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我が愛しき娘、魔王  作者: 雪峰
第四章 All for the one
157/286

4-31 チーム



 目が覚めると、カウトリアがこちらを見ていた。


 俺を抱きしめながら、こちらの胸元からじーーーーっと見上げていた。



「……おはよう」


「おはよう、ロイル」


 小声でそう答えるカウトリアは、とても幸せそうに微笑んだ。


「えっと……何してんの?」


「ロイルの寝顔見てた」


「普通に恥ずかしいからやめろ!」


 俺はそう叫んで、カウトリアを引き剥がした。


「んふふ。堪能したわ」


 あまり抵抗せずにカウトリアは俺から離れ、テーブルの上に乗っていた果物にカプ、とかじりついた。


「もう昼よ。今日は何をする?」


「昼……ずいぶんと寝ちまったみたいだな」


「だってロイルったら、ワタシに付き合ってずっと一緒にいてくれたじゃない。あんな体勢続けてたら誰だって疲れるわよ」


「疲れるって言ったって、お前ほどじゃないと思うが……」


「ロイルのそういう所、本当に好き」


 少女は笑う。花のように。


「シリック達が一度様子を見に来たけど、ベッドで抱きしめ合ってるワタシ達を見たらすぐに出て行ったわ」


(……邪魔したら殺されると思ったんだろうな)


 悪いことをした。


 俺もベッドから起き上がって、革袋に入った水を飲む。


 眠ったことで疲れは多少取れたが、気分はあまり晴れない。


「はぁ……久々に温泉に入りたい……」


「おんせん?」


「ああ。野外で……でかい浴槽にお湯を入れるんだが、これが中々に気持ち良くてな」


「ふうん……どう気持ちいいの?」


「さっぱりするな。戦友に奢ってもらったんだが、まぁまぁの金額だった気がする。小型の風呂ならけっこうあるが、脚が伸ばせるレベルだと珍しくてな……。汗もたくさん出るんだが、湯上がりに冷たいエールを飲むと生きてて良かったって思うぐらいさ」


「お湯に浸る……あんまり想像出来ないわね。茹でられるんでしょう?」


 怪訝な顔するカウトリアに俺は「ふっ」と笑ってみせた。


「熱湯じゃないぞ? ぬるいスープと同じくらいの温度だ」


「そうなんだ……ま、いいや。理解したわ」


 カウトリアは無造作にそう答えて、魔法を放つ気配を見せた。


「ま、待て待て待て! 何をするか予想はつくが、ちょっと待て!」


「えー。ロイルの願いを叶えたーい」


「せめて人里から離れた所でやろうな!? 少なくとも室内にこしらえるもんじゃない!」


 俺が懇願すると、彼女はひょいと肩をすくめて苦笑いを浮かべた。


「分かったわよ。それじゃあ、後でもっと詳しく教えて?」


「おう。……あ、ちょっとワクワクする」


 楽しみだ、と呟くとカウトリアはこれまた幸せそうに微笑んだ。




 部屋を出てシリックとザークレーの部屋をそれぞれ尋ねたが、両者とも不在だった。宿屋は静まり返っている。素泊まりの宿だから、こんな時間に滞在者はあまりいないのだろう。


「また買い出しにでも出てるのかな……何か聞いてるか?」


「なにも。でも別にどうでもいいじゃない。紅茶と甘いお菓子を買って、どこかでゆっくりお話ししない?」


「優雅なお誘いだが、それはまたの機会にとっておく。それよりも俺達も買い出しに行かなくちゃな……」


「何を買うの?」


「何って、そりゃ」


 武器が欲しいのだ。カウトリアにクズ鉄にされちまったからな。


「…………えーと、怒らないで聞いてほしいんだが」


「なにかしら」


「……武器が欲しいって言ったら、お前どう思う?」


「無駄遣いはよくないよ」


「いや無駄っていうか。武器は普通にいるだろ」


いらないわよ・・・・・・


「……いや、その…………」


「ロイル」


 彼女は――――演算の魔王は、確かな視線で俺を凝視した。



「ワタシが、貴方の、武器よ」



 うん。無理だこれ。


 威圧された俺は両手をかかげた。


「悪かったよ相棒」


「ええ。それでいいの。ロイル、浮気はダメよ? きっと貴方を不幸にしてしまうから」


 ちょっとこわい。


 俺は話しを変えるために口を開いた。


「……盾とか鎧はいいのか?」


「それはもちろん。ロイルの身を護るものだもん。今の装備……見たところ、王国騎士のモノよね? ちょっと不完全だけど。いっそフルプレートにしたら?」


「どっちかっていうと動きやすさを重視してるからな。それに怪我もあったから、あんまりゴテゴテしてると逆にピンチになりそうで怖い」


「そうだったんだ。まぁ、あんまり急いで買う必要も無いかな? どうせ敵はワタシが殺すわけだし」


「………………」


「落石だって地割れだって大丈夫。太陽が落ちてきたって、ロイルを傷つけようとするヤツは全部殺してやる」


 ここは宿屋の廊下だ。誰かに聞かれたらと考えると、ヤバすぎる。


「よーし、とりあえず食料を買って、カルンの様子でも見に行こうなー。あいつも腹が減ってるだろうしなー」


「そこらへんで適当に狩りでもしてるんじゃない? 放っておいても大丈夫よ」


「いやいや、寂しがってるかもしれないだろ? とりあえず会いに行ってやろうぜ」


「ロイルはお人好しだね」


 やや呆れた表情を浮かべたカウトリアだったが、俺の腕に絡みついてきて、満足げなため息をついた。


「それじゃあ、お買い物デートしましょう」


「おう。……しっかり顔は隠しておけよ?」



 うら寂しい村を探索する。


 大通りに小規模な店が転がっているぐらいで、掘り出し物は無さそうだ。


 期待した武器・防具屋も古いタイプのものばかり。というか中古品しか置いてなかった。その隣りには携帯食料なんかが置いてある。


(うーむ。微妙なラインナップ)


 思えば水輝の街・セストラーデは都会だった。掘り出し物どころか、高級品の取り扱いをしてる店も多々あったものだ。


(まぁ、あんまり財布に余裕があるわけでもなし。カウトリアの台詞じゃないが、無駄遣いは止めておこう)


「ねぇねぇロイル。ここの商品は程度が低いわ。別の場所をあたりましょう」


「せめて店主に聞こえないレベルで話してくれねぇかなぁ!? し、失礼しましたー!」


 俺は握りっぱなしだったカウトリアの手を引いて店から脱出。


 慌てて建物の角を曲がると、通りの先にシリックがいるのが見えた。


「ふふっ、こんな風に引っ張られてると、逃避行してるカップルみたいで楽しい」


「勘弁してくれよ……とりあえず、シリックがいるから合流するぞ」


「ぶーぶー」


 クルクルと表情を変えながら、それでもカウトリアはギュッと俺の左手を握りしめた。


 遠巻きに観察すると、シリックは何やら村人と話し込んでいるようだった。


「おーい、シリックー」


「あ、ロイルさん。おはようございます」


「何してるんだ?」


「ちょっと聞き込みを……この辺で変わったことがないか、とか。あるいは空飛ぶ変な鳥を見なかったか、とか」


 ああ、フェトラスの情報を探っていてくれたのか。


「ありがとうシリック。その件に関しては目星がついた」


「えっ、いつの間に!?」


「ワタシを誰だと思ってるのよ」


 ふふん、と胸を張る演算の魔王。


「ワタシはシリックの一万倍はロイルの役に立つのよ。でも、シリックも中々見所があるわ。ロイルの為に働く姿は美しい。八百点あげましょう」


 なんの点数だよ。


「あ、あはは……あ、作業中にどうもすいませんでした。ありがとうございます」


 村人に丁寧な一礼をして、シリックはこちらへと駆け寄ってくる。


「目星がついたということは……その、こちらの、えー、お嬢様・・・が?」


 何だその言葉のチョイス、と思ったが、人通りがあるところで「演算の魔王」呼びも出来ない。


「そうだ。こちらのお嬢様が一晩かけてやってくれた」


「ふふん。ふふふん!」


 ドヤァ……と胸を張り続ける演算の魔王。顔が露わになりそうだったので、フードを被せ直す。


「というわけで、カルンと合流してすぐ出発したい所だ。ザークレーがどこに行ったか知ってるか?」


「治療院に行ってますよ。アレ、普通に入院すべき怪我ですし……」


「俺はだいぶ良くなったが……そうだな。骨折れてるもんなアイツ」


 無茶させすぎている。本人が不平不満を言わないのは果たして良い事なのだろうか、悪いことなのだろうか。


「とりあえず迎えに行くか」


「ええ。早い時間から出て行ったので、そろそろ治療も終わってるころだと思います」


 シリックが示した治療院の場所を目指して歩き始める。


 俺と、シリックと、魔王カウトリアと。


「………………」


 感情は言葉にしない。


 俺は密かに静かに、誰にも分からないレベルのため息を鼻から吐き出した。



 治療院に行くと、ザークレーがベッドに寝転がっていた。


「…………本当に大丈夫かこいつ」


 寝ている。普通に寝ている。思えばこいつ、ずっと寝てる気がする。筋肉とかめっちゃ落ちてるんじゃないだろうか。


 ただ明るいところで改めて観察すると、以前より顔色は良くなっていた。


「えっと、先生。こいつの容態って実際どうなんですか?」


 俺は年老いた医者にそう尋ねると、彼は渋い顔をした。


「診断しようにも、本人の申告に虚偽が多くてですな。簡単に言うと、ものっそいヤセ我慢をしているご様子で。はい」


「全治にはどれぐらいかかりそうです?」


「うーむ。普通でしたら二ヶ月……と言いたいところですが、王国騎士様の全治ということは、『戦闘行為を問題無く行えるレベル』ですよね? そうしますと……まぁ半年はかかるかと」


「えっ、そんなに重傷だったんですか!?」


「ワシは魔王なんかと戦ったことがないので分かりませんが、戦うのであれば失った筋肉なんかも取り戻さないといけないのでは? 折れた箇所がうずくウチは、戦わない方がよろしいかと。つまりこちらの騎士様に必要なのは全治ではなく、完治であるべきです」


 ああ、そういう表現なのね。


「モンスター程度と戦って、なおかつ完勝するとなると……一ヶ月でしょうな。ただし、怪我が悪化する事を覚悟した上で」


「結局は戦わないのがベストなわけですね」


「医者から言わせれば、戦ったら怪我を負うし、死ぬんです。だから、どんなにお強い方でも、本当は戦うべきではないんですよ」


 年老いた医者は寂しそうにそう言った。


 確かにな。戦うってことは、そういうことだよな。


 一瞬だけ「このまま置いて行こうか」と思ってしまう。ザークレーの為を思って。


 だけど俺は知っている。こいつは、そんな事をされて喜ぶ男ではない。


 だが怒ったりもしないだろう。きっとこいつは、ただただ不安に陥るだけだ。


『――――フェトラスはどうなっただろう。演算の魔王はどうしているだろう。ロイルやシリックは無事だろうか。ああ、もやもやする。こんな調子で生きるのは辛い。いっそ探しに行くか』


 そしてコイツは俺達に追いつく。その時初めて、こいつは怒るのだ。いつもの仏頂面で、罵倒もせずに。


 俺は眠っている英雄にそっと触れた。


「起きろザークレー。出発するぞ」


「――――む」


「一人で歩き回れる程度には回復したみたいだな? もう肩は貸さなくて良さそうだ」


「――――当たり前だ。適切な治療もしたし、三日後には戦線に復帰出来るぞ」


「フッ、無茶苦茶言うなよ」


 むくりと起き上がったザークレー。本来なら痛みで、表情を歪めるべきなんだろう。だけど彼は確かな動作でベッドから降りた。



 適当に食料や水を買い込んで、馬車に積み込む。ついでに、ザークレー用の剣も一振り購入した。俺達は止めたのだが、ザークレーがどうしてもと言うので。


 英雄が使うには相応しくない剣だったが、リハビリ用と言ったところか。あまりトレーニングさせると治りが遅くなるのは明白だったので、買っただけで触らせる気はあまりないけれど。


 そんなこんなで。名も知らぬ村を出て、カルンとの合流ポイントに向かった。



 緑色の魔族は大岩の上でちょこんと座り込んでいた。


 膝を抱えている。


「……ん?」


 今まではコートで隠していたのか、よく見るとカルンは黒くて大きなグローブをはめていた。そして、膝を抱えている。


「おーい、カルンー」


「!」


 バッと立ち上がり、その黒いグローブが再びコートの袖口に隠される。


「待たせたな。ヒマだったろ」


「いえ。友の事を考えていたので、特には」


「友?」


「はい。私が名付けた者達で。かわいいんですよ」


「へぇ……どんな名前なんだ?」


「ピタマルと、ピッタンです」


(なんだそのネーミングセンス)


「モンスターなんですけどね」


「モンスターを友達に!? お前、そんなキャラだったっけ!?」


 魔物を使役する、魔物繰りとはいえ……も、モンスターに名前を付けるとは。変わってんなコイツ。


「まぁいいや……ところでその左手なんだが」


「!」


 明らかにカルンの目が泳いだ。


「今まで気がつかなかったけど、義手でも仕込んでるのか?」


「……まぁ、そんな所です。イリルディッヒとの旅の最中で、ちょっと、アレしまして」


「ふぅん」


 めっちゃ挙動不審である。


 だが「お願いだから追求しないで」と顔に書いてあるので、それに従っておく。


「まぁいいや。それより待たせたな。フェトラスの居場所が分かったぞ」


「ほ、本当ですか!」


 ぶわっと笑顔になるカルン。ウキウキハイテンションである。


「どちらに、どちらにいらっしゃるのでしょうか!」


「詳しい場所はまだ。今から……演算の魔王に説明してもらう」


 な? と俺とずっと手を繋いでいるカウトリアに視線を送る。


「ええ。シリック。さっき買ってた地図を出してちょうだい」


 俺達は馬車の荷台に乗り込み、全員で円になって地図をのぞき込んだ。


「現在地はここ。そして昨日の探索時点で、フェトラスと思われる反応は、ここ」


 指さされたポイント。どうやら山のようだ。しかもかなりの僻地。


「――――ふむ。ムール火山か」


「火山?」


「――――小規模な活火山だ。めったに噴火しないが、溶岩地帯だな。危険な区域なので人間も魔族もあまり立ち入らない」


「なぜそんな場所に……」


「――――さてな」


 人間も魔族もいない。ヴァベル語が通じない、寂しい場所。


「…………ここからだとどれぐらいかかる?」


「――――行くだけなら、一週間程度だろう。ただし入山には準備が必要だ。そして何より覚悟がいる。めったに噴火しないとはいえ、いつ噴火するかなぞ誰にも分からないからな」


「溶岩が降ってきてもロイルは・・・・ワタシが護るから大丈夫だよ」


(ロイル以外は?)


 なんていう突っ込みを全員が心の中で思い描いた。


「まぁとにかく行ってみよう。場合によっちゃ俺と演算の魔王だけで行くよ」


「私も! 私も同行します!」

「私も! 私も同行します!」


 完全にハモった様子でシリックとカルンが手を上げた。


「…………お、おう」


「フェトラスちゃんに会いたいのがロイルさんだけだなんて、思わないでくださいよね!」

「そうですよ! 私は、フェトラス様と会って、それで――――!」


「どうどう、落ち着け。落ち着くんだ。特にカルン。目が怖い目が」


「……失礼しました」

「大丈夫ですカルンさん。気持ちは分かります」


(めっちゃ仲良いなこいつら)


 俺はシリックとカルンを眺めつつ、小さく笑った。


「うちの娘は大人気だな」


「水を差すようで悪いけど、ワタシからもう一つ」


 演算の魔王が片手を上げた。


「この辺で最大の存在量を持ってるのがコレ・・ね。まず間違いなく銀眼。だけど個人を特定したわけではないので、あしからず」


「……野良の銀眼の可能性があるってことか? いやそんなもん居てたまるかって話しだけど」


「可能性としては無視していいレベル。まぁ通常あり得ない仮説よ。だけどワタシはロイルが危険に陥る可能性をゼロにしたいので、注意だけ一応」


「……存在量、ってのが何なのかはよく分からんが、とりあえず了解だ」


「他にもそこそこ存在量が多いのがいて驚いたわ。現世は、強い者が結構いるのね」


「例えば他にどんなのがいた?」


「今のワタシより強そうなのが、コレ・・以外だと、四つぐらい。魔王なのか聖遺物なのかは判別ついてないけど」


 トントン、とムール火山を示した次に、演算の魔王はとあるポイントを指さしていった。


「ここ、ここ、それとここ、こっち」


 一つ目に指さした場所は、現在俺達がいるポイントからかなり近かった。


「今のお前より強いって、マジか?」


「何をもって強いと評するのかは別だけどね。つまり、ワタシより強くても、ワタシに勝てるわけじゃあ、ない」


 自信満々に笑ってみせる演算の魔王。その表情には一切の陰りはなかった。


「――――ふむ。ザファラの魔王討伐の名残だろうか。あの部隊には有名な英雄も数多く参加していたしな」


「ああ、そういえばいたわね。空を飛んで斬ってきたバカみたいなのが。アレもけっこう強かったわ」


「……クラティナさんですね。そういえばあの人、今ごろどうしてるんだろう……」


 シリックの呟きを俺は拾った。


「クラティナってのは?」


「魔剣使いですよ。ちょっと怖い人でした」


「そういえば、カルン。貴方も中々の存在量みたいね。少し意外だったわ」


「うん!?」


 急に演算の魔王から話しをふられたカルンはビクゥ! と背筋を伸ばした。


「以前、貴方とイリルディッヒと戦ったことあったじゃない? その時はあまり感じなかったけど……実は貴方も、そこそこの実力者だったのね。昨日の探知でものすごく近い場所に大きめの存在量を感じたから、ちょっぴり驚いたわ」


「は、ははは……恐縮です……」


 何やら居心地の悪い様子のカルン。さっきから、何を隠してるんだこいつ? と思いつつ、俺は「まぁフォースワード使えるくらいだしな」なんて感想を口にした。


「フォースワード? へぇ。やるじゃない。でもどうしてロイルがそれを知ってるの?」


「強いモンスターと戦った時に見せてもらったよ」


 さらりと嘘をつく。フォースワードを俺に向かって使ったなんて情報、言えるわけがない。カルンが殺されてしまうわ。


 ――――おい。やめろカルン。そんなうっとり俺を見つめるな。


 というかすまん。俺の不注意のせいだ。だからそんな目で見つめるな。


「話しを戻そう。とりあえず俺達の目的地はムール火山だ。近隣の村か町で準備して突撃するってことで。いいな?」


 全員がコクリと頷いた。


 改めて皆を見渡す。


 俺達人間。英雄。魔族。そして魔王。


 なんだかんだ、良いチーム感が出来つつある。


 出会えば即殺し合いが基本な俺達が、ずいぶんと相互理解を深めつつあるものだ。



 世界中の人間と魔王達が、こんな風に過ごせたらいいのにな。



 俺は胸に温かなものを感じつつ、号令を発した。


「じゃ、行くか!」


「その前に!」


 演算の魔王がビシィッと人差し指を突き上げた。



「温泉を作ろうと思います!」





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