27.5 「一瞬」
『将来に期待だな』
『話し相手になってくれよ』
『お前の名前は、俺がつけてやるよ』
『寿命が来るまで楽しく生きてやる』
『……成長しても、俺を殺すなよ?』
『食った後にすぐ泳いだら、死ぬぞ』
『俺の鳥肉はドコだ?』
『綺麗でカッコイイ花だ』
『アレは美味い。かなり美味いし、すごく美味いぞ』
『ところで引っ越そうと思うんだが』
『生後数ヶ月程度のくせにもう悟ったか』
『ところで、斧とかも造って欲しいんだけど』
『紹介しよう。魔族のカルンだ』
『フェトラス。引っ越すぞ』
『今日からは別々で寝るからだ』
『今日も食え! 食って遊んで、たくさん寝ろ!』
『これはルールじゃなくて、マナーの問題だ』
『ここが、魔王という存在の位置だ』
『いつか……連れて行くよ』
『干し肉は幼き頃のお前が全部食ったわッ!』
『お前は、俺の大切な娘だよ』
『そうだな。でも、とりあえずこの言葉だけは覚えておけ。命は、みんな一つしか持っていない。そして一つの命を繋ぐにはたくさんの命がいるんだ』
『正義がどこにあるのか……という点だ』
『聞け、フェトラス! ああするしかなかった!』
『俺の言葉とカルンの言葉。どちらを信じるかはお前次第だ。だが一つだけ言わせてくれ。俺を信じろ』
『俺が可哀相な一人ぼっちだから、誰かを求めたのさ』
『そいつが幸せなら、俺も幸せなんだ。だから俺はフェトラスを幸せにしたいんだ』
『そいつはな、魔王様なんて名前じゃない』
『そいつはフェトラス。…………俺の娘だ』
『かかってこい―――フェトラス!!』
『お前はフェトラスだ。そして、俺の大切な娘』
イメージを伴った音声。
走馬燈って、こういうのかな……。
あはは、お父さんしか出てこないや。
頭の中を駆け回る記憶。わたしの人生。
目を開ければきっと斬撃。
振り下ろされる死。止まらない魔法。
わたしの“一瞬”じゃコレが限界。
伝えるヒマが無いのが残念……いや、無念だ。
さようなら。
大好きな、お父さん。