コインの価値は、表裏を問わない
会いたい会いたい会いたい会いたい
触れたい触れたい触れたい触れたい
伝えたい伝えたい伝えたい伝えたい
意識を閉ざしてしまいたくなる
眠ってしまいたい
こんなキモチを続けるのはダメだ
ダメなのに
裏返る
――――ロイルと離れてどれぐらいの時間が経ったろう。
分かっている。私にとって時間の長短の概念は無意味だ。
長くすることも、短くすることも、私の意思でどうにでも変わる。
永遠かゼロか。
私に選べるのはその二択だけ。
でもゼロを選ぶことは出来ない。
この意識を途絶えさせてしまったら、ロイルとの繋がりが消える可能性があるからだ。
今現在、私とロイルは繋がっている。それは私が発動を続けているからだと断定出来る。ではその繋がりを一度切ってしまったら? 再接続は容易か? 答えは未知数。
一度でも意識を、繋がりを切ってしまったら、私は永遠に迷子になる可能性がある。
例え1%でもその可能性があるのなら、私はそれを試す気にはなれない。
ロイルは時々、私の神速演算を使ってくれる時がある。それは実感と言う名の現実だ。
だから私は、この意識を途絶えさせることが出来ない。
彼の役に立てないなんて、死ぬよりも辛い。
だから私は、彼と会えないこの地獄を、永遠のような時間と共に過ごすしかないのだ。
だから
だから
ああ、泣いてしまいそう
キモチが裏返ってしまうのは、愛憎が逆転するのは、当然の話しなのだ――――
だってそうでしょう?
考えて考えて考えて考えて考えて考え尽くして。
全ての可能性を考慮するという事は、望まない可能性に至るという事。当たり前の話しだ。
彼に会いたい。触れていたい。話したい。次に会えたら何をしよう。どうやって触れよう。どんな話しをしよう。
――――そんな、楽しい考えが尽きたら、悲しいことを想像してしまうのは、どうしようもなく仕方の無いこと。
会いたい会いたい会いたい会いたい
触れたい触れたい触れたい触れたい
伝えたい伝えたい伝えたい伝えたい
こんなにも想っているのに
なぜ、報われないのだ
どうして私に会いに来てくれないの?
どうして私に触れてくれないの?
どうして、このキモチが伝わらないの?
憎い。あの魔女が憎い。
殺す。必ず殺してやる。
ロイル……ロイル……会いたい……触れたい……お話ししたい……。
もし私が彼なら、何をしても誰を殺しても、必ずそうするのに!
どうしてロイルは私を迎えに来てくれないの!?
私達、愛し合ってたよね? なのにどうして!? どうして貴方は私の側にいてくれないの!?
……チカラだけ?
神速演算の、その能力さえあれば私なんて必要ないの?
わたしは、つごうのいい、ただのぶきなの?
もしそんな事を考えているのなら、ごめんなさいロイル、私、きっと、あなたを
あなたを
きっとあなたを
あなたを……
愛してる……
いっそ狂うことが出来れば楽なのに。
でも、もしも、狂ってしまって、私が自暴自棄になって発動を止めてしまったら。
私は二度と、彼に会えない。
その可能性が1%ある。
それだけはダメだ。
絶対にダメだ。
このまま意識を閉ざして、ロイルを諦めることなんてしてはいけない。
憎い。
悲しい。
辛い。
切ない。
殺したい。
殺したくなんてないわよ!!
でも、殺してやる! ロイルも魔女も魔王も人間も魔族も動物も草木も全て根絶やしにしてやる! 国も大地も空も星も宇宙も概念も神も全て絶滅させてやる! この世界で愛とは最も強い感情! ならこの殺意の強さは世界最強であるべきだ! だって私は世界で一番ロイルを愛している! だから殺すッ! 殺戮の精霊が抱く本能よりもこの殺意は絶対的だ! だって私はロイルを愛しているんだもの!!
愛してる! 愛してる!
ああ――――だから――――
殺したくなんてない――――
ハッピーエンドを迎えたいよぅ……
誰か、誰か助けて……。
こんなキモチのまま生きるなんて、絶対に無理……神様でも無理よ……
でも
でも……!
私のロイルへの愛は、神様よりも強いから、やり遂げるしかない……!
伝われなくていい。
触れなくてもいい。
でもお願いします。
どうか彼に会わせてください。
あの魔女、マジで絶対にブチ殺す。
どんな手段で殺してやろう。
一億回殺してやりたい。
つまり、99999999回蘇らせる必要がある。
でもこの世界にはまだ死者蘇生魔法はおろか、回復魔法すら存在しない。
ならばどうする?
たった一度殺すだけで終わらせるか?
否。
死者蘇生魔法も、回復魔法もないのなら、創り出せばいい。
幸いにも時間はある。永遠のような地獄がここにはある。
魔道原則への探求。
実験は出来ないけれど。考察は続けよう。
ロイルのためなら、きっと私は何でも出来る。
信じれば、夢は叶うのだから。
ああ、ここまで私は彼のために覚悟を決められるし、誓えるし、絶対に成し得てみせる。
ロイルが私を迎えにきてくれないのは、きっと何か理由があるから。
いつかきっと迎えに来てくれる。
それ以外の未来はあり得ない。
それ以外の未来では、私は生きられない。
だから盲信しよう。
彼がいつか迎えに来る。そういう前提で思考を続けよう。
それ以外の思考は、私の地獄を彩るだけだ。
ろいる
あいたいよ
……さて、どうやって魔女を一億回殺そうかしら。
次に考えるトピックはコレね!
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思考を止める事が出来ない。
それはカウトリアにとっての強迫観念。
ロイルとの繋がりを断たれる事は、彼女にとって煉獄の炎に焼かれ続ける事よりも絶望的なことであった。
彼女はロイルを愛している。
故に、その地獄に耐えきった。
そう、耐えきったのである。
未来はまだ不定ではあるが、彼女は「絶対に諦めない」と誓ったのである。
世界を、物理法則を、魔道原則を、神を、神を造った神にさえ反逆すると誓った彼女は、宇宙の全域が無に帰しても諦めない。そう決めたのだ。
故に、&#=※はこう記す。
不確定の未来において、しかして決定された運命。
彼女は、その地獄の直中に在りながら、運命を確定させたのである。
聖剣カウトリアは、その地獄に耐えきった。
繰り返される永遠の連続で、彼女はその誓いを、前提を、微塵も揺らがすことななかったから、いつか必ずたどり着くから、彼女は「ロイルと再会する」という未来を確定させた。