表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

シャッカルの日

作者: MANA

前回の続き。


日本の沼で起きた事件は、ローカルニュースでも報道されなかった。


理由は2つ。


まず、もともと人口が少ない地域で、沼で釣りをする人は若干名。


近くの人たちだけ。


釣れるのはフナくらい。


地域に与える影響は皆無に近かった。


次に、検出された毒物が未知の物質であること。


マスコミが大きく報道すると、かなりの影響が懸念される。


警察の記者クラブではいっさい公表されず、


事件の捜査に関係する警察官や技師には、厳重な箝口令が敷かれた。


さて、第2次大戦の当時国の1つだった、ある国。


毎年、終戦の日に恒例の行事が。


戦没者追悼式。


国家元首である大統領が戦没者墓地を訪れて、


墓の1つに献花して祈る。


今年も例年通りに行われた。


その国では、近年に複数回のテロが起きているため、


警備は厳重だった。


大統領が献花して祈っているときに、


小枝をくわえたスズメが飛んで来て、


大統領の頭にその小枝を落とした。


祈りが済んだ元首は手で頭の小枝を払い落とし、


表情を変えずに帰路についた。


その日の深夜。


大統領官邸から衝撃的なニュースが。


その国の全土と、海外の領土に臨時ニュースが流された。


「大統領が病院に搬送された」


結局、官邸の主は・・


棺に納められて「帰宅」


政治家になる前は陸軍の将校で、


体力があり、きわめて健康。


死因は「急性心不全」と発表されたが、


さまざまな憶測が流れた。


戦没者追悼式は、国営のテレビとラジオで中継されており、


多くの国民が放送に接した。


大統領が搬送された病院の院長室では、


副大統領も加わった極秘の会議が開かれた。


「何かの毒物や病原体が検出されたのですか?」


医師たちはしばらく沈黙したが、


死因を「特定」した医師が静かに語った。


「毒物が見つかりましたが、これまでにない物質です」


「解毒はできなかった?」


「残念ながら、現時点では不可能です」


「大統領はいつも通りに公務を執行していたので、


毒物が体内に入ったことは考えられない」


「食事やお酒などは?」


「ほとんど官邸で取っている。酒は外国の要人が来たときに、晩餐会で少し飲む程度です」


国営テレビのビデオ編集室では、


戦没者追悼式で撮影していたカメラマンと、上司のディレクターが影像を繰り返し見ていた。


「スズメと小枝は関係ないよな」


その国の警察本部では、「念のため小枝を探して確保せよ」


ところが、式の後でかなりの強風が続き、


スズメが落とした小枝の特定はできなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ