Partner light7
ずっと暖かい中で生きたかった
それが
全ての望みだった
生きることとは
Partner light #7
戦いなのか
死ぬ事とは
安らぎなのか
どうかやすらかな生を
そう祈りつづけては
いけませんか
返らない
声
「これで手配が終わりました」
びくびくしつつおっちゃんが言った。
手配というのは今回の仕事を引き受ける手配である。
「俺が言った通り、楽な仕事だよな」
「は、はい。それではデータボードを」
そう言われて俺はデータボードを差出す。
データボードとは魔法の道具に近いもので、この世界の冒険者なら誰でも持っているはずだ。その一つで時計、地図、自分の持ち物の確認、仕事内容の確認、そして情報をやり取りすることすら出来る、便利ものだ。普段は丸めといて使う時に広げる。太陽パネル付だという省エネ設計でもある。ま、エネルギーを作り出せる魔法使いにとっては省エネとは必要の無いものだが。
「データをおとしました。それでは幸運を」
引きつった顔のおっちゃんに見送られつつ俺達はギルドを出た。
そのまま大きな道を歩く。
「お兄ちゃん」
レンが後ろから俺に声をかける。俺は後ろにふりむく。
「なんだ?」
レンは小走りに走ってきて俺と手をつなぐ。そして俺を見上げながら言った。
「このチームってそんなに変な組み合わせなの?」
はっきり言おう。かなり変だ!
いま世論で強いといわれるチーム(暁の星だったっけ)は戦士(男)3人、魔道士(男)1人、巫女(女)1人だったはずだ。
このあたりにはまだ余裕があるため子供は剣を取らなくてもやっていけるのだ。数年前はひどかったが。同じ理由で女の人も戦おうとしない。
その点から見るとこのチームはかなりおかしい事にもなる。どう見ても子供のレン、女の真珠とあんず、本来ならまだ親元にいるはずの年齢の俺。成人とみとめられるのは20からである。
「このあたりだとな、まだ子供は武器を取らなくてもやっていけるはずなんだよ」
「治安がいいんだね」
感心したようにレンが言った。
だがレンを見てわかるように、極たまに子供でも武器を取り歩き続けなければ生きていけない例もあるのだ。主に親が亡くなった場合など家族関係の問題だが。
俺は裏路地を指した。
「本当に治安が良いか見に行こう、レン」
「ちょっと、四月!」
呼び止めようとするあんずを無視して俺とレンは裏路地に入る。真珠と、あんずも仕方ないと思ったのかついてくる。
しばらく歩いてから立ち止まる。
「うあ・・・」
レンの口から声が漏れる。
「これが、真実だよ」
そこにいるのは布を1枚羽織っただけの子供たちだった。歳はレンと同じぐらいだった。
「治安が良いのなんて表だけですわ」
あきらめ顔のあんずがそうはきすてた。
「・・・」
レンは黙ったままだった。
「戦の被害を受けるのはいつの時代も罪のない子供たち、か・・・」
表情を変えずに真珠が言った。
「哀れむなよ、レン」
俺は黙ったままのレンの頭をなでる。
「俺もおまえもああなっていても、おかしくないんだからな」
路地裏の子供たちは俺達を見つめていた。
「じゃあ、買い物だけして出かけるか」
大通りに戻ってきた俺達は買い物をするために真珠・あんず組と俺・レン組に分かれた。
「とりあえず食い物を買いに行くぞ」
今だ黙ったままのレンの手を引いて俺は歩き出す。
「・・・お兄ちゃんはかわいそうだと思わないの?」
うつむいたレンはぼそりとそう言った。
「・・・むしろ、」
レンが不思議そうな顔でこっちを見た。少し怒りも混じっていた気もする。
「俺は怒ってるよ。そうなってしまった社会に」
レンはまたうつむいた。
「子供だけで生きていくのは本当に難しい事だ。社会もそれがわかっていて、それでもあんな状況を作ってしまう。仕方ない、じゃすまされねぇはずなのにそれがすまされるのが今の社会なんだよな」
レンがこくんと頷いた。
「哀れむな、って言ったのは、哀れみはそのまま行動に移ってしまうからだ。恵む物が無いからじゃない。あいつらが何かを恵んでもらってためになると思うか?」
レンは首を横に振った。
隣の公園では紙芝居をやっていた。あの話はお姫様が城を無くし1人生きていくという悲しい・・・実話だ。あのお姫様もレンも強く生きるしかないのか・・・?
「ああなってしまった以上、自力で生きるしかねぇんだよ。自分の頭と身体と根性と運を使いこなして生きていくしか道はねぇんだよ」
レンはうつむいたまま頷いた。
「おまえは運が悪い中でも運が良いほうだったんだよ」
俺はうつむいたままのレンの手を握る。
「明日も行きぬくためには戦いつづけなきゃなんねぇ。そのためにも食いもんの買出しに行くぞ!」
「うん!」
レンは前を向いて頷いた。
「お姉ちゃんたち、ただいま!」
食料を買った俺とレンは待ち合わせの場所へすこし遅れて到着した。
「レン、元気になったのだな」
「よかったですわ」
やっぱりあの二人もよく見ているものなのだ。結構感心した。
「心配してくれてありがとう。もう、大丈夫!」
元気よくレンが言うのを見て少し笑顔になる二人を見た。
「じゃ、明日は元気よく仕事に出かけますか!」
「うん!」
明るいレンを見て柄にも無く安心していた。
むくりと俺おきあがったとき、朝日がオレンジ色をしてた。
「やっぱ、この色じゃないと朝起きたって気がしないんだよな」
俺はその場で大きく伸びをした。
今日は朝から魔物退治という仕事に出かける予定なのだ。おちおち寝ていられはしない。
街の中は夜の静けさとは違った静けさが満たされている気がする。
俺は身支度を整えてから部屋を出る。
いつも思うが、こうやって泊まっていた部屋から一歩出るときって、新しい1日が始まったって感じがするんだよな。なんだかんだいって毎日一つ一つが新しく感じる。だからこそ楽しんだけどな。
「お客さん早いですね―」
「朝日が出ると目が覚めるもんで」
宿屋の親父は朝早くから飯の仕込みをしていた。昨日は女将さんが晩飯を作っていたんだが、飯の味だけをいうとかなり当たりだった。
俺は飲み物をひとつ頼んで仲間が来るまでの時間を潰した。
「おはよう四月」
振り向くとそこに真珠が立っていた。
「よう、おはよ」
俺は短く挨拶をしといた。
真珠も飲み物を頼み俺の隣に座った。
それから少したってからあんず、レンがそれぞれあらわれ早めの朝食を開始した。
どれぐらい食べたかと言うと
「お客さん達よく食べますね―」
と店の親父に感心されるぐらいしか食べていない。
大きな荷物は宿屋に預けっぱなしで俺達が外に出たときには、もう光が白かった。
そう、ここからが俺の活動時間だぜ。
「じゃあ行くか!」
「はい!」「ああ」「わかりましたわ」
俺が振り向きながら3人にそういうと、それぞれ違う言葉で元気よく(?) 同意してくれた。
じゃ、いくか。
苦労するかなんて行ってみなきゃわかんねーしな。