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27.9 「一瞬の後の五秒」
だけどいつまで経っても斬撃はふってこない。
想った”一瞬”の数十倍の時間が流れる。
来ない。
いつまで経っても、死なない。
もしかしてわたしもカウトリアみたいな能力が芽生えたのかな?
追い詰められて、魔王としての要らない才能がまた一つ生まれてしまったのかな? それとも?
本当にそんなものいらないのに。
三秒ほど、わたしなりに一生懸命考えたけど、答えなんて出ない。
あんまりにも何も起きないので、夢かと思った。そんなはず絶対ないのに。
そして、段々と怖くなった。
そして相対的に、わたしは「死ぬことは怖くない」って事に気がついた。
怖いことは、他のことだ。
「う、うぅ……」
たまらない。
わたしは恐る恐る眼を開けるた。
そしたら、すごく近い距離で、彼がわたしを見つめていた。