表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/97

消えた兜 2

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 小一時間ほどイレイズと話をして部屋を出たあと、エルシーは庭に降りることにした。

 クラリアーナも日差しを浴びたいというので一緒に庭に向かって、真っ青な空を見上げて大きく息を吸い込む。


 エルシーとクラリアーナにつけられている騎士はそれぞれ、二人の邪魔にならないように少し離れてついて来ていた。一昨日はエルシーの部屋にはクライド副団長がつけられたが、フランシスの部屋の一件があって、彼はフランシスの護衛に戻っている。といっても、フランシスは相変わらず夜になるとこっそりエルシーの部屋にやってくるので、その際は一緒にくっついてきて、部屋の前で待機しているようだった。


(なんで毎晩部屋に来るのかしらね?)


 フランシスが当然のようにエルシーの隣で眠るから、ベッドの上のクッションの間仕切りはそのままにしてある。

 最初は驚いたダーナとドロレスも、フランシスが来ることにすっかり慣れたようだった。ただ毎朝不思議そうに、二人そろって「本当に添い寝しかなさらないのね」と首を傾げているのが、エルシーにはよくわからない。


(添い寝とも違うと思うんだけど。ただベッドを共有しているだけよ)


 エルシーは寝つきがいい方なので、意識して起きていようとしない限り、だいたい毎晩同じ時間帯に眠くなる。

 だから、一緒にベッドに横になって、ぽつりぽつりと話はするけれど、いつの間にか意識が落ちていて、気がついたら朝になっているのだ。


 エルシーは早起きなので、起きたときにはフランシスはまだ夢の中で、ダーナやドロレスが部屋にやってくるころに目を覚ましては、朝が弱いのかしばらくぼーっとして、自分の部屋に帰っていくのだ。


 情報に敏いクラリアーナはすでにそのことを知っていて、にまにましながら何があったのかを訊ねてきたけれど、ただ同じベッドで眠って朝になったら帰っていくと言えば、あきれたようにため息をついた。


 その際に「王族ってお膳立てしてやらないとだめなのかしら?」とぶつぶつ言っていたけれど、やっぱりこれもエルシーにはよくわからなかったので気に留めないでおくことにした。


 クラリアーナと散歩しながら、何気なくエルシーは礼拝堂の方へ視線を向ける。まだ立ち入り禁止だから中には入れないが、見ているだけでも気分が落ち着くのだ。


「本当に礼拝堂がお好きなのねえ」


 クラリアーナはエルシーがセアラ・ケイフォードの身代わりと知る数少ない人物だ。エルシーが修道院で育ったことも、それゆえエルシーが礼拝堂を心のよりどころにしていることも知っている。


「グランダシル神の像が壊されたんですってね。エルシー様のことだから犯人捜しをすると言うのではないかとハラハラしていましたけれど」

「本当はしたかったんですけどね」


 グランダシル神の像を壊すなんて罰当たりなことをした犯人を捕まえて反省させる気満々だったが、フランシスから礼拝堂に入ることも見張りをすることも禁止されてしまったのだ。クラリアーナの一件や、ベリンダがいなくなった件など、続けて不審なことが起きたので仕方がないが、ちょっぴり不完全燃焼の気分であるのは否めない。


「あら? あれはミレーユ様かしら」


 クラリアーナが礼拝堂から少し離れたところに立っているオレンジ色の髪の小柄な令嬢を見つけて言った。

 ミレーユは思いつめたような表情で、食い入るように礼拝堂を見つめていた。


(ミレーユ様も礼拝堂でお祈りしたかったのかしら?)


 そんな風に思っていると、クラリアーナが頬に手を当てて思案顔になる。


「エルシー様。メイドのエマは、ララと同郷なのでしたよね?」

「はい、そうですけど……」


 マリニーからエマが戦女神の呪いを恐れて怯えていると聞いたので、クラリアーナにもそのことは伝えてあった。ララもエマも早く解放してあげたかったから、クラリアーナの口添えで何とかならないかと思ったのだ。


 こればかりはクラリアーナの力をもってしても無理だそうで、やはり真犯人を捕まえるしかないという結論に至ったのだが、もしかしたらララとエマを解放する名案を思い付いたのだろうか?

 エルシーは期待を込めてクラリアーナを見つめたが、彼女は険しい顔になって、突然エルシーの手を引っ張った。


「フランシス様のもとへ参りましょう。……少し気になることができました」


 いつもの明るい声ではなく強張った声で言って、クラリアーナはエルシーの手を引いて歩きだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ