Partner light6
普通
それは毎日のことであり
まったくありえないものですらある
誰が、誰が
Partner light #6
それを
中心と決めたのか
理由など
どこにでも
転がっている
石のようなもの
それで良いのか
善いのか
明るいでもどこか淋しい午後の光が部屋の中を照らしていた。
「ぼく」
藍の髪と長い耳を持つ、エルフの少年が顔を上げた。
「どうしたら良いのかわからないんです。でも」
「レン・・・」
「ぼく、なんであそこまで、村が壊滅するまで攻撃されたのかが知りたいんです。そして、」
俺はひとつだけ静かに頷く。このあとの言葉によっては・・・
「もう2度とそんな事があってはいけない。だから。いっしょに連れてってください」
「四月・・・」
あんずが俺を見た。わかっている。またひとつだけ俺は頷いた。
とたんにレンの瞳が明るく藍く輝いた。
「ありがとうございます。ソラスさん!」
「ソラス?」
おいおい真珠。まさか俺の名前忘れてたのか?
「おまえ、そんな名前だったのか?」
「べたなボケはやめい!」
「すいませんわ。あたくしも忘れておりましたわ」
えっと・・・
「もお良いよ。俺は‘四月’で決定してたんだな」
うんうんと真珠が頷き、あんずは控えめに頷いた。
「そういうおまえは私達の名前を覚えておるのか?」
うっ。痛いところを・・・。えっと真珠は・・・ぱ・・ぱー
「パール・レフージュ・・・」
驚いた顔をする真珠。やったね。あんずは・・
「・・・アンジュラル・シナバー(・・・・)」
ごす。と見事にあんずの肘撃ちが俺の腹にヒットした。
「アンジュラル・バーミリオン(・・・・・・)ですわ」
俺は腹を押さえる。まじに、いてーぞこれは。
「ごほっ・・・。すまん、なんか赤っぽい色だったところまでは覚えていたんだが・・」
「そんな変な覚え方してほしくありませんわ」
微笑みながらあんずが言った。
「ぷっ・・あははは」
「れ・・レン?」
突然レンが笑い出した。大丈夫か?
「ああ。こんなに面白いのは久しぶりです。森ではこんなことなくって、平凡な毎日でしたから」
まだくすくすと笑いつづける。
「そんなに面白かったか?」
べたなボケのやり取りとしか思えないが・・・。俺はまだ腹を押さえたままだった。
「はい。新しいことはとても楽しいことみたいです」
レンの笑顔は心のそこから明るいようだった。
街を歩いていて武器屋の前を通りふと気になった。
「レンはどういう戦い方をするんだ?」
これは以外と大切なことだったりする。魔物と対峙するときなんかはそれぞれの特性を生かした戦い方をすることが大切である。これを忘れていると大変なことになる。
「普通魔法の水、氷と風が少し。専門は召喚ですけど」
「魔法使いか・・・」
この世界には『普通魔法』『召喚魔法』『奇跡魔法』『特殊魔法』の4つに分かれている。真珠、あんずのふたりは特殊魔法を得意としている。俺の『心を切る』のは奇跡魔法と分類されているらしい。それと俺は剣技ようの普通魔法が少し使える。
普通魔法は唱えるまえにその属性そのものに“自分に力を貸してくれ”という詠唱をいれなければならないため時間がかかるが一番あつかい使いやすい魔法なのでよく使われる。というか誰でもひとつぐらいは唱える事ができるだろう。
召喚は先にその呼び出すものと契約が無いといけないらしい。
んで、魔法使いの武器というと・・・実は何でもよかったりする。杖を持つ魔法使いが多いのは杖という形が魔力を増幅させやすいために、である。
「接近戦は苦手そうだな」
真珠がレンを見ながら言った。確かに苦手そうではある。
レンはこくんと頷いて
「後ろから援護するほうが得意ですよ。ぼくの呼ぶ生き物達は接近戦ができる子もいますけど」
「じゃあ、とりあえず援護ってことになりますわね」
俺、真珠は敵の近くまでよらないと攻撃があたらないタイプなのだ。光の術というのは射程の短いものも多い。あんずはどちらかと言うと離れていたほうがいい。色を使うときのモーションが大きいため、そこを狙われる可能性が高いのだ。
「で、どんな武器を使うのだ?」
「ショートソードの使い方は叩き込まれましたが、筋が悪いと言われましたよ」
筋が悪いって・・・。おそらくショートソードを渡されたのは体がまだ小さいためだろう。
「それで次からは金票を使っていました」
ヒョウ、それは投げて使う武器である。苦無によく似た形だが握りが無く後ろに小さな布がついていたりいなかったり。布の変わりにロープが付いてたりもする。
「とりあえず見てみるか」
俺はそう言って武器屋の中に入る。3人が後に続いてきた。
「何かお探しですか?」
中に入ると商売人らしそうなおっちゃんがいきなり聞いてきた。
結局、レンの武器として買ったのは普通の金票5本とロープのついた縄金票1本、もしも接近戦をしなければならない時のための苦無が1本とだった。
レンがしっかりとした手つきでそれを一緒に買った腰につけるホルダーへとしまっていた。
そのあいだ、俺はまた軽くなった財布を見つめる。
俺達、旅人にも金の問題と言うのは付きまとう。はっきりいって今までやってこれたのが不思議なくらいだったりする。今までの旅の出費は俺の財布から出ているのだ。
実は旅人の金儲けの方法はどの街でも転がっているものである。しゃあねえ、仕事すっか。
みんなの金だからみんなで稼ぐのは当たり前である。問題はどう誘うかだ。
「金が無い」と素直に言っても良いのだが、そうするときっとレンが気にする。
「ねえ、四月。レンも交えて一回軽めのところで戦ってみたほうが良いんじゃないですの?」
そう言ってきたのはあんずだった。渡りに船とはこの事だぜ。ありがとうあんず!
「そうだな。傭兵ギルドにいってみるか」
そうね、といってあんずは城のほうへ歩き出す。傭兵ギルドはたいていそっちのほうにあるものなのだ。
「・・・すまん。‘ようへいぎるど’とはなんだ?」
・・・そういやこいつは最近森を出たばっかの世間知らずだったけ。
「ぼくもよくわからないんですけど・・」
こっちはレン。それに対してあんずは歩きながら答える。
「いいですか。傭兵ギルドというのは旅人たちに戦う仕事をくれるんですわ」
「なぜ戦うのだ?」
「街にとっては街をモンスターやごろつきから守るのためであり、旅人にとってはお金を得るためとなりますわね。結局お金が無いと旅は続けれませんもの」
「ふうん。わかった気がする」
「レンは?」
「なんとなく・・・。つまり、今から戦いに行くってことですよね」
「まあ、そうなりますわね」
そのままギルドに向かって歩きつづける。
大きな建物が見えてくる。その下の建物。
「あれが傭兵ギルドだ」
俺はその建物を指差した。
「で、」
「で?」
俺は笑みを浮かべつつどすを利かした声で聞き返した。
「おまえと、女二人と餓鬼で戦いにいくって?」
「そうだけど」
俺は笑みを崩さず言った。よく考えれば変なチームである事は確かだった。
「・・・」
相手の表情からすると「やめとけ」と言いたいのだろう。
だが、はっきり言おう。このチームそんじょそこらのむさいチームよりだいぶ強いはずだ!ある意味最強に近いところにいる!!
「死ぬぞ〜」
後ろからほかのチームの下卑た声が聞こえてくる。
「あいつらじゃスライムも倒せないんじゃないか?」
悪いが、スライムぐらい一般人でも倒せるぞ。
「ゴブリンが出たら気ィ失っちまうんじゃないか?」
ここにゴブリンを愛護する動物だと言った奴がいるが。
ムカムカしたまま後ろを振り返るとおびえたレンがいた。だがおびえる相手が間違ってる気がする。
レンは必死になって二人を止めているのだ。
そう、真珠とあんずを。しゃあない、俺も止めとくか。
「真珠、あんず。あんなあほの相手はするなよ」
その一言がいけなかったのかもしれない。ほかのチームの奴らが
「あほだと!」
どっかで見たような月並みの反応をして殴りかかってきたのである。俺に向かって。
ばしゅ。たす
「四月、言葉の暴力はいかんぞ」
「あなたが最初に相手をしていますわよ」
俺の顔に最初の一撃をいれようとした俺よりごつい男のこぶしをつかんだまま、俺は「ああ、すまん」と軽く流す。
「はっ」
そして俺はその男に一本背負いをかける。
どす
男は床にたたきつけられる。
「・・・スピードと踏み込みの甘いパンチって楽に受けれるな・・」
男の動きは止まったままだった。
「スピードと踏み込みがあったらもっとかっこよく流れ技で倒せたのに」
相当悔しそうに言ってたのだろう。あんずが次に言った言葉は
「もう一回殴ってくれって、頼んでみたらどうですの?」
だった。
「いやもういい」
俺はカウンターの方へ向き直る。
「でさあ」
「ひっ」
そんなにびびらんでも・・・。まあこの人も俺らの事甘く見てたひとりだし。
「話し戻すけど」
「は、はいィ」
声ひっくりがえっとんぞー
「なんか、楽で金のたくさん入る仕事ナイ?」
「え、えっと〜」
「楽なのを優先ね」
目の前のおっちゃんは急いで探している。
「四月」
「なんだ、あんず」
「それ脅しだ」
「まっ、良いじゃねーか」
たまには刺激も必要だって。
・・・たまにで良いけどなっ!