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我が愛しき娘、魔王  作者: 雪峰
第三章 聖義の死者
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3-20.5 戦闘の代わりに始まるモノ



 戦闘直前。フェトラスはまるで学童のように手を上げて「ちょっといいですか」と発言の許可を求めた。


「えっと……ああ、もういいや」


 彼女は頭にかかっていたフードを外し、そのままそれを脱ぎ去った。


 露わになるのは精霊服。


 白地に黒のラインが走る、高等精霊によりそう精霊。


「お父さん、もういいよね?」


「……何がだ?」


「自己紹介しても、いいよね?」


 フェトラスは、いたって平然な顔をしてそう言った。俺は彼女が何を考えているのか分からないまま、こくりと頷いた。


 それを見た彼女は、一歩。聖遺物を構えた英雄達に歩み寄った。


「あのね、みんなしてわたしのことを魔王魔王って呼ぶよね? でもみんな勘違いしてるよ」


「勘違い、だと?」


「そうだよ、ドグマイアさん。わたしはお父さんの娘。わたしはフェトラスだよ」


 それだけが事実だと、フェトラスは言い切った。

 対するドグマイアはシニカルな笑みを浮かべる。


「ふん……徹底的な自己暗示だな。まさか本気で、自分でもそうだと信じ込んでるのか? そこまで完璧に人間のふりが出来るとは驚きだ。その精霊服はどう言い訳する?」


「精霊服とかどうでもよくない?」


 フェトラスは白地に黒いラインが走るジャケットのすそを掴んでヒラヒラと動かした。


「そしてまた勘違い。わたし、魔王は隠してたけど」



 彼女は目を閉じた。



人間のフリなんて・・・・・・・・一秒もしたことないよ・・・・・・・・・・



 夜の中、フェトラスは淡々と呟いた。


「フリが出来るほど、わたしは人間を知らないもん」


「フェトラス、お前……」




「それともう一つ、みんな勘違いしてるよね。


 みんなわたしと・・・・・・・戦ったら・・・・


 絶対に・・・自分が・・・勝つとか・・・・思ってない?・・・・・・



 開かれた両目には、まごう事なき銀色・・が輝いていた。



「ぎっ」

「――――!?」

「ツッ!!」

「ちょ!?」

「フェトラスちゃん!?」



 銀眼の魔王は目の次に口を開いた。



「お父さんを殺すと、お前は言ったな、ドグマイア」


「お父さんに、皆殺しを宣言させたな、ザークレー」


「お父さんに、殺戮をさせるつもりだな、ティリファ」



「そうはいかない。殺戮は、ずっと――――


 ――――ずっとわたしが我慢・・・・・・・・・してきた本能だ・・・・・・・




 彼女は、透き通るような声で、言った。




「わたしが、魔王フェトラスだ」



 そして、戦闘とは呼べない、違うナニカが始まった。






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