Partner light9
意識はない
それでも
記憶はあるらしい
信じる事なんて
Partner light #9
できやしない
道はない
覚えは無い
記憶だけが
それをしめる
それがなんなのか
いつか
いつか知るのだろうか
俺の右手の袋からちゃりっと音がする。
そして、ずっしりと重い。
「くっくっく・・・必死になったかいがあったぜ!」
中身?言わずと知れた貧乏には周ってこない天下の周り者!
そう!かねだー!!
「当分、お金には困らなくてすみそうですわね」
俺の手の上の袋を見ながらあんずが言う。
「・・・これだけあってすぐに困る人っていうのはとんだ浪費家だと思うんですが」
と、これはレン。
「そんなものなのか?」
「そんなものですわ」
世間知らずの真珠は相変わらずである。
「・・・すぐに困る方法なんていくらでもあるぜ」
俺は右手に袋を乗せたまま言う。
「一番簡単なのは遊ぶ事だな。例えばゆう―――」
ごすっ
俺は前にこける。後ろから蹴りを入れられたようだ。
「昼間っからそう言う事を言わないでください!!」
「じ・・冗談だって、あんず」
「あなたが言うと冗談に聞こえませんわ」
・・・ひどい言われようだよな―。
レンがくいくいとあんずの服の裾を引っ張る。
「何ですか?」
「・・お兄ちゃんはなんて言おうとしたの?」
あー、真珠もわかってないらしい。聞かれたあんずは固まっている。別に答えてもいいのだがあんずにまた怒られそうだからな。もう怒られるのやだし、俺にふられる前に逃げるか。
てことで後ろをほっぽいといて俺は歩き出す。
「・・もう夕方か」
モントヴァンを使った所為か身体全体がだるかった。
誰かがいっしょにいるとつい元気なふりをするのはきっと俺の悪い癖だ。
赤い炎が舞い踊る。
・・またあの夢か。
なんだかわからない、夢、ゆめ、ユメ。
俺の記憶の一部でしかないはずなのに。
俺には覚えが無い。
見たことなど・・・
炎が舞い踊る。それだけの夢。
最後に黒い人影が見える、それだけの単なるゆめ。
でも、何かを案じさせるユメ。
これはなんなんだ。
ああ、見たくない影。
ああ、黒い人影。振り向こうとすると目が覚める。
そう、今だ。
目は覚めない。
振り向いたそいつの口元が見える。
覚めてくれ。
ニヤリと笑った口。
はやく・・はやく・・・
残忍な。
覚めてくれ・・。
俺はこいつを知っている。
見たくない。
そう、コイツは・・・
・・・
がばっと体を起こす。
何か赤い夢を見た。
鮮明な気がするそれを俺は
思い出せない。
いや
「思い出したくない・・・?」
いつのまにか俺はつぶやいていた。
俺が階段を降りていくとそこにいた真珠と目があった。
「いつもより遅かったな」
「それでも普通より早いんだぜ」
俺は真珠の隣に座る。ふー、と息を吐く。
「・・・疲れているな」
「ん、夢見が悪かっただけさ」
このよくわからない疲労感を隠すためにも俺は明るく言った。
「・・おまえが夢ごときで疲れるのか?」
「・・・こんな繊細な俺を捕まえてそんな事言うか?」
いつも通りだ。
「おまえが繊細なら他の奴らなど触っただけで砕けるな」
「言うねぇ」
いつも通りの朝だ。
「もうそろそろこの街を出ようと思う」
朝食を食い終わってすぐにこの発言。
「そうだな。そろそろ飽きてきたしな」
とりあえずすぐ賛成したのは真珠。
「それも良いですわね」
少し考えてから賛成したあんず。
「皆さんにお任せします。」
レンはそう答えた。
「よし、じゃ決定で!」
みんなが頷くのが見えた。
「買い物解散!」
がたがたと椅子から立って真珠、あんずと俺とレンにわかれて買い物に行く。
レンが今買ったばかりの買い物内容を確認している。
「・・・携帯食料ok、お薬ok、お茶ok、全部買いましたよ〜」
「戻るか」
「はい」
相変わらずレンは元気だ。
あの最初の守ってやらなければ感は少なくなっていた。最初のころは肉体的な面はもちろん、精神的な面で守ってやらないといけないと思っていた。今は肉体的な面だけでも良いかもしれない。
強くなれよ、俺はそう心の中で前を行く彼に声をかけた。
「ちゃんと買ってきましたわよ〜」
遠くからあんずが声をかけてきた。
俺はそっちを振りかえる。
そこには真珠とあんずがたっていた。
「んじゃ」
みんながこくんと頷くのが見えた。
俺は前を向く。
「行きますか〜!」
「はい」
3人の声がハモった。