エクイア・セッツ
大通りのざわめきが高まっていく。
先程リンゴを切った時とは完全に異なる種類の視線。それは戸惑い、猜疑心、不安。全てが恐怖に集約する、ネガティブな感情類。
月眼が現れた、と叫ばれてしまえばこうなるのも当然か。
「え、えっと」
瞬時に月眼を鎮めたフェトラスだったが、紫色したおばちゃんは腰を抜かしており、顔からは血の気が完全に引いていた。
「ひ、ひぇぇぇ……エクイア様ぁ……た、助けて……」
「あー」
そのおばちゃんの様子を見て周囲はさらに引いていく。代わりに視線は集まっていく。
(……よし! どうしようもない!)
フェトラスは両手を挙げて、おばちゃんから距離を取るために通りのど真ん中に立った。
禁則事項は既に破った。序列的には一番最下位のヤツだけど、破ってしまったからには仕方が無い。
というか。
(魔王だとバレたってことは、イコールで『魔法が使える』と思われるって事だよね)
なんということだ。序列最下位だけじゃなく、最上位も既に破ったようなものだ。
(っていうかこの順番、悪意しか無いよね!? 一番破るなって言われたヤツと『まぁ出来れば守れよ』みたいなテンションで言われたルールがほとんど同じだなんて!)
やりがやったなロキアス、という逆恨みをしつつフェトラスは両手を挙げ続けた。
「何してんだあの女の子?」
「いや俺もよく分からんが、なんかみんなザワついてるよな」
「……月眼らしいぜ、あの子」
「…………は!?」
「おい誰かエクイア様呼んでこい!」
本当にこの街の住人は、良い人ばかりなのだろう。
誰も彼もが「あの子は月眼だ」というざわめきを信じて、どんどん拡大していく。嘘だろ、冗談だろ、なんて誰も口にせず、ただ最高速度で危機感が共有されていく。
しかし強い恐怖はあれど、大規模なパニックになることはなかった。全速力で逃げ出したり、泣き叫んだり、武器や敵意を向けてくる人がいない。
それはある意味で、エクイアがこの世界において愛されているという証拠でもあるのだろう。
この世界にはエクイア以外に魔王がいない。
そして月眼といえば最強の力を誇るが、住人達が知っている「最強の力」とはイコールでエクイアのことでしかない。
『あの女の子は、エクイア様と同じなのか?』
跳ね上がった恐怖の感情だったが、やがてそれは「不安」という規模の小さいモノに置き換えられていく。
何しろフェトラスは両手を挙げてジッとしているのだ。慌てず騒がず、ただ降参のポーズを続けている。
そんな事情で、住人達が恐慌状態に陥ることはなかった。
やがてフェトラスは苦笑いを浮かべて、腰を抜かしてるおばちゃんに話しかけた。
「ごめんおばちゃん。ビックリさせちゃったよね。……ほんとごめん。でも酷い事は絶対にしないから、早く旦那さんの所に行って」
「あ、あんた……」
「私はエクイアさんがココに来るまでこうしてジッとしておくからさ。……って言っても信じられないだろうし、正直エクイアさんが襲ってきたら私も応戦せざるを得ない。だから危ない状況になる前に、早く逃げて?」
「…………」
やがておばちゃんはゆっくりと立ち上がった。
「…………ああ、みっともない所をみせたね」
それは気丈な喋り方だった。
お父さんと世界平和のために活動していると、極稀に月眼であることがバレたりする事があったのだが、このスピードで平静を取り戻した人物は皆無だ。
「――――昔の話だけどさ、私が一般人に正体バレた時は、みんなその場で気絶してたよ。そう考えるとおばちゃんは凄い。ものすごく凄い」
「…………そうかい」
おばちゃんは逃げなかった。軒先にあった椅子に座り直してため息をつく。
「逆に騒ぎ立てて悪かったね」
「なんでおばちゃんが謝るのさ」
「いやアンタ何もしてないじゃないか。ただリンゴを売って、愛する人のことを語っただけ」
まだおばちゃんは小さく震えていた。だけど、健気な笑顔を浮かべてみせる。
「それにエクイア様がもうすぐ来てくれるはずだ。だから、何も怖くなんてない」
その言葉を耳にして、フェトラスは初めて本当の意味で「エクイア・セッツに会ってみたい」と思った。
単なる月眼の魔王としてではなく。
色んな人から愛されているであろうエクイア本人に対し、興味を抱いたのであった。
状況発生から五分後。
突然、大通りにいた人々がゾロゾロと道の端っこの方に寄り始めた。
「え。みんなどうしたの?」
「エクイア様が来るよ」
それは完全に訓練された動きだった。
まるで王様の馬車が通る寸前のように、人々は壁になる。
フェトラスは何となく視線を大通りの奥の方に向けた。
もしかして走ってくるのだろうか。そういえばエクイア・セッツの魔王としての属性は『隔絶』だったっけ。あまり飛行には向いてないのかもしれない。
空を飛ぶ魔法は難しいけれど、月眼なら可能だろうに。
そんな事を思いながら、両手を挙げながら、フェトラスは視線を通りの果てに向け続けた。
するとフッと風が吹いたような気がして――――。
[貴女はだぁれ?]
それは背後、そして耳元から聞こえてきた、囁き声だった。
[見たことない人だわ。どうやってこの楽園に入り込んだのかしら]
一瞬で背中を取られていた。そして今もなお、その声の主は様々な感情を込めてフェトラスに問いかける。
[街に異変が起きたと思って慌てて来てみれば、想定外のお客様がいらっしゃるじゃない。もう一度問うわね。――――貴女は、誰?]
フェトラスの心臓が壊れたように高鳴る。汗が噴き出して、歯がガチガチと震えそうになる。
だが臨戦態勢は取らない。ただひたすらに「降参」のポーズを続ける。
恐怖。
(ああそうか。怖いって、こういう感情だった)
私の背後に立つのは、とてつもない強者だ。
シンプルに身の危険を感じたフェトラスはゆっくりと息を吸って声を発した。
「えっと……初めまして。私の名前はフェトラスです。戦うつもりはありませんし、この楽園をどうにかする気も一切ありません」
[こんにちはフェトラス。私の名はエクイア。よろしくね? すぐにお別れする事になるだろうけど]
そりゃ背後からこんなプレッシャーを放つくらいだから月眼、つまりはエクイアだろう。なんて当たり前のことを思いながらフェトラスはツバを「ごくり」と飲み込んだ。
[それで貴女は、一体何をしにここへやって来たのかしら]
「――――カミサマとロキアスから許可が出たので見学しに来ました」
用意していたセリフを、はっきりと告げる。
すると背後に立っていたであろうエクイアはゆっくりと動き、フェトラスの眼前に改めて立ち塞がった。
[へぇ……彼等から許可、ねぇ…………]
恐怖で固まっていたフェトラスだったが、目の前に立ったエクイアを見てポカンと口を開けた。
「わぁ」
[?]
「今まで見てきたヒトの中で、一番綺麗」
[――――あら。どうもありがとう]
褒めるとかおだてるとかではない。それはただの感想だった。
ぱっちりと開いた月色の瞳。
薄い翠色の髪は綺麗にまとめられていて、まるで宝石のように輝いていた。
滑らかな肌質は、ほとんど陶器のようだ。不自然なくらいにピカピカなのだが、それがあまりにも美しいのだから仕方が無い。美しいものは美しいのだ。
フェトラスよりも背が高く、細身だが様々な部分のバランスが極めて整っている。
身に纏っているのは可愛らしくも上品な象牙色のワンピース。ついでにアクセサリーもいくつか身につけていた。ぴっかぴかの新品というわけではないが、彼女にとても似合っているネックレスとブレスレット。
そんなエクイアを見て、思わずフェトラスは謝罪した。
「ごめんなさい……。もしかしてデートの途中でした?」
[……どういうことかしら?]
「だってすっごくオシャレしてるから……デート中だったら本当に申し訳ないなぁ、って……」
[いえ、別にこれは普段着なのだけれども]
「本当? すごいなぁ。わたしオシャレなんて普段は全然しないで精霊服に頼りきりだから……」
――――恐怖は引き続き、ある。
だがフェトラスは「それはそれとして」と口を開き続けた。
どうせ尋問されるのなら、自分から自己紹介したいから、喋り続けた。
「えっとエクイアさん。とりあえずどこかでゆっくりとお話し出来ませんか? ここだとみんなの邪魔になるだろうし……」
[会話の必要性があるのかしら。貴女がここへ何をしに来たのかは知らないけれど、私の楽園に貴女は必要無い。即刻たたき出すだけよ]
「うう、一応カミサマとロキアスさんから許可もらってるんです……」
[そう。何気にそこが一番腹立たしいのよね……見学の許可ですって?]
美しいエクイアの表情が酷薄に歪む。
[そんな許可を、私は出した覚えが無いのよ]
「……そりゃそうですね!」
クッ、とフェトラスは歯ぎしりをした。
「確かに仰る通りです。本当にエクイアさんの言う通りだ。ここはエクイアさんの楽園なのに、カミサマはとにかくロキアスの許可なんているわけない。なんだロキアスあの野郎。偉そうにしやがって。……というか、また騙されて、ついでに呑気に踊らされていた自分が一番情けない…………」
[………………]
「ごめんなさい。すぐに出て行きます。お邪魔しました……って言ったら許してくれますか?」
[………………]
「そ、それとも……あの……一応、戦うとか……?」
[………………]
「でしたらここじゃなくて、それこそ月眼の間とかでやりません? ここのみんなに迷惑かかっちゃうし」
[………………]
「うう、何とか言ってよぉ……」
[もう一度名乗りなさい。こんどは詳しく正確に]
そう言われてフェトラスは両手を挙げたまま、ぺこりと頭を下げた。
「十三代目の月眼。極虹の魔王フェトラスです。新人ですが頑張りますので、どうかよろしくお願いします」
まるでバイトに入った初日の挨拶のようだと、エクイアは思ったのであった。
[おかしなマネをしたら殺すわ]と言われつつ、フェトラスはエクイア(背後に立ったまま)に案内されて彼女の城へと向かった。
それはそこそこ大きな城だった。
にじみ出ているのは古さではなく「威厳」であり、手入れがよく行き届いているように見える。
[人払いを。この城を完全に無人にしなさい]
「ハッ! かしこまりましたエクイア様!」
駐在していたのであろう兵士に向かってエクイアが命令すると、彼は慌てることも問いただすこともなく命令を受領。すぐさま行動が開始された。大きな鐘が特定のリズムで鳴らされ、あっと言う間に色んなヒト(魔族も含む)が出て行った。
「おお……なんてスムーズな……」
[さ、進みなさい。そこの大きな階段を上って]
「はい」
背後に立ったエクイアからの指示にフェトラスも大人しく従う。何も言われていないので、ひたすらに両手を挙げたまま。
(でも攻撃とかもされてないし、拘束すらもないんだよなぁ……精神系の魔法の一発や二発は食らう覚悟だったんだけど……)
それはエクイアの自信なのだろうか。新人如きには負けないということ?
だがどっちにせよ背後から放たれているプレッシャーは相変わらず凶悪だ。どうせ戦うつもりは無いし、お話ししてくれるのなら何でもいいやとフェトラスは歩き続けた。
いくつかの分岐を超えて、やがては大きな扉。
そこを開くと、そこそこ広い空間が広がっていた。採光のための窓があり、赤いカーペットが通路のど真ん中にしかれていて、その果てには玉座が見えた。
「ここは?」
[年に一度ぐらいしか使わない謁見の間よ。まぁ儀式的なことでしか使わないわね]
そう言ってようやくエクイアはフェトラスの前に立った。そのままじっと見つめられる。
[…………]
「え、ええと……なんでしょうか……」
[……まぁいいわ]
コツコツと、カーペットに足音を吸われながらエクイアは玉座に向かって歩き出す。
その無防備な背中を見てフェトラスは「うわぁ、高いヒール……歩く姿が超綺麗……今度わたしもヒール履いてみようかな……」なんて呟いた。
そしてようやくエクイアは玉座に腰を降ろした。
立ち呆けたままのフェトラスに向かって、苦笑いを浮かべる。
[…………いつまでそうしているつもり?]
「あっ、これは失礼しました」
言われてすぐさまフェトラスは跪く。
すると、エクイアはとても楽しそうに笑ってみせた。
[フフッ……ふふふふ……な、なんで跪くのよ]
「え。だってここ謁見の間でしょう? あなたが王様で、わたしは部外者だし……」
[私が言ったのは、いつまでバンザイしてるのかって事だったのだけれども]
「あー」
指摘を受けたフェトラスの顔が、照れで少し赤くなる。それを見たエクイアは再び「ふふっ」と笑った。
[……貴女、さてはちょっと良い子ね?]
「いやいやとんでもない。ただの不法侵入者ですごめんなさい」
[あっはっはっは!]
ようやくエクイアは緊張が解けたかのように両手を叩いて笑った。
[どうやら本当に無害そうね。あー、いやだわ。緊張した。本当に止めてよね。なんでいきなり月眼が来たのかって焦ってたんだから]
「本当にすいません。まずはお手紙なり何なり出すべきでした」
[もし外から手紙が来たとしても、私は読まずに捨てていたでしょうね]
それは確信を伴った言葉だった。
[ここにはもう、他に必要なモノなんて無いのだから]
楽園に住まう月眼の魔王はそう言って、玉座に肩肘をつきながら片手を差し出した。
[さぁて、貴女の希望通り……お話しでもしましょうか?]
とりあえず跪いたまま、フェトラスは再び口上を述べる。
十三代目です。フェトラスです。カミサマとロキアスに騙されてここに送られました。でも悪いのは扉を開けてここに来たわたし自身です。ごめんなさい。
改めての説明だったのだが、今度はエクイアがそれに反応を示した。
[貴女は……何の魔王なの?]
「虹の精霊由来の、極虹です。昼夜を問わず空に輝く的な」
[ずいぶんとお美しい属性なのね?]
「エクイアさんに褒められると、なんかモゾモゾするなぁ……あなたの方がずっとずっと綺麗だよ」
[お上手ね]
そこまで喋ってから、フェトラスは「はっ!?」と声を漏らした。
禁則事項③エクイアに意見するな。常に肯定しろ。
エクイア「美しいのね」
わたし 「そんなことないッスよ」
これは、見方によっては彼女の意見を否定しているのでは?
(またやっちゃった!?)とフェトラスは慌てたが、エクイアは上機嫌のままだった。
[それで? 何をしにここへ来たの?]
どうやらセーフらしい。だがうっかり禁則事項のことを忘れていた。もう破ったしどうでもいいやって思ってたせいかな。
(し、慎重にやらないと。会話は成立してるけど、エクイアさん超強そう)
ロキアスは「フェトラスなら勝てると思う」って言ってたけど、これは無理っぽい。勝てるわけがない。しかもパートナーから応援されると五百倍とかもう意味が分からない。
とりあえずフェトラスは会話を続けるために必死に頭をまわした。
「えと、本当にただの見学です。ロキアスさんから『エクイアの楽園はとても良い所だから見てくるといい』って言われて、興味がわきました……」
[私の楽園について語るとか、あの変態は何様なのかしら……]
「へんたい?」
[ロキアスよ。どこからどう見ても変態でしょう? 盗み見ばっかりして]
「確かに」(全力の肯定)
[まぁそんな変態に踊らされて本当にこの楽園に突撃してくる貴女も相当に大概だけど……それで? 見学って言ってたけど具体的に何を見学しにきたの?]
「具体的って言われると難しいけど……結婚の魔王エクイア・セッツ。あなたの愛は、私の知ってる愛とよく似ている気がしたから」
[へぇ……貴女は何を愛したのかしら]
「ロイルという人間です」
そう答えると、エクイアの目がスッと細くなった。
[……人間を?]
「はい。すごくすごく素敵な人です」
[まぁ……]
エクイアは驚きの表情を浮かべて、やがては嬉しそうに破顔した。
[それは素晴らしいわ! 貴女も魔王の身でありながら、結婚したのね!]
「……しました!」
いつか必ずするのだから、したと言っても問題ない。
過去において絶対に遂行すると誓って、それを必ず実現するのだから「もう結婚したわ」と言っても問題無い。ロキアスさんはこれを『カウトリア理論』と呼んでいた。
玉座からエクイアは立ち上がり、まるでスキップしそうな足取りでフェトラスに近づく。
[まぁ、まぁ、それは素晴らしいわ。極虹の魔王。貴女は現象系の属性なのに、私と同じ選択が出来たのね。ええ、ええ、本当に素晴らしいわ。尊いわ]
近づいてきたエクイアに「よしよし」と頭をなでられる。
[ああ、なんて素敵な日なの。まさから外からこんなに素晴らしいモノが届くだなんて。思ってもみなかった。貴女だからこそ、あの変態もここを紹介したのね]
「そうだと思います。本当に、何度も『素敵な楽園だよ』って言ってました」
[あの変態もたまには良い仕事するじゃない。……あら? でも待って?]
「なんでしょう?」
[だとしたら、どうして貴女は極虹の魔王を名乗っているの? それは貴女が生まれ持った属性であって、勝ち取った資質ではないでしょう?]
ややこしいが、魔王という存在には複数の呼び名が存在する。
受肉した殺戮の精霊・魔王・銀眼・月眼。持って生まれた属性と、それを冠する二つ名。そして魔王は月眼に至った時、その身に刻んだ『自分の愛』を己の肩書きにしがちだ。
目の前に居る隔絶の魔王が、結婚の魔王を名乗るように。
フェトラスで例えるなら彼女は「ロイルの娘」として生きてきた。だが今や彼女の肩書きはそれに留まらず、大半の者にとって彼女は「料理人フェトラス」になっている。魔王達の自己命名はそれに近い。
フェトラスは自然な笑みを浮かべて、こう答えた。
「変える必要が無かったんです。わたしの愛した人が、そのままのわたしを愛してくれたから……だからわたしは、わたしのままで良かったんです」
[まぁ……! ただの人間が、殺戮の精霊である魔王に対してそんな風にふるまえたの?]
「色々あったんです」
[聞きたい。聞きたいわフェトラス。あなたの結婚がどんな物語だったのかを]
「……喜んで!」
本当は結婚してないけど。
でも、お父さんのことを聞いてくれるというのなら、それはもちろん語りたい。
そして出来るなら、エクイアさんの話しも聞いてみたい。
良かった。禁則事項を速攻で破った時は「終わった」と思ったけど、どうやらここを訪れた価値は十二分にあるようだ。
エクイアに手を取られ、フェトラスは立ち上がる。
[行きましょう。こんな殺風景なところじゃなくて、私のお気に入りの庭へ。お菓子でも食べながら、色々とお話ししましょう?]
「うん!」
エクイアさんとだったら、お友達になれるかもしれない。
そんな楽しい未来を想像してフェトラスは幸せそうに笑った。
来た時とは違って、二人で仲良く手をつないで謁見の間を出る。
(この楽園は本当に良い所だし、エクイアさんも素敵な人だ)
そうやってフェトラスは――――完全に油断したのであった。
ロキアス「第一村人でやらかしたフェトラスだが、次は何をやらかすと思う?」
カミサマ〈やはりこの計画は今すぐ中止するべきなのでは?〉
ロキアス「あぁん?」
カミサマ〈もうヤだこの魔王〉