第1章 絶海孤島編 第1話 女神ティアにより転移される
どこからともなく声が聞こえてきた
「神山 創大さん、
あなたは死んではいませんよ。この世界に転移して頂きました」
どこから声が聞こえるのであろうか。
キョロキョロと周りを見るが、だれも居ない。
「フフッ、今は姿をお見せするわけにはいきませんので、
声だけでごめんなさい。」
やさしくも凛とした声である。
「突然の状況に戸惑っているかと思います。本当にごめんなさい。
まず状況を説明すると、
あなたを襲った雷は通常の雷ではありません。
スペースゲートへの転移を行う為に
地球にて不自然な現象とならないように疑似雷を発生させました」
「また一方的ですが、ソウタさんには別の世界に転移して
この世界を救って頂きたいのです。
私たちは、能力を付与する事が出来る適合者を様々な世界で
探していました。そしてソウタさんを見つけることができたのです」
そう一気に話した後、女性は一息つく。
だが、ソウタは顔も見えない、知らない単語も出てきた挙句
違う世界に転移して世界を救えなどど早すぎる展開に
理解が追い付かない。
けれども湧き上がる幾つもの疑問が頭によぎり、
とにかく質問しなければと思った。
「まず、あなたはだれですか?」
口から出た言葉に、ソウタ自身も疑った。
心の中で、他に聞くことがあるだろうと思いながら。
その声は、先ほどより優しい、そして少し微笑んでいるような声に変わる。
「私はティア。この世界の守護をしています。」
この世界の守護?
神様ということか。
「神様なのですか?それと、世界を救うとかオレには出来る力ありませんよ。
地球に帰りたいです」
とにかく帰してもらいたい一心で相手に伝える。
「神様というよりは、あなた方の世界の認識でいえば、女神にあたるかもしれません。
そしてごめんないさい。この世界の安定を図る必要があり、
あなたを必要としています。協力をしていただけないでしょうか。」
先ほどとは違い、声色が固く、
何があっても帰すことができないとわんばかりである。
それでも、自分が世界を救うことなんて出来るはずがないと思っていると、
「大丈夫です。先ほども言いましたが、私たちの能力の一旦を付与します。
その付与に対して適正がある方は、様々な世界の中であなたしかいないのです。
その力を正しく使えば、世界を救うことも可能です。」
と頭で考えている内容に対して返答があった。
驚いているソウタを見て
「ごめんなさい。あなたの心の声も私にはきこえてしまうのです。
盗み聞きするつもりはないのですが聞こえてしまうのです。」
と申し訳なさそうにティアなる女神が伝える。
突然そんなことを言われても困ると思いながら暫く考える。
そして、暫く静かな時間はすぎ、
ソウタは一種の諦めに心境になり、ティアに言う。
「トンデモな状況なので、理解しきれませんが、
死んだと思っていましたので、その点は安心しました。
帰ることも出来ないようですし、自分が出来るか分かりませんが、
頑張ってみます。」
そう答えると、ティアの声が明らかに明るくなり、
「ありがとうございます。ソウタさん。本当に助かります。
この世界を救っていただける方は、もうソウタさんしかしないので」
と声が弾んでいる。
そこでソウタは返答する
「ただし、一点条件があります」
ティアは少し驚くも
「どんな条件でしょうか」
と答える。
「この世界を何から救うのか分かりませんが、
死ぬのは怖いので、なるべく死なないような能力を頂きたいです」
ソウタは、今までのやり取りから死ぬ可能性が高いのではと思い、
不安げな気持ちでティアに言う。
「わかりました。ではソウタさんには別途、身体強化と精神強化を付与します。
それでよいですか」
ティアは優しい声色で語り掛ける
正直、不安の方が大きいが、
「はい、ありがとうございます。それで能力の一旦とはどんな能力なのですか?」
と続けて質問を行う。
「あ、そうでしたね。まだ説明していなかったですね。
ソウタさんに付与する能力は、【創造】という能力となります。
この能力は、言葉そのままに全ての理を創造し、具現化する能力となります。
本当は少し違うのですが、地球でいうところで、魔法の様な能力です。」
ソウタは、心が弾んだ。なぜなら魔法と聞こえたからである。
「魔法が使えるようになるのですか。
火とか、水をだせるようになる感じですか?」
「ええ、そうです。
【創造】は、理を作ることも出来ますが、非常に高度な為、
まずは、すでにある事象や物体を具現化するところから練習して下さいね。
使い方は、具現化したい内容を正確に理解し、
そして頭で具体的に想像しながら体の外に放出する形です」
心が躍る。
まるで、アニメの世界に入り込んだ気分である。
いち早く、魔法を使ってみたい。
ティアが続ける。
「使い方などは、ソウタさんのみ見る事が出来る本を渡ししますので、
それを読みながら、練習して下さいね。
そして今後のことですが、
この目の前にある星の無人島に住んでいただきます。
周囲100kmは全て海の絶海孤島です。
但し、島の面積は非常に大きく温暖な気候の島となります。
そこでお渡しする本の課題を全て達成するまで
住んで頂き、修行を行ってください。
魔物や強い動物たちも居ますので、安心出来ませんが、
家には結界を張っていますので、無茶をしなければ、死ぬことはないでしょう。」
ソウタは少しドキッとしながらも
真剣に言葉を聞く。
「家には、生活できるだけの食料を置いておきます。
また、自動で毎日補充されるようにしておきます。
お渡しする本の1ページごとを達成すれば、
食材が増えていくようにしておきますね。
そうすれば頑張る目的も出来ますしね。」
と少し微笑んだ声になる。
鼻先のニンジンだなと冷静に考えていると、
「ソウタさんはニンジンが好きなのですか?」
とティアが聞いてきた。
「あ、心の声も聞こえるんでしたね。
いえ、地球の比喩でして、馬が早く走れるようにすることを意味しています」
と答える。
「あ、意味が分かりました。結果的にそうですね。フフッ
でもソウタさんが早く能力を使いこなしてほしいのです。
この世界を救うためにも」
そこで、疑問がわく。
そもそも何から世界を救うのであろうか。
「すいません。何から世界を救うのでしょうか。
それを理解していないと、救えないので」と
ソウタは心が読まれるので、率直に質問する。
「ごめんなさい。それはまずは自分の目で見てほしいのです。
能力がある程度使えるようになった際には、ちゃんとお話ししますので、
そこまでは、自らの目や耳で判断して欲しいのです」
とティアは初めて歯切れが悪い言い方をしてくる。
「そろそろ、ソウタさんとお話しできる時間が少なくなってきたので、
最後にもう一つ、お伝えしておきます。
家に書庫を作成しています。
地球の文献やこの世界の書物など、必要となる情報は全て揃っていますので、
活用してくださいね。
そしてお渡しする本の課題を全て達成するまでは
島を出ないでください。死ぬ危険性が高まりますので。」
そういうと、
どこからともなく光が差し込み体に当たる。
ソウタがまだ質問があると言おうとすると、
「ソウタさん、あなたに次に会うときはちゃんと姿を現しますので、
その時まで期待していてくださいね」
とティアが今まで聞いた中で最も甘い声色でささやく。
「それでは、家まで高速で移動して頂きますが、
安心して景色を眺めていてください」
ティアがそう言うと、
体が勝手に動き出し、その星に向かい始めた。
徐々に速度が上がり、星の中に突入していく。
ソウタは声をあげたくてもあげれない。
スカイダイビングの宇宙版である。
そして見る見るうちに進んでいき
海が見えてきた。
そして、小さな点が徐々に大きくなる。
島が見えてきたのである。
島といえども、かなり大きいのではと思いながら見てみると
確かに周囲には海以外何も見えない。
はるか彼方には大陸が見えるが、
かなり遠いことがわかる。
そして地表が近づいてきた。
あれ、どうやったらとまるんだろ、このままじゃぶつかる
と思った瞬間。
再度、雷が発生し、目の前が真っ白になった。