもおかしくありませんわ」

「いや、だがな」

「そう考えると、一番しっくりくるんです」

「勘か?」

「勘です」


 勘だと言い切る割にはクラリアーナは自信満々だった。

 フランシスは首を横に振った。


「ではベリンダはどこへ行ったんだ。まさか失踪したのは自作自演だというのか? 髪まで切り落として? 何のために」

「それはわかりませんわ。あくまでこれは勘ですもの。ベリンダ様が何を考えて行動したのかまでは、現段階では想像する材料もありません。ミレーユ様は何かご存知かもしれませんが、ここまで黙っていたことを考えて、彼女はベリンダ様に協力しているとみていいかもしれませんから、問い詰めたところで教えてはくださらないでしょうし、下手にこちらが勘づいていることを知られるきっかけにもなるかもしれませんから不用意に探りは入れない方がいいでしょうね」

「……違っていたらどうする」

「そうは言いますけど、騎士も使用人の誰もが犯人でない状況で、誰が陛下の部屋に侵入できたでしょうか? 外部の人間という線は低いと思いますわよ。城の外からは侵入できないように見張りを置いていますし、仮に侵入できたとして、陛下がお泊りになっている部屋を特定できた理由がわかりませんもの」

「それはまあ、確かに」


 クラリアーナは勘と言ったが、彼女なりの理論に基づいて導き出した答えのようだった。

 クラリアーナが言う通り、ベリンダは女性にしては身長が高かったし、スレンダーな体つきをしていたから、兜で顔を覆っていたら、先入観で男性だと判断しても仕方がなかったかもしれない。


 しかし、フランシスの言う通り、もし仮に騎士の兜をかぶっていたのがベリンダだとして、どうしてフランシスの部屋に侵入したりしたのだろうか。

 フランシスの部屋に押しかけて来る妃候補は大勢いたようだが、もしベリンダが彼女たちと同じようにただフランシスに近づきたいがためだったというのならば、わざわざ顔を隠す理由がどこにあったろう。

 さらに言えば、彼女がフランシスの部屋の鍵を壊したならば、鍵を壊してまで侵入して何がしたかったのか。


 フランシスに近づくためなら失踪する必要もなければ、髪を切る必要はもっとない。

 これだけわからないことずくめでベリンダを犯人としてしまうのは、証拠もないのに人を疑ってはいけないというカリスタの教えにも反することもあり、エルシーは決めつけたくはなかったが、クラリアーナはいつもこの勘に基づいて探って、大体正解を導き出しているというのだから、勘と侮るわけにもいかないようだ。

 フランシスは腕を組んで唸った。


「まあ、何もわからない以上、ジュリエッタが見たのはベリンダだったと仮定して探るだけ探ってみるが……、確認するにしてもベリンダを探し出すことができなければどうしようもないだろう?」

「それについても、作戦がございますわ」


 ふふふと笑うクラリアーナに、フランシスは嫌な顔をした。

 クラリアーナはエルシーを見て、そして言った。


「ベリンダ様を探す必要はございません。あちらから来てもらえればそれでいいのですからね」





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